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ver.1.0 ~始まりの音色~
ver.1.1.1-42話 当り前のような、そうであってほしくなかったような
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「HAHAHAHAHAHA!!楽しいデース!!外のアンデッドたちは感触が嫌だったデースが、ここのやつらはやりごたえが中々あるのデース!!」
【ホギョォォォォ!?】
【モゲェェェ!?】
‥‥‥普通のプレイヤーならば着るのをためらう様な、大胆過ぎるビキニアーマーを着こなしつつ、防御力が薄そうなのに接近戦を挑み、全戦全勝をしている女性。
その背中に背負っている大きな剣は飾りなのかというかのように、悪鬼のように笑みを浮かべて暴れまわる様は、モンスター側にとって悪魔かと叫びたくなるだろう。というか、断末魔が生々しいものが多くて、見ているこちら側の方が同情してしまい、逃げて欲しいと途中から思っていたりする。
「‥‥‥中三病さん、あの人前よりも派手に暴れてないかな?」
「上級職『バーサーカー・ファイター』になったらしいからなぁ‥‥‥現実でも手が付けられなかった攻撃力が更にとんでもないことになったんだよなぁ‥‥‥」
僕の問いかけに対して、既に何もかも諦めたかのような声でそう答える中三病さん。
現在僕らは中三病さんの誘いに乗って、赤い夜のイベントの最終戦が近づいてくる前の気分転換としてとあるダンジョンに訪れているのだが、気分転換どころか大虐殺と言って良いような惨状にテンションを下げまくっていた。
無理もないだろう。目の前の蹂躙劇を起こしている女性という皮を被ったティラノサウルスのごとく暴れているのは中三病さんの姉、ティラリアさんなのだから。
というか、以前の樽潰し恐怖の鬼ごっこの時に比べると、明かに強くなりすぎている気がするのだが‥‥‥普通、抱きしめる前に空気を握って投げつける芸当って、常人が出来て良い物なのだろうか。
「そもそも、その上級職ってなんだよ」
「あの姉が、持っていた素質が影響したようなんだよ」
―――――
『バーサーカー・ファイター』
武器を使用せず、持ちうる肉体の武器のみで一定数のモンスターたちを狩り、恐怖を与えた者に現れる隠し職業。狂気に呑まれていそうではあるがそんなことは無く、意外にも理性は保たれている。
強力なATKを誇る代わりに、代償としてDFEが捨てられており、一撃でやられかねない脆さも持つが、そもそもこの職業が選択に出た時点で、そんな事も気にしない人のことが多い。
また、武器を持った方がATKが低くなるという特徴を持っており、武器その物が自身の力を封じると枷になっているらしい。
―――――
とんでもない人に、とんでもない職業が出てきたものである。あの背中に背負った大剣は枷になっているそうだが、あれをつけておかないと何もかも破壊しつくしそうだからという事で、わざと装備しているらしい。
「女性って、怖いんだな…‥‥」
【シャゲ!?シャゲシャゲ、シャゲェェ!!】
【ガウガウガウ!!】
ぽつりとつぶやいたことに対して、慌てた様子でマリーとリンが詰め寄って来た。
どうやら流石にあれとひとくくりにされるのは、モンスターであろうとも心外すぎたようで、必死に違う違うとアピールをしているようだ。なお、セレアに至ってはあの光景を見て、予想外過ぎたのか現実逃避として目を背けていたのであった。
何にしても気を取り直しつつ、今の状況に関して整理をしておこう。
入り込んだこのダンジョンは、ドワーフたちの村から少し離れた場所にある鉱山に出来上がっていたもので、『烈火のダンジョン』というらしい。
以前のドラメタルのダンジョンとは違って他のプレイヤーにも開放されているそうで、既に何人もの挑戦者が挑み、大分内部構造が判明しているようだ。
「最下層のボスが『クリスタルヒュドラ』‥‥‥毒状態じゃなくて、全身をクリスタル状態という状態異常に変えてしまう巨大なやつか。なんか、マリーの進化前のパールスネークの分岐進化の先に居そうだよな」
「特殊な進化とかであり得そうだがな。とは言え、あれは真珠コーティングだったそうだが、こちらは根本からクリスタルに変えて、砕いて一撃死を見舞う凶悪さがあったぞ」
全身が硬質なものに覆われるだけであればまだ砕けても生存できた可能性はあったが、クリスタルヒュドラが見舞うクリスタル状態は根本から違っており、喰らってしまえば一撃死の恐怖が付きまとったようである。一応、状態異常の部類なせいか。回復薬や時間制限が存在して永続ではなかったそうだが、それでも討伐するまでに非常に苦労があったようである。
「なお、あの姉はそのクリスタルヒュドラを倒した数少ない人だったりする」
「マジか」
「マジだ。クリスタル化しても砕けなかったというか、強靭すぎるメンタルだったというか…‥‥あの時はもう、どっちがボスモンスターなのか分からないような気迫がぶつかり合ってたなぁ‥‥‥」
遠い目をしてそう語る中三病さんだが、何があったのか気になる処。でも、何となく予想が出来てしまうので、深くは聞かないようにしよう。
「ん?でもその話があるなら、ここは攻略済みってことだけど、新しいダンジョンの方に向かって気分転換とかは考えなかったのか?」
「ああ、それも考えたんだが、ここはそう単純に攻略できるところじゃなかったんだよ」
いわく、どうやら攻略しても隠し扉や隠しボスなどが出るダンジョンが存在しているようで、このダンジョンもその類になるらしい。
しかも、通常状態でのボスを討伐した人がパーティに入る時限定で出現する隠しルートも存在するようで、今通っているこの道が既にそうなのだとか。
「とはいえあの蹂躙劇を見ると見つけられたのは幸運だけど、ここに住まうモンスターたちにとっては大いなる不運としか言いようが無いだろう」
「そんな不運を連れて来たのはどこの誰だよ」
「あの姉が、無理やりな‥‥‥ははは、まさか漫画や小説にあるような、骨の折れるような擬音を現実でも聞くとは思わなかった」
本当に苦労しているというか、現実だとどういう惨状が広がっているのか中三病さんが物凄く哀れに見えてくる。
しかしながら、あんな姉でも一応マシな方で、世の中にはもっとヤヴァイ類もいるようで、まだ幸運な方だとも言うようだ。
「知り合いだと、姉妹揃って‥‥‥おおぅ、なんで自分の身の回りには、そんなのしかいないんだ‥‥‥しかもそのせいで、友人たちがいらぬ扉を開いた罪深さも味わいたくなかった‥‥‥」
「その友人たちに何があったんだよ」
「HEYHEY!何か喋ってないで、先に進むのデース!!どんどん行けば、いいのデース!!」
はぁぁっと後悔するかのように溜息を吐く中三病さんであったが、ティラリアさんの言葉によって無理やり進められる。
ああ、これはこう気にしたらダメな奴というか、見てはいけない深淵が彼の凄い近くに存在しているんだろうなと思うしかないのであった。
「許してくれ、ドームズ、ジョージル、ハンブルボーン、お前たちがいらない扉を開いたのは、姉を連れていた自分の責任だ…‥‥」
「本当に何があったんだよ…‥‥」
―――――
>称号『現実の後悔者:強』を中三病さんが獲得しました。
―――――
「さらっとそのまますぎるものが付いたぞ」
「前に『暴君に喰われる者』という称号が付いたばかりなんだが!?」
「Oh?どうしたのデース、さっさと進むのデース!!っと、『バットバット』がうざいのデース!!」
パンッ!!
「ついに、断末魔すらあげさせずに爆散させるまで‥‥‥」
―――――
>パーティとして組んでいる全員に、経験値が配られました。
>テイムモンスター『セレア』のレベルが上がり、進化が可能になりました。
>進化しますか?
―――――
【ヒヒィン?】
「って、あれ?今のでもしかして、進化するためのレベルになったの?」
何でこんなタイミングでなったの?出来ればボスを倒した時とか、もっと普通の戦闘で経験値を得られた時ならまだ良いとして、目の前で爆散したタイミングでなるとは思わなかった。
「ん?どうした?」
「どうしたのデース?」
「いや、セレアの進化が可能になったようで、今ちょっと止まって確認して見て良いかな?」
「Oh!?テイムモンスターの進化、見たいデース!!さぁさぁ、早く見せてほしいのデース!!」
「いやそう直ぐに‥‥‥セレア、良いよな?」
【ヒヒン!】
ばるんぶるんと大胆に揺らすが、色気よりも生々しい赤さで恐怖しか感じないとはどういう状況なのか。
何にしても、そんな血生臭い事は置いておくとして、セレアの進化先に目を通すことにした。
―――――
>選択を確認、受理いたしました。
>『シャドーホース』の『セレア』の進化先を選択してください。
1:『メタルバイコーン』
・通常のバイコーンが鋼鉄の皮膚となった強靭なバイコーン。二つの角を頭に生やし、闇夜の中をさっそうと駆け抜ける。闇系統の魔法が使用可能になり、周囲の状態が夜中もしくはそれに近い状態に限ってステータスがアップする。
2:『ダークユニコーン』
・通常のユニコーンが堕ちた姿であり、真っ黒な毛並みが特徴的である。本来、その角は様々な状態異常を回復する薬の材料になるのだが、ダークユニコーンのモノの場合は即死薬(即死確率は10%)の貴重な材料になる。
3:『デュラハンライダー』
・デュラハンの従えていた馬に限り発現する進化先。頭を失い首無しの馬となる代わりに、胴体から幻影のデュラハンが生え、戦闘を行う。実体を失っており、魔法以外の攻撃を無効化できる代わりに、光に関する魔法に対しての耐性が300%ダウンする。
4:『???」
・進化するまで閲覧不可能。
―――――
「‥‥‥うわぁ、これまたどれも、個性的なものが出たな」
「しかし、何かと暗そうなというか、中二感をくすぐりそうだな。面白い進化をもっているのか」
「個人的にはデュラハンライダーが気になるのデース!!」
色々と気になる事も多いが、シャドーホースの進化先としては妥当なところかもしれない。それに元々デュラハンもとい名もなき騎士王の乗っていた馬なのだから、こんな進化先が出てきても不思議ではないだろう。
でも、案外まともな方向かもしれん‥‥‥マリーやリンのような進化をする様子もないし、これはこれで一安心と言うべきか、あるいはこの???の選択肢こそが、女体化スキルの影響を受けて出てきたろくでもないものなのか。
「さて、どれにするか…‥‥セレアとしては、どれになりたい?」
【バルヒヒ…‥ヒヒン】
選択肢を見せて選んでもらったが、どうやら僕の判断にゆだねるようで、決めないようだ。
こうなってくると、僕自身で選ぶしかないのだが、どれもこれも捨てがたい。しかし、デュラハンライダーってあるけど、これ選んであの騎士王が復活するとも限らないし、幻のようなものだとむなしいから、1か2を選択するのもありか。
「でも、やっぱりここは謎そうな4を選ぶかな」
―――――
>選択、受理いたしました。
>進化が始まります。
―――――
どれを選んだとしても、面白そうなものが出るのであれば問題あるまい。
そう思い、???を選んだ途端…‥‥その進化はいつものものとは様子が違っていた。
ぼしゅううううううううう!!
「「「え?」」」」
通常の進化であれば、光り輝いて変化をしていくはずだが、開始し始めた途端周囲に煙が噴き出した。
何かトラップでも発動したのかと身構えたが、ログを見たところそうではないという表示が出た。
―――――
>‥ERROR、ERROR、ERROR。
>レイドボス予定だったドリルデッド・デュラハンの一部に、選択可能領域がありませんでした。
>ERROR、ERROR…‥‥緊急対処が行われました。
―――――
ガゴォォォォン!!
大きな音を立て、分厚い棺桶のようなものが出現し、セレアごと呑み込んだ。
―――――
>システム、再起動を確認。進化プロセス再構築。
>進化先の出ないはずだったモンスターへの、進化選択バグを修正致しました。
>条件によって、特殊進化へ移行。後日、該当プレイヤーへの補償を行います。
―――――
ログに次々と表示が出る中、棺桶が再び開き、中からセレアが‥‥‥いや、その姿を大きく変えた者が現れる。
【ヒヒ…‥バルルルルルルルゥ!!】
咆哮をあげ、出てきたのはケンタウロスのような人馬。だが、その身にまとうのは夜空のような真っ黒な鎧であり、全身鎧によって顔が見えない。
―――――
>『シャドーホース』から特殊進化『ナイトメア・ケンタウロスナイト』に進化いたしました。
『ナイトメア・ケンタウロスナイト』
・漆黒の鎧を身に纏う、悪夢の使者と呼ばれるケンタウロスナイトの上位種。その鎧その物が闇であり、受ける攻撃を大幅に減らすが、装備品を外すことは可能。ATK・HPが大幅に上昇し、両腕が付いたことにより剣などの武器を装備することが可能になった。代償として、素早さが下がっているが、鎧を外すことで向上させることが可能。
―――――
「‥‥‥うわぁ、ハルさん、これまた珍しいというか、予想外のことをしでかしたね」
「凄いデース!!あのお馬さんが、カッコ良さそうな騎士馬になったのデース!!」
なんというか、色々とツッコミどころがあり過ぎて追いつかない。ツッコミ役がこの場に早急に必要とされるのだが、ツッコミ役が不在である。
色々ととんでもない表示が出ていたような気がするのだが、とにもかくにもセレアが大きく変貌してしまったのであった‥‥‥‥
「ERRORや特殊進化‥‥‥どこからツッコめばいいの?」
【シャゲェ?】
【ガウガーウ?】
【バルルルルルルルルルゥ!!】
【ホギョォォォォ!?】
【モゲェェェ!?】
‥‥‥普通のプレイヤーならば着るのをためらう様な、大胆過ぎるビキニアーマーを着こなしつつ、防御力が薄そうなのに接近戦を挑み、全戦全勝をしている女性。
その背中に背負っている大きな剣は飾りなのかというかのように、悪鬼のように笑みを浮かべて暴れまわる様は、モンスター側にとって悪魔かと叫びたくなるだろう。というか、断末魔が生々しいものが多くて、見ているこちら側の方が同情してしまい、逃げて欲しいと途中から思っていたりする。
「‥‥‥中三病さん、あの人前よりも派手に暴れてないかな?」
「上級職『バーサーカー・ファイター』になったらしいからなぁ‥‥‥現実でも手が付けられなかった攻撃力が更にとんでもないことになったんだよなぁ‥‥‥」
僕の問いかけに対して、既に何もかも諦めたかのような声でそう答える中三病さん。
現在僕らは中三病さんの誘いに乗って、赤い夜のイベントの最終戦が近づいてくる前の気分転換としてとあるダンジョンに訪れているのだが、気分転換どころか大虐殺と言って良いような惨状にテンションを下げまくっていた。
無理もないだろう。目の前の蹂躙劇を起こしている女性という皮を被ったティラノサウルスのごとく暴れているのは中三病さんの姉、ティラリアさんなのだから。
というか、以前の樽潰し恐怖の鬼ごっこの時に比べると、明かに強くなりすぎている気がするのだが‥‥‥普通、抱きしめる前に空気を握って投げつける芸当って、常人が出来て良い物なのだろうか。
「そもそも、その上級職ってなんだよ」
「あの姉が、持っていた素質が影響したようなんだよ」
―――――
『バーサーカー・ファイター』
武器を使用せず、持ちうる肉体の武器のみで一定数のモンスターたちを狩り、恐怖を与えた者に現れる隠し職業。狂気に呑まれていそうではあるがそんなことは無く、意外にも理性は保たれている。
強力なATKを誇る代わりに、代償としてDFEが捨てられており、一撃でやられかねない脆さも持つが、そもそもこの職業が選択に出た時点で、そんな事も気にしない人のことが多い。
また、武器を持った方がATKが低くなるという特徴を持っており、武器その物が自身の力を封じると枷になっているらしい。
―――――
とんでもない人に、とんでもない職業が出てきたものである。あの背中に背負った大剣は枷になっているそうだが、あれをつけておかないと何もかも破壊しつくしそうだからという事で、わざと装備しているらしい。
「女性って、怖いんだな…‥‥」
【シャゲ!?シャゲシャゲ、シャゲェェ!!】
【ガウガウガウ!!】
ぽつりとつぶやいたことに対して、慌てた様子でマリーとリンが詰め寄って来た。
どうやら流石にあれとひとくくりにされるのは、モンスターであろうとも心外すぎたようで、必死に違う違うとアピールをしているようだ。なお、セレアに至ってはあの光景を見て、予想外過ぎたのか現実逃避として目を背けていたのであった。
何にしても気を取り直しつつ、今の状況に関して整理をしておこう。
入り込んだこのダンジョンは、ドワーフたちの村から少し離れた場所にある鉱山に出来上がっていたもので、『烈火のダンジョン』というらしい。
以前のドラメタルのダンジョンとは違って他のプレイヤーにも開放されているそうで、既に何人もの挑戦者が挑み、大分内部構造が判明しているようだ。
「最下層のボスが『クリスタルヒュドラ』‥‥‥毒状態じゃなくて、全身をクリスタル状態という状態異常に変えてしまう巨大なやつか。なんか、マリーの進化前のパールスネークの分岐進化の先に居そうだよな」
「特殊な進化とかであり得そうだがな。とは言え、あれは真珠コーティングだったそうだが、こちらは根本からクリスタルに変えて、砕いて一撃死を見舞う凶悪さがあったぞ」
全身が硬質なものに覆われるだけであればまだ砕けても生存できた可能性はあったが、クリスタルヒュドラが見舞うクリスタル状態は根本から違っており、喰らってしまえば一撃死の恐怖が付きまとったようである。一応、状態異常の部類なせいか。回復薬や時間制限が存在して永続ではなかったそうだが、それでも討伐するまでに非常に苦労があったようである。
「なお、あの姉はそのクリスタルヒュドラを倒した数少ない人だったりする」
「マジか」
「マジだ。クリスタル化しても砕けなかったというか、強靭すぎるメンタルだったというか…‥‥あの時はもう、どっちがボスモンスターなのか分からないような気迫がぶつかり合ってたなぁ‥‥‥」
遠い目をしてそう語る中三病さんだが、何があったのか気になる処。でも、何となく予想が出来てしまうので、深くは聞かないようにしよう。
「ん?でもその話があるなら、ここは攻略済みってことだけど、新しいダンジョンの方に向かって気分転換とかは考えなかったのか?」
「ああ、それも考えたんだが、ここはそう単純に攻略できるところじゃなかったんだよ」
いわく、どうやら攻略しても隠し扉や隠しボスなどが出るダンジョンが存在しているようで、このダンジョンもその類になるらしい。
しかも、通常状態でのボスを討伐した人がパーティに入る時限定で出現する隠しルートも存在するようで、今通っているこの道が既にそうなのだとか。
「とはいえあの蹂躙劇を見ると見つけられたのは幸運だけど、ここに住まうモンスターたちにとっては大いなる不運としか言いようが無いだろう」
「そんな不運を連れて来たのはどこの誰だよ」
「あの姉が、無理やりな‥‥‥ははは、まさか漫画や小説にあるような、骨の折れるような擬音を現実でも聞くとは思わなかった」
本当に苦労しているというか、現実だとどういう惨状が広がっているのか中三病さんが物凄く哀れに見えてくる。
しかしながら、あんな姉でも一応マシな方で、世の中にはもっとヤヴァイ類もいるようで、まだ幸運な方だとも言うようだ。
「知り合いだと、姉妹揃って‥‥‥おおぅ、なんで自分の身の回りには、そんなのしかいないんだ‥‥‥しかもそのせいで、友人たちがいらぬ扉を開いた罪深さも味わいたくなかった‥‥‥」
「その友人たちに何があったんだよ」
「HEYHEY!何か喋ってないで、先に進むのデース!!どんどん行けば、いいのデース!!」
はぁぁっと後悔するかのように溜息を吐く中三病さんであったが、ティラリアさんの言葉によって無理やり進められる。
ああ、これはこう気にしたらダメな奴というか、見てはいけない深淵が彼の凄い近くに存在しているんだろうなと思うしかないのであった。
「許してくれ、ドームズ、ジョージル、ハンブルボーン、お前たちがいらない扉を開いたのは、姉を連れていた自分の責任だ…‥‥」
「本当に何があったんだよ…‥‥」
―――――
>称号『現実の後悔者:強』を中三病さんが獲得しました。
―――――
「さらっとそのまますぎるものが付いたぞ」
「前に『暴君に喰われる者』という称号が付いたばかりなんだが!?」
「Oh?どうしたのデース、さっさと進むのデース!!っと、『バットバット』がうざいのデース!!」
パンッ!!
「ついに、断末魔すらあげさせずに爆散させるまで‥‥‥」
―――――
>パーティとして組んでいる全員に、経験値が配られました。
>テイムモンスター『セレア』のレベルが上がり、進化が可能になりました。
>進化しますか?
―――――
【ヒヒィン?】
「って、あれ?今のでもしかして、進化するためのレベルになったの?」
何でこんなタイミングでなったの?出来ればボスを倒した時とか、もっと普通の戦闘で経験値を得られた時ならまだ良いとして、目の前で爆散したタイミングでなるとは思わなかった。
「ん?どうした?」
「どうしたのデース?」
「いや、セレアの進化が可能になったようで、今ちょっと止まって確認して見て良いかな?」
「Oh!?テイムモンスターの進化、見たいデース!!さぁさぁ、早く見せてほしいのデース!!」
「いやそう直ぐに‥‥‥セレア、良いよな?」
【ヒヒン!】
ばるんぶるんと大胆に揺らすが、色気よりも生々しい赤さで恐怖しか感じないとはどういう状況なのか。
何にしても、そんな血生臭い事は置いておくとして、セレアの進化先に目を通すことにした。
―――――
>選択を確認、受理いたしました。
>『シャドーホース』の『セレア』の進化先を選択してください。
1:『メタルバイコーン』
・通常のバイコーンが鋼鉄の皮膚となった強靭なバイコーン。二つの角を頭に生やし、闇夜の中をさっそうと駆け抜ける。闇系統の魔法が使用可能になり、周囲の状態が夜中もしくはそれに近い状態に限ってステータスがアップする。
2:『ダークユニコーン』
・通常のユニコーンが堕ちた姿であり、真っ黒な毛並みが特徴的である。本来、その角は様々な状態異常を回復する薬の材料になるのだが、ダークユニコーンのモノの場合は即死薬(即死確率は10%)の貴重な材料になる。
3:『デュラハンライダー』
・デュラハンの従えていた馬に限り発現する進化先。頭を失い首無しの馬となる代わりに、胴体から幻影のデュラハンが生え、戦闘を行う。実体を失っており、魔法以外の攻撃を無効化できる代わりに、光に関する魔法に対しての耐性が300%ダウンする。
4:『???」
・進化するまで閲覧不可能。
―――――
「‥‥‥うわぁ、これまたどれも、個性的なものが出たな」
「しかし、何かと暗そうなというか、中二感をくすぐりそうだな。面白い進化をもっているのか」
「個人的にはデュラハンライダーが気になるのデース!!」
色々と気になる事も多いが、シャドーホースの進化先としては妥当なところかもしれない。それに元々デュラハンもとい名もなき騎士王の乗っていた馬なのだから、こんな進化先が出てきても不思議ではないだろう。
でも、案外まともな方向かもしれん‥‥‥マリーやリンのような進化をする様子もないし、これはこれで一安心と言うべきか、あるいはこの???の選択肢こそが、女体化スキルの影響を受けて出てきたろくでもないものなのか。
「さて、どれにするか…‥‥セレアとしては、どれになりたい?」
【バルヒヒ…‥ヒヒン】
選択肢を見せて選んでもらったが、どうやら僕の判断にゆだねるようで、決めないようだ。
こうなってくると、僕自身で選ぶしかないのだが、どれもこれも捨てがたい。しかし、デュラハンライダーってあるけど、これ選んであの騎士王が復活するとも限らないし、幻のようなものだとむなしいから、1か2を選択するのもありか。
「でも、やっぱりここは謎そうな4を選ぶかな」
―――――
>選択、受理いたしました。
>進化が始まります。
―――――
どれを選んだとしても、面白そうなものが出るのであれば問題あるまい。
そう思い、???を選んだ途端…‥‥その進化はいつものものとは様子が違っていた。
ぼしゅううううううううう!!
「「「え?」」」」
通常の進化であれば、光り輝いて変化をしていくはずだが、開始し始めた途端周囲に煙が噴き出した。
何かトラップでも発動したのかと身構えたが、ログを見たところそうではないという表示が出た。
―――――
>‥ERROR、ERROR、ERROR。
>レイドボス予定だったドリルデッド・デュラハンの一部に、選択可能領域がありませんでした。
>ERROR、ERROR…‥‥緊急対処が行われました。
―――――
ガゴォォォォン!!
大きな音を立て、分厚い棺桶のようなものが出現し、セレアごと呑み込んだ。
―――――
>システム、再起動を確認。進化プロセス再構築。
>進化先の出ないはずだったモンスターへの、進化選択バグを修正致しました。
>条件によって、特殊進化へ移行。後日、該当プレイヤーへの補償を行います。
―――――
ログに次々と表示が出る中、棺桶が再び開き、中からセレアが‥‥‥いや、その姿を大きく変えた者が現れる。
【ヒヒ…‥バルルルルルルルゥ!!】
咆哮をあげ、出てきたのはケンタウロスのような人馬。だが、その身にまとうのは夜空のような真っ黒な鎧であり、全身鎧によって顔が見えない。
―――――
>『シャドーホース』から特殊進化『ナイトメア・ケンタウロスナイト』に進化いたしました。
『ナイトメア・ケンタウロスナイト』
・漆黒の鎧を身に纏う、悪夢の使者と呼ばれるケンタウロスナイトの上位種。その鎧その物が闇であり、受ける攻撃を大幅に減らすが、装備品を外すことは可能。ATK・HPが大幅に上昇し、両腕が付いたことにより剣などの武器を装備することが可能になった。代償として、素早さが下がっているが、鎧を外すことで向上させることが可能。
―――――
「‥‥‥うわぁ、ハルさん、これまた珍しいというか、予想外のことをしでかしたね」
「凄いデース!!あのお馬さんが、カッコ良さそうな騎士馬になったのデース!!」
なんというか、色々とツッコミどころがあり過ぎて追いつかない。ツッコミ役がこの場に早急に必要とされるのだが、ツッコミ役が不在である。
色々ととんでもない表示が出ていたような気がするのだが、とにもかくにもセレアが大きく変貌してしまったのであった‥‥‥‥
「ERRORや特殊進化‥‥‥どこからツッコめばいいの?」
【シャゲェ?】
【ガウガーウ?】
【バルルルルルルルルルゥ!!】
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