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ver.1.0 ~始まりの音色~

ver.1.1-23話 致命傷は、避けているらしい

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 多少、被害犠牲はあったけれども、どうにかこうにか女性には落ち着いてもらえた。
 女体化のスキルで同性になっているのもあるだろうし、異性に特攻状態で男性がいたらより大惨事になるのが目に見えていたからこそ、女性判定なのかリンとマリーも影響を受けずに抑えることが出来たのも大きいだろう。
 しいて言うのであれば、ずっと中三病が棺桶状態だが、そこは起きた時に説明するとして、今ひとまず、状況の確認と整理をするのであった。


「…‥‥つまり、あの爆発は工房内での製作失敗によるもので、引きずり出してきたこの人が、この工房の主ってことなのでしょうか?」
「ちょっと違うのよ。新しい扇を作ってもらうために、ここで作業をしていたのだけれども弟子しかいなくてね。主が帰って来る前に弟子の作業を見学させてもらっていたのだけれども、とある作業内で粉が舞った際に発火して、爆発してしまったの」

 しょぼんっと落ち込むように女性は、ロティと名乗る彼女はそう答える。
 カクカクシカジカと状況整理のために話し合ったところ、ロティはどうやら大樹の村から来たエルフの女性であり、ここへ来たのは新しい扇を作ってもらうためだったらしい。
 なんでも舞を利用する家に生まれているそうで、新しい素材を最近になって手に入れたので、古くなっていた扇を素材を利用して新調しようと思い、その家の御用達であるこの鍛冶屋を頼って来たそうなのだが…‥生憎その工房の主は留守であり、代わりに弟子がいた。
 なので帰って来るまで、その弟子の作業でも見学して時間を潰そうとしていたようなのだが、思いのほかまだまだ未熟だったようで安全を怠り、粉塵爆発を起こしてしまったのが今回の事件の原因らしい。
 というか、この世界でも粉塵爆発はあるのか‥‥‥自由度が高いけれども、その手段があるという事は、現実でもあり得る危険な事も出てくる可能性が大きいか。

 とにもかくにも原因が分かったのはいいけれども、この悲惨な状況をどうするべきかが問題である。中三病さんは気絶しているし、元凶となった弟子の人も真っ黒こげ。死亡したかと思っていたが、一応ギリギリ生きているそうで、放置していて問題はないらしいが、この工房の損害具合を見ると、生きている方が地獄になり得るそうだ。

「となると、この工房の主が帰ってきたら、ヤヴァイ雷が落ちると…‥‥まいったなぁ、手紙を渡すために来たのに、何でこんな災害現場に来ちゃったんだろうか」
「手紙?ああ、この工房の出身の方からのですね。ココの人は結構腕が良くて、弟子入りして昔から多くの凄い鍛冶師を輩出していたから、その中の誰かが手紙をよこしたのも分かるわ」
「‥‥‥昔から?あの、失礼ですがロティさんはお若いように見えるのに、何故そんなことが言えるのでしょうか?」
「あら、私は120歳よ。エルフって長命で、これでもまだまだ若いのよね」

…‥‥うわぁ、エルフがかなり長く若くて寿命が長いというのは定番だとは思っていたけれども、アルケディア・オンライン内でもそうなのか。
 エルフと言っていた時点で予想できていたけれども、実際にこうやって面として言われると、信じがたくもある。となると、あののじゃロリももしかすると結構な年齢なのか。

「120歳でその若さという事は、幼い姿の人だともうちょっと年齢は落ちてもそこそこあるのか…?」
「そうなるのよね‥‥‥実際に、私の姉さんは私より幼い見た目だけど、あと50は上なのよ」
「へぇ、姉でもそんな‥‥‥いや、ちょっと待って?ロティさんってエルフだけど、その姉はもっと幼い容姿なの?」
「そうだけれども?‥‥‥そうね、若い容姿だけれども、のじゃのじゃとちょっとお婆ちゃんっぽい喋り方をするのよね」
「…‥‥まさかですが、この写真の人ですか」

 ふと、聞いているうちに抱いた嫌な予感を確かめるために、僕はとある画像を彼女に見せた。それは、のじゃロリと遭遇した際に、記念も兼ねて撮っていたのだが‥‥‥

「あら、これ私の姉さんだわ。貴女、姉さんの知り合いだったのね」

 驚くような顔で見られたが、驚きたいのはこちらである。出てきたその事実にリンとマリーも気が付いたようで、同じように驚愕の顔を浮かべていた。
 世界って狭いというかなんというか、同じように見える人でもこんなに違うというのか。血縁者であってもここまで差があるのか‥‥‥いや、中三病さんの姉の時点で、何か違う人がいてもおかしくはないのは立証済みであったか。
 とにもかくにも意外なつながりに驚き合いつつ、これはもう少し話をしてみて詳しく聞いてみるべきかと思った‥‥‥その時だった。



「うわぁぁぁ!!なんだこの工房のありさまわぁぁぁぁぁあぁ!!」

 いつのまにか、工房の方に主が帰還してきたようである。見てみれば、かなり大柄なゴリゴリのドワーフの男性が叫んでいた。

「あら、お帰りなさい、ダマリさん」
「っと、大樹のところの娘!!何があったんだこの様は!?」
「すべて、そこで転がっているお弟子のせいよ」
「ぬわぁにぃ!?このスカポンタン、テメェがやらかしたのかぁぁぁぁぁぁ!!」

 物凄い激怒した状態で、黒焦げで転がっていた弟子の胸ぐらをつかむも返答はない。生きているようだが、気絶中でもあるらしい。

「ええぃ、こんのアホンダラがぁ!!命があるし工房は立て直せるが、それでもやらかしたのには変りねぇ!!今から説教してやるわぁぁぁ!」
「あの、その前に手紙が…‥」
「客人か?いや、済まない、今はこっちの馬鹿弟子の説教が先だ!!用があるなら明日にしてくれ!!」

 そう言いながら、この工房の主らしいダマリという人は、残っていた小さな家の方に弟子を引きずり込んで、鍵を閉めた。
 この様子だと、今日は手紙を渡せそうにないのだが‥‥‥何だろう、この凄い無駄足感。

「仕方がない、明日また改めてログインするか‥‥‥っと、その前に中三病さんを復活させるところへ行って起こさないとな。ロティさん、それじゃ今日はここでお別れで」
「あらあら、そうなの?まぁ私も新しい扇が欲しいから、ここへ来るし、それで良いわね。それじゃ、また明日ここで会いましょう」

 あののじゃロリの姉妹らしいが、ニコッと笑う上品なそぶりを見る限り、似ても似つかなすぎる。中三病さんの姉のこともあるし、世界の兄弟姉妹などは色々と違うところが多いのが、疑問に思ってしまうのであった…‥‥




‥‥‥そしてハルがその場を去った後、ロティも明日に備えて帰路につきつつ、ふとつぶやいた。

「にしても、姉さんの関係者ね‥‥‥ふふふ、男の子が女の子になっているのを見ると、姉さんまた変なスキルを人に与えてしまったようだし、このネタをお父さんに教えてあげようっと」

 笑いながらも、どことなく黒い笑みを浮かべるロティ。ハルがこの場にいたら、その笑みから少々のじゃロリの顔と似ていると判断できたかもしれないが、いない現状それは無理な話しであった。
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