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ver.1.0 ~始まりの音色~
ver.1.1.1-36話 知り得ぬ事情も、こっそりと
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‥‥‥祠の奥へ進むこと数分後。そこには、一件の小さな建物があった。
遠目で見ても分かるが、そこは何かの舞台のようになっており、その上では巫女たちが舞い踊っている様子かうかがえる。
プレイヤーたちが見ることが出来る、大樹の村内の巫女たちが踊る場所とはまた違う雰囲気で…‥何と言うか、あちらが一般大衆向けの観光用のもののようで、こちら側は本物の舞のようだ。何に捧げているのかは知らないけれども、その舞い踊る様子は集中しているようで、僕らが近づいてきても気にせずに、舞を捧げるように踊り続ける。
「‥‥ここが、本当の舞の踊り場でもあるのじゃよ」
「っと、久しぶりと言うべきかな…‥えっと、厄災引き連れのじゃロリ娘さん」
「何じゃよ、その滅茶苦茶な呼び名は。わらわはもうしっかりとレティアという名前があるのじゃから、そっちで呼んでほしいのぅ」
ふと後方から声をかけられて振り向いてみると、そこにはのじゃロリことレティアが立っていた。
相変わらずののじゃロリと言う様な容姿だが、その服装は変わっており、舞い踊っている巫女たちと同じ巫女服に身を包んでいる。
‥‥‥正直言って、七五三で着こんだだけの女の子にしか見えないけれどね。背伸びをして失敗して服に着られている幼女としか見えず、会社のロリコン同僚がいたら狂喜乱舞したのは間違いないだろう。
そんなどうでもいい事はさておき、久しぶりの再会なのだが、雰囲気としては変わっていた。前までは動きまくる活発な人だったが、何やら落ち着いた様子。
これもアップデートによるもので、調整がされたのかなと思いつつも、手招きで呼ぶ動作をしてきたので大人しくその後についていった。
「‥‥もうちょっとかかるので、喋りながら話題を出したいのじゃが、お主らわらわの妹に会ったのじゃろ?」
「ん?ああ、確かロティさんだったっけ」
この祠の中の空間はソコソコ広いのか、案内される場所まで時間がかかるようで、暇つぶしに話題を出してきたようである。
思い出す最初のインパクトが中三病さんの急所タップダンス事件のせいで、少し恐怖を感じなくもないのだが、それでもレティアと血のつながった妹らしいのだが‥‥‥ダンジョン攻略中に、運営からの緊急調整だが何だかで凍結処理を施され、いつの間にか帰還していたはずである。
「うむ、あやつに何かされなかったか?」
「何かって?うーん‥‥‥ダンジョン内で突き落とされたぐらいかな?」
わざとではなさそうな動きだったかもしれないが、それでも落とし穴に突き落とされた事実は変わらない。まぁ、結果としてはピンチだったとはいえ何とか勝負に乗り切ってセレアをテイムできたし、ダンジョン攻略もできたからよかったのだが…‥‥いや、ちょっと凍結していた彼女をマリーが武器がわりにダンジョンボスに叩きつけてでかいたんこぶを作ったことは申し訳なく思う。黙っていればバレないとは思うけれどもね。
「なるほどのぅ‥‥‥うむ、それ絶対にわざとじゃな。あやつの性格を考えると、そうとしか思えぬ」
「そうなの?というか、優しそうな人でもあったと思うんだけど」
「甘いのぅ、わらわの妹がまともな常識人だと思うのかのぅ?」
‥‥‥この場合、どう答えるべきなのか。というか、自覚していたのだろうか。ツッコミを入れたいのだけれども、少々迷ってしまう。
しかし、説得力が非常に大きいせいで、イメージが揺らぐな…‥‥この調子だと、このレティアの両親もまともじゃない可能性もあるのか?流石にそれはないと言い切れないのが、怖い所である。
「あの妹はのぅ、わらわとは違って、最初からしっかりした設定もあったのじゃよ。わらわは今でこそここの長の娘の次期巫女長としての設定を貰ったのじゃけれども、妹は違うのを持っていたのじゃ」
「違うものって?」
「『試練の巫女』‥‥‥お主ら、プレイヤーに対して様々な試練を与え、乗り切った暁には見合った報酬を与えるNPCとしての役割を持っていたのじゃ」
レティアの話によると、彼女がまだ名前なしの時の時点で、妹の方は設定が固まっており、しっかりと作り上げられていたらしい。
プレイヤーたちの成長を見た運営たちは、その成長がどのぐらいのものなのかテストするために用意したようで、きちんと練り上げられて調整がされていたそうだが‥‥‥そのシステムを構築している最中に、ちょっとしたミスが見つかった。
「NPCであるわらわが言うのも何じゃが、運営達はNPCに対して成長するための様々なプログラムを仕込んでいるのじゃ。本社のスーパーコンピュータとかが連動してこの世界を作り上げているのは良いのじゃけれども、一体一体を全部見ると負荷が大きいゆえに、各々にある程度の自由な権限を持たせて、軽くさせる目論見もあったのじゃろうが、それが裏目に出たのじゃろな」
その裏目に出た原因の一つが、成長用に使われていたプログラムの数々。
NPCにある程度の自己意識を発生させ、互に認識をさせあい、競争力による発展や、感情などを理解させることでここを更に生き生きとさせるためだったらしいが、一部にミスがあったらしい。
結果として、何人かのNPCが暴走し、本来の設定とはまた異なるような動き方や、合っていると言えば合っているのだが、やり方が間違っているとも受け取れるような行動をするようになったという。
「その中で、暴走していた一体がわらわの妹のロティじゃよ。あやつは試練の巫女として試練を与える役目を持っていたのじゃが、与える試練に問題が出来たのじゃよなぁ…‥‥」
はぁぁっと深い溜息を吐くレティア。こののじゃロリもまたその暴走によって生まれたと言って過言でもなさそうだが、ロティはさらにその上をいったらしい。
暴走した結果、試練の巫女としての役目を果たすと言えば果たすのだが、その試練が厳しすぎて乗り越えられないようなものが多く、試練を受ける気もないのに無理やり受けさせるために猫を被るなどをしていたらしい。
‥‥‥上をいくとは言うが、まだまともな気がするのは何故なのか。女体化スキルとかボスモンスター戦へ突撃させたお前が言えることなのだろうか?
とはいえ、一応そのあたりの不味い事実に関して運営は見つけ、アップデートで処理して今は落ち着いているようだ。
この場所にはおらず、試練の巫女としての役目を果たす地に今はいるそうだが、それでもアップデート前に比べると挙動もまともになったそうである。
「ついでに、わらわも調整されたからのぅ。前よりも控えめになったのは、もどかしいのじゃ」
「控えめ‥なのかな?」
「というか、調整できるならばせめて、妹と体を交換して欲しかったのじゃが。あやつの方がより成長しているって、どういう事なんじゃよ。社内にロリコンでもいるのか?豊満な体を望まないこともないのじゃが、ちょこっとは叶えてくれていいじゃろ‥‥‥」
そっちか。いや、デリケートな話のようだし、黙っているのが吉だ。ロリコン同僚が余計な一言で、社内中の女性社員からふっ飛ばされたことが思い出される。
とにもかくにも、その後はたわいない話を続けていたが、足が止まった。
どうやら目的地に着いたようだが…‥‥目の前にはいつの間にか、巨大な大木がそびえたっていた。
「これは…?」
「ふふふ、この村が大樹の村と呼ばれる理由のものじゃ。村の中じゃと確かに巨木もいくつかあったが、あれは全部、この目の前の大樹の子供なのじゃよ」
そこに立っていた巨木は、確かに村の中で見かけるような木々なんかよりもはるかに大きく、荘厳で威厳があるように見える。
しめ縄が装飾されており、神社とかにあるようなご神木と言われても納得できるような、雰囲気だけで圧倒するかのような巨大さが物語っている。
「大樹の村の、この祠の空間は、この大樹のための祈りを奉げる空間なのじゃよ。祈りを奉げることによって、この村への災いはあのうっそうと生い茂った大きな手のような木々によって遮られ、平穏が訪れる‥らしいのぅ」
「らしいって?」
「いや、わらわが言うのも何じゃが、本当なのかのぅと。いやまぁ、実際に平和じゃから、文句もないのじゃがな」
防げているのかはちょっと疑問だが、外の赤い夜などのイベントを考えると、影響がないのはそのおかげと言って良いのかもしれない。
運営によるシステム調整などもあるかもしれないが、それでもこの目の前の巨木は確かに神々しさというか、できないことは無さそうと思わせてくる。
「さてと、ここへ連れて来たのは何も、見せるためだけじゃないのじゃ。ちょうどわらわにも設定が付いたのじゃし‥‥‥大樹の村の次期巫女長として、ちょっとやらせてほしいことがあるのじゃよねぇ」
「‥‥‥何を?」
「試練。試練の巫女の妹とは違い、わらわの方は『大樹の試練の巫女』と明確な肩書がついているのじゃよ!!お主らの今の実力をこの大樹に見せてもらうためにのぅ!!」
くるっとこちらに向き直って、そう叫ぶレティア。
その手にはいつの間にか、依然見たのとはまた違う扇が握られており、宝石のように輝いている。
「いでよ!!大樹の試練、『フォレストガーディアン』!!勝っても負けても正当に評価するのじゃから、やるきがあろうとなかろうと強制的にじゃよ!!」
ごごごごごっと地鳴りが響き、大樹が大きく震えたかと思えば、大きな木の実のようなものが落ちて来た。
そしてそれがぱかっと割れて、中から一つ目の巨人のような‥‥いや、見た目的にどこかのモノアイを持ったロボットにも見えなくもない、木のような表面をした大きな人型のものがあらわれる。
【ウゴォォォォォォォォォス!!】
―――――
>注意!!強制戦闘イベントが開かれました!!
>『大樹の試練:森の番人との戦い』で、拒否不可能!!
『大樹の試練:森の番人との戦い』
畏れ、敬え、首を垂れるが良い。
我が大樹の村は、我が力によって守られし愛しの村。
その村の中枢へ入りし者よ、巫女によって認められし実力者よ、挑み、そして見せよ!!
そのありようを、その生きざまを、その力を!!
『フォレストガーディアン』
大樹の村限定、大樹を守りし万人の役目を果たす、大樹自身が創り上げた存在。
モンスターとは異なり、ガーディアン自身が大樹の分身であり、その実力を図るために用意される。
パワーを生かした戦闘も行うが、エルフたちが住まう場所のものでもあるせいか魔法も扱い、魔法戦士のような戦い方をする。
―――――
「って、強制的な戦闘イベントって聞いていないんだけど!?」
「言っておらぬからのぅ!!のこのこと疑うことなくついていく癖をここでしっかり学んで直していくのが良いのじゃよ!!」
【シャゲェ、シャゲェ】
【ガウガウ】
【ヒヒー、ヒヒーン】
「皆納得してどうするの!?」
テイムモンスターたちが正論に納得して頷くが、ツッコミを入れている場合じゃないかもしれない。
外での赤い夜の戦闘がここでは逃れられるはずだったのに、それよりも面倒なことに巻き込まれてしまったようであった…‥‥
遠目で見ても分かるが、そこは何かの舞台のようになっており、その上では巫女たちが舞い踊っている様子かうかがえる。
プレイヤーたちが見ることが出来る、大樹の村内の巫女たちが踊る場所とはまた違う雰囲気で…‥何と言うか、あちらが一般大衆向けの観光用のもののようで、こちら側は本物の舞のようだ。何に捧げているのかは知らないけれども、その舞い踊る様子は集中しているようで、僕らが近づいてきても気にせずに、舞を捧げるように踊り続ける。
「‥‥ここが、本当の舞の踊り場でもあるのじゃよ」
「っと、久しぶりと言うべきかな…‥えっと、厄災引き連れのじゃロリ娘さん」
「何じゃよ、その滅茶苦茶な呼び名は。わらわはもうしっかりとレティアという名前があるのじゃから、そっちで呼んでほしいのぅ」
ふと後方から声をかけられて振り向いてみると、そこにはのじゃロリことレティアが立っていた。
相変わらずののじゃロリと言う様な容姿だが、その服装は変わっており、舞い踊っている巫女たちと同じ巫女服に身を包んでいる。
‥‥‥正直言って、七五三で着こんだだけの女の子にしか見えないけれどね。背伸びをして失敗して服に着られている幼女としか見えず、会社のロリコン同僚がいたら狂喜乱舞したのは間違いないだろう。
そんなどうでもいい事はさておき、久しぶりの再会なのだが、雰囲気としては変わっていた。前までは動きまくる活発な人だったが、何やら落ち着いた様子。
これもアップデートによるもので、調整がされたのかなと思いつつも、手招きで呼ぶ動作をしてきたので大人しくその後についていった。
「‥‥もうちょっとかかるので、喋りながら話題を出したいのじゃが、お主らわらわの妹に会ったのじゃろ?」
「ん?ああ、確かロティさんだったっけ」
この祠の中の空間はソコソコ広いのか、案内される場所まで時間がかかるようで、暇つぶしに話題を出してきたようである。
思い出す最初のインパクトが中三病さんの急所タップダンス事件のせいで、少し恐怖を感じなくもないのだが、それでもレティアと血のつながった妹らしいのだが‥‥‥ダンジョン攻略中に、運営からの緊急調整だが何だかで凍結処理を施され、いつの間にか帰還していたはずである。
「うむ、あやつに何かされなかったか?」
「何かって?うーん‥‥‥ダンジョン内で突き落とされたぐらいかな?」
わざとではなさそうな動きだったかもしれないが、それでも落とし穴に突き落とされた事実は変わらない。まぁ、結果としてはピンチだったとはいえ何とか勝負に乗り切ってセレアをテイムできたし、ダンジョン攻略もできたからよかったのだが…‥‥いや、ちょっと凍結していた彼女をマリーが武器がわりにダンジョンボスに叩きつけてでかいたんこぶを作ったことは申し訳なく思う。黙っていればバレないとは思うけれどもね。
「なるほどのぅ‥‥‥うむ、それ絶対にわざとじゃな。あやつの性格を考えると、そうとしか思えぬ」
「そうなの?というか、優しそうな人でもあったと思うんだけど」
「甘いのぅ、わらわの妹がまともな常識人だと思うのかのぅ?」
‥‥‥この場合、どう答えるべきなのか。というか、自覚していたのだろうか。ツッコミを入れたいのだけれども、少々迷ってしまう。
しかし、説得力が非常に大きいせいで、イメージが揺らぐな…‥‥この調子だと、このレティアの両親もまともじゃない可能性もあるのか?流石にそれはないと言い切れないのが、怖い所である。
「あの妹はのぅ、わらわとは違って、最初からしっかりした設定もあったのじゃよ。わらわは今でこそここの長の娘の次期巫女長としての設定を貰ったのじゃけれども、妹は違うのを持っていたのじゃ」
「違うものって?」
「『試練の巫女』‥‥‥お主ら、プレイヤーに対して様々な試練を与え、乗り切った暁には見合った報酬を与えるNPCとしての役割を持っていたのじゃ」
レティアの話によると、彼女がまだ名前なしの時の時点で、妹の方は設定が固まっており、しっかりと作り上げられていたらしい。
プレイヤーたちの成長を見た運営たちは、その成長がどのぐらいのものなのかテストするために用意したようで、きちんと練り上げられて調整がされていたそうだが‥‥‥そのシステムを構築している最中に、ちょっとしたミスが見つかった。
「NPCであるわらわが言うのも何じゃが、運営達はNPCに対して成長するための様々なプログラムを仕込んでいるのじゃ。本社のスーパーコンピュータとかが連動してこの世界を作り上げているのは良いのじゃけれども、一体一体を全部見ると負荷が大きいゆえに、各々にある程度の自由な権限を持たせて、軽くさせる目論見もあったのじゃろうが、それが裏目に出たのじゃろな」
その裏目に出た原因の一つが、成長用に使われていたプログラムの数々。
NPCにある程度の自己意識を発生させ、互に認識をさせあい、競争力による発展や、感情などを理解させることでここを更に生き生きとさせるためだったらしいが、一部にミスがあったらしい。
結果として、何人かのNPCが暴走し、本来の設定とはまた異なるような動き方や、合っていると言えば合っているのだが、やり方が間違っているとも受け取れるような行動をするようになったという。
「その中で、暴走していた一体がわらわの妹のロティじゃよ。あやつは試練の巫女として試練を与える役目を持っていたのじゃが、与える試練に問題が出来たのじゃよなぁ…‥‥」
はぁぁっと深い溜息を吐くレティア。こののじゃロリもまたその暴走によって生まれたと言って過言でもなさそうだが、ロティはさらにその上をいったらしい。
暴走した結果、試練の巫女としての役目を果たすと言えば果たすのだが、その試練が厳しすぎて乗り越えられないようなものが多く、試練を受ける気もないのに無理やり受けさせるために猫を被るなどをしていたらしい。
‥‥‥上をいくとは言うが、まだまともな気がするのは何故なのか。女体化スキルとかボスモンスター戦へ突撃させたお前が言えることなのだろうか?
とはいえ、一応そのあたりの不味い事実に関して運営は見つけ、アップデートで処理して今は落ち着いているようだ。
この場所にはおらず、試練の巫女としての役目を果たす地に今はいるそうだが、それでもアップデート前に比べると挙動もまともになったそうである。
「ついでに、わらわも調整されたからのぅ。前よりも控えめになったのは、もどかしいのじゃ」
「控えめ‥なのかな?」
「というか、調整できるならばせめて、妹と体を交換して欲しかったのじゃが。あやつの方がより成長しているって、どういう事なんじゃよ。社内にロリコンでもいるのか?豊満な体を望まないこともないのじゃが、ちょこっとは叶えてくれていいじゃろ‥‥‥」
そっちか。いや、デリケートな話のようだし、黙っているのが吉だ。ロリコン同僚が余計な一言で、社内中の女性社員からふっ飛ばされたことが思い出される。
とにもかくにも、その後はたわいない話を続けていたが、足が止まった。
どうやら目的地に着いたようだが…‥‥目の前にはいつの間にか、巨大な大木がそびえたっていた。
「これは…?」
「ふふふ、この村が大樹の村と呼ばれる理由のものじゃ。村の中じゃと確かに巨木もいくつかあったが、あれは全部、この目の前の大樹の子供なのじゃよ」
そこに立っていた巨木は、確かに村の中で見かけるような木々なんかよりもはるかに大きく、荘厳で威厳があるように見える。
しめ縄が装飾されており、神社とかにあるようなご神木と言われても納得できるような、雰囲気だけで圧倒するかのような巨大さが物語っている。
「大樹の村の、この祠の空間は、この大樹のための祈りを奉げる空間なのじゃよ。祈りを奉げることによって、この村への災いはあのうっそうと生い茂った大きな手のような木々によって遮られ、平穏が訪れる‥らしいのぅ」
「らしいって?」
「いや、わらわが言うのも何じゃが、本当なのかのぅと。いやまぁ、実際に平和じゃから、文句もないのじゃがな」
防げているのかはちょっと疑問だが、外の赤い夜などのイベントを考えると、影響がないのはそのおかげと言って良いのかもしれない。
運営によるシステム調整などもあるかもしれないが、それでもこの目の前の巨木は確かに神々しさというか、できないことは無さそうと思わせてくる。
「さてと、ここへ連れて来たのは何も、見せるためだけじゃないのじゃ。ちょうどわらわにも設定が付いたのじゃし‥‥‥大樹の村の次期巫女長として、ちょっとやらせてほしいことがあるのじゃよねぇ」
「‥‥‥何を?」
「試練。試練の巫女の妹とは違い、わらわの方は『大樹の試練の巫女』と明確な肩書がついているのじゃよ!!お主らの今の実力をこの大樹に見せてもらうためにのぅ!!」
くるっとこちらに向き直って、そう叫ぶレティア。
その手にはいつの間にか、依然見たのとはまた違う扇が握られており、宝石のように輝いている。
「いでよ!!大樹の試練、『フォレストガーディアン』!!勝っても負けても正当に評価するのじゃから、やるきがあろうとなかろうと強制的にじゃよ!!」
ごごごごごっと地鳴りが響き、大樹が大きく震えたかと思えば、大きな木の実のようなものが落ちて来た。
そしてそれがぱかっと割れて、中から一つ目の巨人のような‥‥いや、見た目的にどこかのモノアイを持ったロボットにも見えなくもない、木のような表面をした大きな人型のものがあらわれる。
【ウゴォォォォォォォォォス!!】
―――――
>注意!!強制戦闘イベントが開かれました!!
>『大樹の試練:森の番人との戦い』で、拒否不可能!!
『大樹の試練:森の番人との戦い』
畏れ、敬え、首を垂れるが良い。
我が大樹の村は、我が力によって守られし愛しの村。
その村の中枢へ入りし者よ、巫女によって認められし実力者よ、挑み、そして見せよ!!
そのありようを、その生きざまを、その力を!!
『フォレストガーディアン』
大樹の村限定、大樹を守りし万人の役目を果たす、大樹自身が創り上げた存在。
モンスターとは異なり、ガーディアン自身が大樹の分身であり、その実力を図るために用意される。
パワーを生かした戦闘も行うが、エルフたちが住まう場所のものでもあるせいか魔法も扱い、魔法戦士のような戦い方をする。
―――――
「って、強制的な戦闘イベントって聞いていないんだけど!?」
「言っておらぬからのぅ!!のこのこと疑うことなくついていく癖をここでしっかり学んで直していくのが良いのじゃよ!!」
【シャゲェ、シャゲェ】
【ガウガウ】
【ヒヒー、ヒヒーン】
「皆納得してどうするの!?」
テイムモンスターたちが正論に納得して頷くが、ツッコミを入れている場合じゃないかもしれない。
外での赤い夜の戦闘がここでは逃れられるはずだったのに、それよりも面倒なことに巻き込まれてしまったようであった…‥‥
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