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ver.1.0 ~始まりの音色~

ver.1.1.1-34話 突発的にだから、対策は難しい

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‥‥‥ボーン、ボーンと音が鳴ると同時に、昼夜が暗転する。
 先ほどまで明るい昼間だった世界は、突然赤く染まり、空には不気味な赤い月が映し出されていた。


「‥‥‥移動して早々に、赤い夜が来たか」

 エルフたちが住まうとされる大樹の村に向けて進んでいたのだが、イベントが起きてしまったようである。周囲の他のプレイヤーたちも周囲の変化に素早く反応して驚く者や、この後に何が起こるのかなんとなく予感して身構える者など反応はそれぞれ違うようだ。
 けれども皆、わかっているのだ。この突発的な赤い夜は、恐怖の始まりだと‥‥‥


づぼぉぉぅ!!
ごぼぉぉぉう!!
【【【オボロロロロロロロロロン!!】】】

 地面から手が付き出し、足が飛び出し、体が浮き上がる。
 這い出てきたのは、見た目的に腐臭が漂いそうな、非常に分かりやすいゾンビの類。アンデッド系として追加されたモンスターたちであり、このイベントの間に突然わき出しはじめる恐怖の夜の死者たち。

 一体や二体ではなく、何体ものアンデッドたちが地中から蘇り、地面だけではなく空からも骨の蝙蝠や鳥が襲い掛かり始める。
 ゲリライベント『赤い夜』。アンデッドモンスターたちが大量に出現し、襲撃してくるイベント。


「だからって、あっけに取られてやられるようなことは無い!!マリー、リン、セレア、各自指示に従って出来る限り討伐するぞ!」
【シャゲェ!!】
【ガウゥッ!】
【バルヒヒィーン!!】

 身を守るためにも、赤い夜から生き残るためにも、逃げ場のない大量出現の現状に対して戦う選択しか残されていない。
 周囲にいた他のプレイヤーたちも各自戦闘態勢に移行し、迫りくるアンデッドたちに対処し始めたようだが、僕らの方も同様に動く。

【シャゲェェェ!!】

 アンデッドはすでに死んでいるようなものなので、毒の効果は薄いようだが、動くためには体が必要。ゾンビやスケルトンとは言え骨が支えて動いているようであり、動きを阻害するためにマリーが素早く巻き付いては締め上げ、その力で砕いていく。

【ガウガウ!!】

 華麗な蹴り技によって近寄らせないようにリンはアンデッドたちをふっ飛ばし、広範囲に攻撃するために時たま地面に逆立ちをするように手を付け、回転して一気に周囲を蹴り上げる。

【ヒヒヒィン!!】
「そしてこちらは、攪乱爆殺っと!セレア、出来る限り足場を強く蹴り上げて飛ぶように!!一か所に留まると逃げ場を無くすからな!!」

 セレアに騎乗し、周囲に爆裂薬を振りまいて吹き飛ばし、時にはセレアの足場となってアンデッドたちは踏み砕かれていく。
 各自の持てる能力を活かし、このゲリライベントを生き残るために全力を尽くす。
 時にはマリーでリンを搦め、長い胴体で攻撃範囲を一気に伸ばしたり、セレアの突進でリンの攻撃力を足したり、あるいはそろって蹴りを入れて、叩きつけて潰しまくる。

 幸い、大勢のプレイヤーたちが対処しているおかげで数の割には一人当たりの対処量もかなり減っており、できないことは無い。
 しかしながら、もしもプレイヤーが少ない時間帯や、もしくは今はまだ脆いような相手が多いけれども、頑丈な鋼鉄の骨を持つ『メタリックスケルトン』や鎧をまとう『リビングデッド』が多く出る状態であれば、厳しい状況になっていた可能性もある。
 突発的に引き起こされる、起きる予測がし辛いゲリライベントなだけに、そのような厳しい状態になって全滅したという報告がネットで挙げられていたりするのだ。


 とはいえ、今回の場合は全員生き延びたようで、ある程度の時間が経過した後赤い月が急に地平線に沈み、空に太陽が昇った。
 それと同時に一気に全滅させる演出なのか、アンデッドたちの体が日の光に焼かれ、炎上して塵と化していく。

―――――
>今回の『赤い夜』での犠牲者は、現時点でのプレイ中のプレイヤーの1割にもなりませんでした!!
>討伐数も今回の目標値を達成しており、犠牲が少ない事も併せて特別ボーナスがだされます!!
―――――

「「「「いよっしゃぁぁぁぁぁぁああ!!」」」」

 生き延びたのもあるけれども、赤い夜が終わると同時に出て来たお知らせに対して、嬉しさで叫ぶプレイヤーたち。
 そして出されるのは普通では稼ぎにくい量の素材やALで、全員狂喜乱舞している。正直言って、赤い夜の不気味なアンデッドたちの襲撃よりも、これで羽目を外してやらかす人の方が怖いような気がしなくもない。
 ああ、そう言っている間にもプレイヤーの一人が喜び過ぎて‥‥

カチッ
ドッゴォォぉォォォォォォン!!

 アップデートで追加された、トラップを仕掛ける工作員のようなモンスター『トラップボーン』が冥途の置き土産に残しておいた地雷で吹っ飛んだ。最後の最後まで油断するなと警告していたようで、他の人達も巻き添えに会い、連鎖爆発が起きている。
 
「生き延びたとしても、最後まで油断できないか‥‥‥油断したら死亡しかけるのって、ある意味お約束かな?」
【シャゲェ】
【ガウガウ】
【バルヒヒーン】

 華麗に宙を舞って墜落したプレイヤーを見ながらつぶやけば、皆もそうかもしれないと思って頷く。
 何にしても、連鎖爆発現場の巻き添えになる前にその場から全力で駆け抜け、突発的なイベントを経験しつつ、僕らは大樹の村へ向かって再び進み始めるのであった…‥‥


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