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ver.1.0 ~始まりの音色~
ver.1.1-27話 意図的でも偶然だとしても、かかることには変わらない現実も
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落石ゴロゴロトラップというテンプレのような仕掛けもなんとか乗り越えつつも、ダンジョンはやはり通常のエリアとは異なるようで、思いっきりその恐ろしさを見せつけてくる。
普通ではありえないような、多くの初見殺しのようなトラップの数々は、怯えながら進ませられる精神的な削りを入れてくるだろう。群れでいるモンスターとの戦闘は経験していても、ダンジョン内は外とは違う閉塞空間ゆえに、追い詰められている感じが凄まじいだろう。
「そして当然、その両方を思いっきりやらかすのもどうかと思うけど‥‥‥っと、リン、中三病さんの後方に迫るロックバードを蹴り飛ばせ!!」
【ガウガーウ!!】
「マリーは状態異常で、攻撃をかわす奴らへHPをじっくり削れ!!当たっていない間でも多少は稼ぎたい!!」
【シャゲェ!!】
「なんかもう、ハルさんがリーダとなってないか、コレ?」
「でも、的確なのも多いので、助かるわ!!次はどうすればいいかしら!!」
「ロティさんはそのまま舞で回避しながら、全員へバフを!!僕が回復薬で治したりするから、中三病さんはそのまま全力で前の敵を薙ぎ払ってくれ!!」
光り輝く床のせいでトラップが見にくく、現在とあるダンジョン内の大きな広間のような場所にて、大量のモンスターが出現するモンスターハウスのトラップが作動しており、僕らはその対応に追われていた。
各々がバラバラにやっていては全滅の可能性も大きく、だからこそ協力して連携していたはずだが、いつの間にか指揮官役をさせられていた。まぁ、僕自身も爆裂薬などで戦えるとは言え、基本的に錬金術師は道具便りのサポート役に徹したほうがいい。
リンと中三病さんには前に出てもらいつつ、ロティさんの舞やマリーの状態異常で効率を上げつつ、足りない回復役の面子の代わりに回復薬を利用して補うだけの単純な作業だが、それでもこうやってパーティとして無事に機能しているのは喜ばしい事だ。
出来ればモンスターハウスには遭遇したくなかったが、それでもこうやってなんとか乗り切れているのだから、なんとか実力的にここに挑んでも大丈夫な様子である。
「とはいえ、回復薬も万が一に備えてちまちま蓄えていたけれども、やっぱりここの攻略を終えた後は、また貯めないとなぁ…‥‥みるみる無くなっていくのが、今後の不安を煽って来るよ」
「ああ、それならなんとかなるかもしれないぞ?NPCも最近回復薬の良い物を売っていたりするからな」
大きなバトルアックスで薙ぎ払いながら中三病さんがそういうが、そうなってくると今度は資金の方が不安になる。
となると、また錬金術研究に没頭して、副産物を屋台で売って稼ぐことも視野に入れないといけないか‥‥金策とかも必要になるのはゲームらしいと言えばそうだろう。
だがしかし、一応VRMMORとわかっているのだが、こうやってモンスターの大群に襲われる光景は、何度出くわしても慣れることは無い。何とか戦況を優勢に保てていても、逆転される可能性も存在しており、気が抜けることは無い。後はまぁ、以前にのじゃロリとの共闘であったけれども、NPCでもあるロティさんがいる中で、僕らが全滅したらその後が怖いからなぁ…‥‥いざという護身の舞はすでにお披露目済みではあるが、彼女一人にしては置けないだろう。ゲームだから割り切れと言う人もいそうだが、こういう感情のあるようにふるまわれると、本当に割り切れるか?
とにもかくにもなんとかモンスターハウスとなっていた状況を乗り越え、全員疲労困憊となっていた。ここまでの道中でタライ連続落下の罠とか、ゴロゴロ岩再びとか、毒沼出現等などがありすぎたのもある。
なのでここは一旦、全部のドロップ品を回収しつつ休憩することにした。こういう時に、錬金術の模索をして作っておいた机やいすなどが役に立つ。
「にしても、ドロップ品の整理をすると鉱石系が多いけれども‥‥‥やっぱり、ドラメタルは入ってないな」
「となると、一番奥の方か?そこまで行くのも非常に大変そうだ」
「んー、入手できるルートになっているかもしれないけれども、大変よねぇ」
【シャゲェ】
【ガウ~】
ぐでーんっと全員で脱力するが、目的のドラメタル入手までにまだかかりそうなことに重い息を吐く。奥へ進む必要があるのは分かるが、それでも入手までの労力がかなり大きそうだ。ドラメタルがどれだけ貴重な金属なのかという事よりも、この入手の難しさゆえに流通しにくいのではないかとも思えるほどである。
でも、進まないわけにもいかないだろう。得れば親方の役には立つし、こちらとしてもこのダンジョンをずっと出し続けて珍しい鉱石などを得続けるチャンスがあるのだから。労力を考えると販売する際には多少値を釣り上げる必要があるだろうが、それでも返ってくるものを考えると妥当だろう。
「トラップが多いとここまで大変なのは疲れるけどな」
「そうよねぇ、数が多いせいでモンスターの方もかかってくれるのは良いけれどね‥‥‥(落とし穴のトラップ、確か…‥‥)」
「ん?ロティさん、今何か言った?」
「え?ああ、トラップが多いけれども、確か便利なものもあったはずだと思い出してつぶやいただけよ」
「便利なもの?」
ロティさんがボソッと何かをつぶやいたが、どうやらそれは便利なトラップとやらを考えてのものだったらしい。
基本的には矢が飛んできたり火が吹かれたり岩が落ちてきたりと、様々なダメージを与えるトラップや毒ガスを吹き出したり麻痺にさせたりと、状態異常にするトラップの方が多いそうだ。
けれども、中にはこちら側が利用しやすいようなものもあるというか、それはもはやトラップと呼べるのかは分からないけれども効果が+に働くのもあるらしい。回復出来たり、次の階層までの道を指し示してくれたり、その階層のモンスター限定で全滅させるなど、救済策ともいえるような類だろう。
「へぇ、そんなものもあるのか…‥‥中三病さんは前線組なら、そのトラップの情報は知っていた?」
「あー、聞いたことはあるな。ただ、存在自体は非常に稀だ。中にはトラップなのか救済策なのか、分からない類もあったらしいからな」
「というと?」
「金策になるようなトラップで、この世界の通貨のALが大量に落ちてきたらしいが、密室になっていた場所でこれでもかというほど溢れまくり、収納する前に埋もれて窒息死という報告がある。一攫千金か、金に溺れてしまえと言うのか、何がしたいのかよく分からん」
確かに意味が不明そうなものもあるが、全部が全部害悪という事もないのだろう。まぁ、トラップの中にはモンスターが踏んで自滅するのもあるし、無いと言い切れない。いや、そういうのこそまさにその例に当てはまるのかもしれないだろう。
とにもかくにも、多少は気が楽になるようなお得な情報を聞けてちょっと精神的に回復したところで、僕らは再び前進し始める。
そう言えば、出来ればこういう場所だとハウスシステムで逃げ込めると楽だったのだが、生憎ダンジョンでそれをやられるとズルイ攻略法なども出てしまう事も考えられての対策なのか、ハウスシステムは使用不可能になっている。それが非常に残念なポイントか。
「にしても、光る床ってやっぱり厄介だな。どこにどう罠があるのか、目視し辛い」
「ああ、誰かが天井に張り付いて真上から分からないかと探ったこともあったが、それでも分からなかったからなぁ。攻略情報などを交換しているなかだと、『盗賊』『義賊』『探索者』などの特殊なスキルがあれば感知しやすいらしいが、入手法はまだわからん」
「盗賊って‥‥‥それって合って良いスキルなのか?」
「良くないだろうな。そういう事をする輩がいるから付くスキルなのかもしれん」
色々と気になるが、何にしても注意するに越したことは無い。少しでも怪しいトラップが無いか探る手段を模索しつつ、先を進んでいた…‥‥その時だった。
「でも、こうやってピカピカしていると中々見つけに、キャッ!?」
ドンッ!!
「っと!?」
ロティさんが話を聞いて口を開いている中、小さく悲鳴をあげたので見たら、何やらこけたらしい。床につこうととっさに手を前に出していたようで、偶然その前にいた僕が押される形になる。
押された勢いでたんたんっと前の方に進んだ瞬間、
カチィ!
ガバァッ!!
「「「あ!?」」」
【シャ!?】
【ガウッ!?】
何かを踏み抜いたような嫌な音に、僕らがそろって声を出してすぐ後に、何かが開く音がした。ふと、足元の感覚が無くなったので見てみれば、僕の方の床だけ何もなくなっている。
それはつまり、重力も一応存在するこの世界ではまだ浮かぶすべも持たない僕では‥‥‥
ヒュルルルルルルルルルルル~~~~~~!!
「分かっていたけれども、どう考えても落とし穴だ!?」
あっという間に全員の姿が見えなくなり、僕の身体は落とし穴に落下した。
軽快な音がするが、結構笑い事ではない。高さがかなりあるようで落下が長く、流石にグロ設定などはしていなかったけれども過去の経験上これは確実にHPが0になってしまうのが目に見える。
ああ、これがダンジョン攻略失敗死亡みたいなものかと思っていたところで…‥‥
ざっぼぉぉぉぉぉん!!
「ぐぼごべぇ!?」
幸いなことに、どうやら落下先は岩場などではなく、湖のような場所だったらしい。水の衝撃が結構来たが、それでもこちとら滝に落ちた経験もあるので、この程度であればまだ精神的に何とか立ち上がれる。
必死にもがきつつ、水面に浮かんで息を吸い、流されるようなこともないと確認して必死に陸地にたどり着いた。
「ぜぇ、ぜぇ‥‥‥な、なんとかなったけど、このトラップって即死じゃないのか‥‥‥」
落とし穴とくればその先に竹槍とか溶岩とかの即死系統をちょっと考えていたが、どうもパーティメンバーと分断する程度のトラップだったようだ。
よく見ればログの方に状態異常『情報停止状態:メンバーとの再会まで安否確認不可能』と出ており、合流するまではどうにもできないらしい。テイムモンスターを呼ぶことも不可能らしく、テイム状態はされているはずだがこちらに呼び出せない。
「参ったな、これはこれで結構きついぞ」
もともと錬金術師は道具便りの面もあり、ソロプレイだときつい所もある。ここ最近はマリーやリンがいたのでそう思わなかったのだが、久しぶりに完全な孤立状態にさせられてしまった。
まぁ、爆裂薬も回復薬も、その他状態異常にさせる薬なども余裕があるのである程度は無事だが、ここに来るまでにあったモンスターハウスなどに出くわせば、確実に終わるのは間違いない。
「仕方がない‥‥‥合流を目指して、進むしかないか」
落とし穴のトラップという事は、先ほどいた階層からかなり下の方に下がっているのだろう。案外、こういうトラップもさっさと先を目指して攻略したい人には有りがたいのかもしれない。
とはいえ僕らは先を急ぎまくるわけでもなく、目的の物を目指してなのでこういう時には厄介でしかないだろう。
一応その場にとどまって、階層を降りてくると考えられる中三病さんたちを待つのもありだが、待っているだけだとモンスターがやってくる可能性もあるし、一か所に留まらないほうがいい。
結局は最終的な階層まで来る可能性もあるので、ボスモンスター部屋などに出くわすことが無いように、有ったらその場で可能な限り待機するのも手かと思い、先へ行くしかないのであった…‥‥
普通ではありえないような、多くの初見殺しのようなトラップの数々は、怯えながら進ませられる精神的な削りを入れてくるだろう。群れでいるモンスターとの戦闘は経験していても、ダンジョン内は外とは違う閉塞空間ゆえに、追い詰められている感じが凄まじいだろう。
「そして当然、その両方を思いっきりやらかすのもどうかと思うけど‥‥‥っと、リン、中三病さんの後方に迫るロックバードを蹴り飛ばせ!!」
【ガウガーウ!!】
「マリーは状態異常で、攻撃をかわす奴らへHPをじっくり削れ!!当たっていない間でも多少は稼ぎたい!!」
【シャゲェ!!】
「なんかもう、ハルさんがリーダとなってないか、コレ?」
「でも、的確なのも多いので、助かるわ!!次はどうすればいいかしら!!」
「ロティさんはそのまま舞で回避しながら、全員へバフを!!僕が回復薬で治したりするから、中三病さんはそのまま全力で前の敵を薙ぎ払ってくれ!!」
光り輝く床のせいでトラップが見にくく、現在とあるダンジョン内の大きな広間のような場所にて、大量のモンスターが出現するモンスターハウスのトラップが作動しており、僕らはその対応に追われていた。
各々がバラバラにやっていては全滅の可能性も大きく、だからこそ協力して連携していたはずだが、いつの間にか指揮官役をさせられていた。まぁ、僕自身も爆裂薬などで戦えるとは言え、基本的に錬金術師は道具便りのサポート役に徹したほうがいい。
リンと中三病さんには前に出てもらいつつ、ロティさんの舞やマリーの状態異常で効率を上げつつ、足りない回復役の面子の代わりに回復薬を利用して補うだけの単純な作業だが、それでもこうやってパーティとして無事に機能しているのは喜ばしい事だ。
出来ればモンスターハウスには遭遇したくなかったが、それでもこうやってなんとか乗り切れているのだから、なんとか実力的にここに挑んでも大丈夫な様子である。
「とはいえ、回復薬も万が一に備えてちまちま蓄えていたけれども、やっぱりここの攻略を終えた後は、また貯めないとなぁ…‥‥みるみる無くなっていくのが、今後の不安を煽って来るよ」
「ああ、それならなんとかなるかもしれないぞ?NPCも最近回復薬の良い物を売っていたりするからな」
大きなバトルアックスで薙ぎ払いながら中三病さんがそういうが、そうなってくると今度は資金の方が不安になる。
となると、また錬金術研究に没頭して、副産物を屋台で売って稼ぐことも視野に入れないといけないか‥‥金策とかも必要になるのはゲームらしいと言えばそうだろう。
だがしかし、一応VRMMORとわかっているのだが、こうやってモンスターの大群に襲われる光景は、何度出くわしても慣れることは無い。何とか戦況を優勢に保てていても、逆転される可能性も存在しており、気が抜けることは無い。後はまぁ、以前にのじゃロリとの共闘であったけれども、NPCでもあるロティさんがいる中で、僕らが全滅したらその後が怖いからなぁ…‥‥いざという護身の舞はすでにお披露目済みではあるが、彼女一人にしては置けないだろう。ゲームだから割り切れと言う人もいそうだが、こういう感情のあるようにふるまわれると、本当に割り切れるか?
とにもかくにもなんとかモンスターハウスとなっていた状況を乗り越え、全員疲労困憊となっていた。ここまでの道中でタライ連続落下の罠とか、ゴロゴロ岩再びとか、毒沼出現等などがありすぎたのもある。
なのでここは一旦、全部のドロップ品を回収しつつ休憩することにした。こういう時に、錬金術の模索をして作っておいた机やいすなどが役に立つ。
「にしても、ドロップ品の整理をすると鉱石系が多いけれども‥‥‥やっぱり、ドラメタルは入ってないな」
「となると、一番奥の方か?そこまで行くのも非常に大変そうだ」
「んー、入手できるルートになっているかもしれないけれども、大変よねぇ」
【シャゲェ】
【ガウ~】
ぐでーんっと全員で脱力するが、目的のドラメタル入手までにまだかかりそうなことに重い息を吐く。奥へ進む必要があるのは分かるが、それでも入手までの労力がかなり大きそうだ。ドラメタルがどれだけ貴重な金属なのかという事よりも、この入手の難しさゆえに流通しにくいのではないかとも思えるほどである。
でも、進まないわけにもいかないだろう。得れば親方の役には立つし、こちらとしてもこのダンジョンをずっと出し続けて珍しい鉱石などを得続けるチャンスがあるのだから。労力を考えると販売する際には多少値を釣り上げる必要があるだろうが、それでも返ってくるものを考えると妥当だろう。
「トラップが多いとここまで大変なのは疲れるけどな」
「そうよねぇ、数が多いせいでモンスターの方もかかってくれるのは良いけれどね‥‥‥(落とし穴のトラップ、確か…‥‥)」
「ん?ロティさん、今何か言った?」
「え?ああ、トラップが多いけれども、確か便利なものもあったはずだと思い出してつぶやいただけよ」
「便利なもの?」
ロティさんがボソッと何かをつぶやいたが、どうやらそれは便利なトラップとやらを考えてのものだったらしい。
基本的には矢が飛んできたり火が吹かれたり岩が落ちてきたりと、様々なダメージを与えるトラップや毒ガスを吹き出したり麻痺にさせたりと、状態異常にするトラップの方が多いそうだ。
けれども、中にはこちら側が利用しやすいようなものもあるというか、それはもはやトラップと呼べるのかは分からないけれども効果が+に働くのもあるらしい。回復出来たり、次の階層までの道を指し示してくれたり、その階層のモンスター限定で全滅させるなど、救済策ともいえるような類だろう。
「へぇ、そんなものもあるのか…‥‥中三病さんは前線組なら、そのトラップの情報は知っていた?」
「あー、聞いたことはあるな。ただ、存在自体は非常に稀だ。中にはトラップなのか救済策なのか、分からない類もあったらしいからな」
「というと?」
「金策になるようなトラップで、この世界の通貨のALが大量に落ちてきたらしいが、密室になっていた場所でこれでもかというほど溢れまくり、収納する前に埋もれて窒息死という報告がある。一攫千金か、金に溺れてしまえと言うのか、何がしたいのかよく分からん」
確かに意味が不明そうなものもあるが、全部が全部害悪という事もないのだろう。まぁ、トラップの中にはモンスターが踏んで自滅するのもあるし、無いと言い切れない。いや、そういうのこそまさにその例に当てはまるのかもしれないだろう。
とにもかくにも、多少は気が楽になるようなお得な情報を聞けてちょっと精神的に回復したところで、僕らは再び前進し始める。
そう言えば、出来ればこういう場所だとハウスシステムで逃げ込めると楽だったのだが、生憎ダンジョンでそれをやられるとズルイ攻略法なども出てしまう事も考えられての対策なのか、ハウスシステムは使用不可能になっている。それが非常に残念なポイントか。
「にしても、光る床ってやっぱり厄介だな。どこにどう罠があるのか、目視し辛い」
「ああ、誰かが天井に張り付いて真上から分からないかと探ったこともあったが、それでも分からなかったからなぁ。攻略情報などを交換しているなかだと、『盗賊』『義賊』『探索者』などの特殊なスキルがあれば感知しやすいらしいが、入手法はまだわからん」
「盗賊って‥‥‥それって合って良いスキルなのか?」
「良くないだろうな。そういう事をする輩がいるから付くスキルなのかもしれん」
色々と気になるが、何にしても注意するに越したことは無い。少しでも怪しいトラップが無いか探る手段を模索しつつ、先を進んでいた…‥‥その時だった。
「でも、こうやってピカピカしていると中々見つけに、キャッ!?」
ドンッ!!
「っと!?」
ロティさんが話を聞いて口を開いている中、小さく悲鳴をあげたので見たら、何やらこけたらしい。床につこうととっさに手を前に出していたようで、偶然その前にいた僕が押される形になる。
押された勢いでたんたんっと前の方に進んだ瞬間、
カチィ!
ガバァッ!!
「「「あ!?」」」
【シャ!?】
【ガウッ!?】
何かを踏み抜いたような嫌な音に、僕らがそろって声を出してすぐ後に、何かが開く音がした。ふと、足元の感覚が無くなったので見てみれば、僕の方の床だけ何もなくなっている。
それはつまり、重力も一応存在するこの世界ではまだ浮かぶすべも持たない僕では‥‥‥
ヒュルルルルルルルルルルル~~~~~~!!
「分かっていたけれども、どう考えても落とし穴だ!?」
あっという間に全員の姿が見えなくなり、僕の身体は落とし穴に落下した。
軽快な音がするが、結構笑い事ではない。高さがかなりあるようで落下が長く、流石にグロ設定などはしていなかったけれども過去の経験上これは確実にHPが0になってしまうのが目に見える。
ああ、これがダンジョン攻略失敗死亡みたいなものかと思っていたところで…‥‥
ざっぼぉぉぉぉぉん!!
「ぐぼごべぇ!?」
幸いなことに、どうやら落下先は岩場などではなく、湖のような場所だったらしい。水の衝撃が結構来たが、それでもこちとら滝に落ちた経験もあるので、この程度であればまだ精神的に何とか立ち上がれる。
必死にもがきつつ、水面に浮かんで息を吸い、流されるようなこともないと確認して必死に陸地にたどり着いた。
「ぜぇ、ぜぇ‥‥‥な、なんとかなったけど、このトラップって即死じゃないのか‥‥‥」
落とし穴とくればその先に竹槍とか溶岩とかの即死系統をちょっと考えていたが、どうもパーティメンバーと分断する程度のトラップだったようだ。
よく見ればログの方に状態異常『情報停止状態:メンバーとの再会まで安否確認不可能』と出ており、合流するまではどうにもできないらしい。テイムモンスターを呼ぶことも不可能らしく、テイム状態はされているはずだがこちらに呼び出せない。
「参ったな、これはこれで結構きついぞ」
もともと錬金術師は道具便りの面もあり、ソロプレイだときつい所もある。ここ最近はマリーやリンがいたのでそう思わなかったのだが、久しぶりに完全な孤立状態にさせられてしまった。
まぁ、爆裂薬も回復薬も、その他状態異常にさせる薬なども余裕があるのである程度は無事だが、ここに来るまでにあったモンスターハウスなどに出くわせば、確実に終わるのは間違いない。
「仕方がない‥‥‥合流を目指して、進むしかないか」
落とし穴のトラップという事は、先ほどいた階層からかなり下の方に下がっているのだろう。案外、こういうトラップもさっさと先を目指して攻略したい人には有りがたいのかもしれない。
とはいえ僕らは先を急ぎまくるわけでもなく、目的の物を目指してなのでこういう時には厄介でしかないだろう。
一応その場にとどまって、階層を降りてくると考えられる中三病さんたちを待つのもありだが、待っているだけだとモンスターがやってくる可能性もあるし、一か所に留まらないほうがいい。
結局は最終的な階層まで来る可能性もあるので、ボスモンスター部屋などに出くわすことが無いように、有ったらその場で可能な限り待機するのも手かと思い、先へ行くしかないのであった…‥‥
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