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ver.1.0 ~始まりの音色~

ver.1.1-28話 なぜそれで、行こうとしたのか

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「‥‥‥にしても、こうやって潜んで進むのも久しぶりな気がするな」

 息をひそめつつ、周囲を警戒しながらそうつぶやいてしまうが、気分としては悪くはない。
 ここ最近はマリーとリンという心強いテイムモンスターたちがいたからこそ堂々とした攻撃やそぶりなどが多くなっていたが、不意打ちや奇襲といった手段を使う方が、ソロプレイとしてやる意味もある。
 なのでこうやって仲間と引き離されている現状でも、過去にやったことが活かせるので問題は無いだろう。

 しいて言うのであれば、孤独な状況というのが心細いというか…‥‥でもまぁ、あっちには中三病さんやロティさんがいるから、そう簡単に全滅することもあるまい。むしろ、ソロプレイ状態の僕の方がやられる可能性が非常に大きいので、慎重に先を進むことが求められる。手にしている武器になる道具の類も数に限りがあるし、道具頼りな錬金術師としては枯渇した時こそが真の最悪の状況になる。
 だからこそ、時々立ち止まっては素材になりそうなものを採取したり、ギリギリ一人で倒せそうなモンスターがいれば適度に狩ってドロップ品を狙い、錬金術やその他の技術なども使ってどうにかできるように創意工夫を凝らす。
 そのおかげもあって、普段では手に入らないようなアイテムを色々と製作できたので、ある程度は対策しやすくもなっている。






「それにしても、ドラメタルが全然でない割には、鉄鉱石とか金鉱石といった金属系が手に入りやすいのはこれはこれで僥倖というべきか‥‥‥」

 金属関連の素材が大量に入手が出来ているのは嬉しい事なのだが、その分今後の方で金属系の装備品をそろえたほうがいいという事も暗示しているような気がしなくもない。
 というのも、最初こそは皮や木製装備で乗り切れるところがあっても、徐々に強い装備品にしないときつくなるのがゲームとしてのお約束でもあるからね。どう考えても装備品の新調などが求められるし、今回僕がかかったような落とし穴のような人を罠にかける類も増えてくることも考えると、対策を考えるべきかもしれない。のんびりプレイをしたいところだけど、強制的な襲撃イベントなどが今後起きないとは限らないから、そのあたりも考えて情報も積極的に集めたい。

 
 孤独な状態だからこそ無駄な考えとかもせずに、一人での考えに集中して進めていた‥‥‥‥その時だった。

――ヴィイドガガガガガガガ!!
「ん?」

 突然、何か聞き覚えのないような、掘り進むような音が聞こえ、僕は足を止めて耳を立てる。何が起きてもいいように爆裂薬を手に持ち、投擲可能な状態にしてどこから響くのか探ると、その音は壁際から聞こえて来た。
 徐々に音が大きくなって、それに伴って壁が揺れ始め、ひびが入ってくる。少しづつ、けれども確実に何かが壁の中を突き進み、掘ってきていると確信できる。
 何が来ているのかは分からないが、何かが来ていることだけは確実であり、備えることはできるだろう。だからこそ、そっと後方へ下がって見守っていると、ついに壁が砕け散り、吹っ飛んでその正体を見せた。


ドッゴォォォォォォォン!!
【ウボロロォォォォォォォ!!】
【バルヒヒヒーン!!】

 出てきたのは、鎧を着た真っ黒な馬にまたがる首のない騎士。馬上槍と言うべき武器を持っているようなのだが、その槍先は回転しておりなんとなくドリルを想像させて、あれで掘り進んできたのだと考えるのは間違いないだろう。でも、現実的に考えるとあれで本当に掘れるのかな?
 というか、アレは何なのか?なんというか、デュラハンとかそういうのに似ている気はするけれども、あれって確か首なしの馬にまたがったイメージもあるし、あれは首のある馬だから何かが違うはず。こういう時は、モンスターの書とかで情報を見れば‥‥‥

―――――
『ドリルデッド・デュラハン』
Ver.1.1.1にて追加予定の、アンデッド系統のモンスターの一体。槍がドリルのように回転し続けており、どこまでも執拗に生者を追いかけることが可能になり、その生を終わらせることを本能に持つモンスターと化した。

『シャドーホース』
デュラハン系統にセットで付く首なしの馬とは異なり、生前からの愛馬が姿を変えることなく、共に縛られて生まれた馬のモンスター。
強靭な脚力は普通の馬よりも強く、金属すらも踏み砕いて突き進むことが出来る。
―――――

「ver.1.1.1?ってことは、まだ実装されていないやつなんじゃ…‥?」

 そんなものが、このアルケディア・オンラインに出るのだろうか?いや、そういえばのじゃロリの例もあるし、運営が事前通告なしで密かに配置していてもおかしくはないだろう。
 追加予定となっているとなると、まだテストプレイをしているとか、試作段階、調整中という言葉が思いつくのだが‥‥‥アレ?この状況、もしかして不味くないかな?

【ウボロォォォォォォン!!】

‥‥‥本能的に生者の生を終わらせるというのがあるせいか、僕の気配にすぐに気が付いたようで、こちらへ向けて咆哮を上げる。というか今更だけど、首が無いのにどこで咆哮を上げているのかというのが気になる。そう言えば、デュラハンと言えば首なし騎士だけど、一応頭はあるイメージを持っているはずだが、その頭が見当たらないような‥‥‥あ、いや、あったわ。よく見たらドリルの先端に何か丸っこいのが刺さっているかと思ったら、普通に生首が見えているんだけど。

【ウボロォォォォォン!!】

 ぎゅいぃぃぃぃぃぃんっと音を立てて槍を回転させ始め、ドリルのように地面を軽く砕きつつ、僕の方へその先端を向け直す。
 どうやらロックオンされたようで、馬の方にも手綱を片手で器用に握りながら操縦し、今にも襲い掛かる気満々らしい。

「とはいえ、そう簡単にやられてなるかぁ!!『新型煙幕爆弾』!!」

ドォォォン!!

 やすやすとやられるわけにもいかないし、最近新しくしたより大量の煙幕が出るアイテムを使って、僕は煙に巻いて逃げることにした。
 どこからでも追ってきそうだが、ここは先手必勝逃げるが勝ち。逃げるための道具ならば、こちら数をそろえているので、何とかなるはずである。

 とにもかくにも、最近ちょっと走ることが多いことに文句を言いたくなりつつも、ダンジョン内での逃走劇を…‥‥


バシィッツ!!
「あべしっ!?何でここに壁が!?」

―――――
>ドリルデッド・デュラハンのスキル『強制決闘結界』が発動しました。
>この戦闘からは逃げることはできません。
―――――

「うっそだろおい!?ボスモンスター扱いのようなやつかよ!?」

 まさかの以前のポイズンクラブを思い出させるような、逃走不可能状態。というか、そんなものがあるなら追いかける意味が全くないというか、強制的な戦闘を絶対にさせられるのは酷すぎる。

【ウボロォォォォォン!!】
【バルヒヒヒヒヒーン!!】
「ああもう!!こうなったら破れかぶれでやってやるけど、後で絶対に運営に文句を言ってやるぅぅ!!」

 正直言って、この孤独な状態でやるのは勝率が非常に低いが、一人だからこそやれる無茶もあるし、人目を気にせずに女体化スキルなどによる舞の効果違いを利用する戦法などを取ることが出来る。
 思いっきり捨て身になって見た分、全力をもって相手をすることに決めたのであった…‥‥ところで、アンデッドに爆弾とか効くかな‥‥‥?というか、この場合戦闘を終えるにはどういう条件が‥‥?
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