アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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ver.1.0 ~始まりの音色~

ver.1.1-20話 向かう道中、死屍累々と

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 基本的に通常のゲームであれば、新しい場所へ行くのは一瞬だったりすることもあるだろう。某転移魔法とかその他の乗り物関係にのればあっと言う間であることが多い。
 それはもちろん、このアルケディア・オンラインでも似たようなシステムは存在しており、目的地へ向かう馬車などの移動手段が存在しており、やろうと思えば楽に移動はできるのである。
 

「でも、そう簡単に楽はできないかぁ」
【シャゲェ】
【ガウゥ】

 僕のつぶやきに、うんうんと同意して頷くマリーとリン。そんな動作も交えつつも、周囲を見渡しつつ、油断しないように飛び上がって、蹴りを入れたり毒を浴びせたりと、攻撃の手を緩めることは無い。
 そして僕の方も、こうなってくるとこちらに来るのが分かっているので、しっかり爆裂薬をぶちまける。

ドッガァァァン!!
「ぎゃあああああああ!?」
「ほんげぇぇぇぇ!?」

 悲鳴を上げて倒れてゆくのは、今回のアップデートで追加された『馬車を襲う盗賊団』。そのままの名前ではあるが、どうやら移動手段に馬車を選ぶと、距離が遠ければ遠いほどある程度の確率で遭遇する敵対的なNPCたちらしい。
 一応、設定上ではきちんとこのアルケディア・オンライン内で賞金首がかけられているゴリゴリの悪人たちであり、遭遇したら強制的な戦闘となる。なお、敗北したら所持金の半分以上と装備品などに変えていないドロップ品を3分の2ほどが失われるので、ネット上では今回のアップデートの中で唯一の改悪要素だと言われている。意外にも雑魚ではなく、そこそこレベルの高いモンスターと同じぐらいの強さらしいからね。駆け出しだったら間違いなし。

 とはいえ、こういう情報があったからこそ念のために戦闘に備えて道具も準備していたし、マリーもリンも進化して強くなって並大抵の相手ならば問題はない。
 親方から得たブーツやクナイを活かして、強烈な蹴りを連発し、素早く動いて切り裂いて毒状態にしたりと、各々の特技を生かして戦闘が出来る。ついでに僕の方も、爆裂湿地帯で新しい爆裂草なども手に入れて装備品を少々見直し、軽い素材で動きやすくして爆裂の威力が上がった薬をばらまけている。

「くそぅ!!本日10組目の記念すべき獲物共だったのに、こんなに強ぇ奴らとは聞いていねぇぞ!!」
「お頭!!ココはもう逃げるべきでありましょう!!」
「仕方がねぇ、野郎ども撤退だ!!」

 っと、どうやら一定数の盗賊を倒すことで、相手は撤退して場を去るらしい。とはいえ残しておくと、次にこの辺りに馬車が来た際に、再出現確率が高いそうなので後の憂いを無くすためにも逃す気はない。

「マリー!!魔眼!!」
【シャゲェシャゲェ!!】

「おぶぇぶ!?足が動かねぇ!?」

 マリーの目が怪しく輝くと、逃げようとしていた盗賊たちの足が硬直して次々に転んで倒れていく。状態異常の耐性はないらしく、早めに使っておけばもっと楽が出来た可能性があるが、それはまた後の課題にしようかな。今はとりあえず、逃走防止と殲滅をするのみ。

【ガウガウ~ガウッ!】
「ちょ、ちょっと待てお嬢ちゃん、なんで俺様たちの足元に‥‥‥」
「…‥‥リン、盛大にやって良いよ。正々堂々とやってくる相手なら良いけど、奇襲をかけてくるような手段の相手は、ちょっと殴りたいんだよね?いや、違うか、蹴り上げたいか」
「ちょっと待てそこの坊主、蹴り上げたいって‥‥‥まさか!?」
【ガウガーウッ!!】

 僕の言葉に対して、盗賊の一人が何をしようとしているのかを悟ったらしく、慌てた様子になる。だがしかし、すでに遅い。現れなければ良かったか、あるいは普通に犯罪者の身に堕ちていなければ良かっただけなのかは知らないが、同じ男としてはその攻撃に対して多少同情するとしようかな。

「「「「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」」」」

 盗賊たちの大絶叫を聞きつつも、一応ギリギリで残す程度に加減していたそうなので、あとはしっかりと捕縛作業に入るのであった。
 この盗賊たちの襲撃って、討伐に成功すると馬車の御者さんが捕縛用の縄をくれるのはいいけれども、個人的にはもうちょっとリアリティが欲しいような‥‥‥いや、でも絶叫の様子を完全にやるとソレはソレで、酷い映像になるからなぁ。









「‥‥‥うむ、盗賊団を捕縛してきたのは良いのだが、何をやらかした?全員、何か恐怖の表情で固まっているのだが‥‥‥」
「いえいえ、大したことはありませんって」
【シャゲシャゲェ】
【ガウガウ】
「ふむ、まぁ討伐したことで一応懸賞金が出ているやつらだ。討伐証明書を発行しておくから、後できちんと手続きをして受け取っておくように」

 アップデートで追加された、ドワーフたちの村の一つ『震えよ我らが咆哮の村』に、僕らは到着した。多少、盗賊たちの性別が変更されたことで五体満足時よりも値段は下がるが、一応賞金首としての報奨金も貰えるそうで、村の衛兵たちに引き渡すと報奨金を引き換えられる券をもらうことが出来た。

「さてと、引き渡したのは良いとして…‥‥プレイヤーの数が多いかと思えば、案外少ないな?」

 ドワーフの村というだけあって、あちこちでは鍛冶をする音や鍛えているドワーフたちの姿は見るのだが、プレイヤーたちの姿がまばらである。
 アップデートという事もあって、新要素の方には多く触れに来るとは思ったのだが‥‥‥どうやらエルフたちの方に話題性が行ったようで、そちらの方に集中しているらしい。筋肉ムキムキな人が多い所よりも、整った人たちが良いという者たちが多いのだろう。
 まぁ、あっちにも行こうかと思ったけれど、親方からの手紙があるからな。こっちのお使いクエストのようなものを先にこなす方がいい。それに、どっちから行くのも個人の自由だし、少ないのであればそれはそれでスムーズにできるからね。

 そう思いつつ、目的地を目指そうとしたところで‥‥‥ふと、何やら騒がしい声が聞こえて来た。


「うおおおおお!!すげぇぞあのねぇちゃん!!俺たちの腕相撲100番勝負に連戦連勝してやがるぜ!!」
「すげぇぜ!!今まで外の奴らが挑んでもせいぜい3連勝ぐらいだったのに、もう80勝以上!!凄まじい筋肉ゴリラか!?」

「ん?なんかすごい盛り上がっているようだけど、何があるんだろう?」
【シャァ?】
【ガウゥ?】

 騒ぎが気になったので見に行ってみたが、野次馬集団たちが分厚くて何が起きているのか見にくい。なんとかどいてもらいながら辿り着けば、そこではある勝負が行われていた。


「ふんすわぁぁぁぁぁあ!!この連勝記録はこのゲドーンが止めてやるぜぇぇぇぇ!!」
「HAHAHA!!その程度、ミーには通じないのデース!!」

 樽を挟みこみ、その上で拳を握り合って腕相撲をしているのは、大柄のドワーフとプレイヤーらしい女性。いくらVRMMOとはいえ普通は抵抗感ゆえに着るのをためらいそうなビキニアーマーというようなものを装備しつつ、互角に戦っていた。
 そしてその周囲には倒れ込んでいるドワーフたちの姿があり、気絶している様子。どうやら今まで挑み、そして敗れた者たちのようだが、腕相撲で何をどうやったら気絶するのか?


「ぐぬぬぬぅ!!やるな!!だがこれでもまだゲドーン様は30%も出していないぜぇ!!」
「そうなのデース?ミーも全然出し切っていないのデースが、本気を出される前に片付けてあげるのデース!!ふんしゅわもっしゃぁぁぁぁ!!」
「おおおおぅ!?」

 意味不明な掛け声と共に、先ほどまで互角だったゲドーンとか言うドワーフの腕が押されていく。慌てて本気を出すかのように動くゲドーンだが、女性プレイヤーの腕にあっという間に敗北した。

「ぐあああああああ!?まさか、このゲドーン様がぁぁぁ!!ええい!!今のは無しだ、最初から全力でやらせろ、いやここでやってやらぁぁあ!!」

 負け犬感満載な敗北のセリフを吐きつつ、急に立ち上がって襲い掛かろうとするゲドーン。だがしかし、女性プレイヤーは体格差があっても怯む様子はない。

「Ohー!!乱闘ってやつデースか、やってやるのデース!!」
「ふざけるなぁぁぁ!!」

 ゲドーンが拳を振り下ろした瞬間、女性プレイヤーはすぐに身をかがめ、相手の拳を回避する。そして拳が振るわれたせいですぐに防御ができない隙をつき、素早く懐へ入り込む。

「ぶっとばぁすデンジャラスパァァァンチデース!」
ごっすぅっ!!
「ぐぼっべぎょ!?」

 強烈な拳が深々と入り込み、ゲドーンとやらはマヌケな断末魔を上げて気絶した。‥‥‥あ、もしかして周囲の倒れているやつらって、同じような手段でやらかしたのだろうか?

「いえぇぇぇい!ミーの連勝デース!!さぁさぁ、もっと来るのデース!!」

 わぁぁぁっと盛り上がる女性プレイヤーに、周囲のドワーフたちも次は自分が、いや、俺がと言うように勝負を挑もうとしている。
 これはこれで面白いことになっているのかなぁと思っていると、ふと倒れ込んでいる者たちの中に見知った顔を僕は見つけた。
 近づいて確認して見て、そして確信する。

「あれ‥‥?もしかして、中三病さん?」
「お‥‥‥おぅ…‥この声は、ハルさん、か‥‥‥」

 ぴくぴくと震えつつ、立ち上がる中三病さん。前線組のプレイヤーの一人であり、アップデート後は積極的に新要素の開拓のために前に出ていたはずである。
 なので当然、エルフたちの村の方へ向かうかと思っていたが、まさかこんなところで倒れているとはだれが想像できただろうか。

「に、逃げろハルさん‥‥‥あの女は、あの姉貴は‥‥‥今のハルさんや‥‥‥そのテイムモンスターたちを見つけたら、襲うはずだから…‥」
「姉貴‥‥‥って、あの人?え、中三病さんの姉なのか?」
「ああ、ぶっ飛んだ怪力女で、凶悪凶暴の‥」
「だーれが凶悪狂暴怪力女デースか!!」
ドッゴォォォォウ!!
「ぐべぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?」
「ち、中三病さぁぁぁぁん!?」

 言い終わる前に、姿が一瞬ぶれたかと思えば中三病さんがふっ飛ばされた。ふっ飛ばした相手を見れば、先ほどの女性プレイヤーである。

「まったく、ちょっと口の悪い弟をもつと苦労するのデース。お見苦しいものを見せてすいませんデー・・・・・おや?」

「ん?」
【シャゲ?】
【ガウ?】

 彼女が僕らの方に目を向けた瞬間に、何やら言いようのない悪寒が僕らを襲った。ぞわっとするような、何かもっとヤヴァイものに出くわしたかのような、そんな気配。

「ふむ、可愛らしいような少年姿のアバターであるプレイヤーに、豹娘に蛇娘‥‥‥‥噂はちらっと聞いていたのデースが…‥‥まじかで見ると思いっきり抱きしめたくなるのデース!!」
「うおっと!?」

 がばっと急に飛び掛かって来たので、慌てて僕が避けると彼女はそのまま突き進み、そこに都合よく転がっていた樽を抱きしめ‥‥‥

バギィッツ!!
「【【!?】】」

‥‥‥そのまま、粉砕した。

「おっと、逃げられたデース。いけないいけない、ミーはもっと冷静に相手を捕らえて、ほおずり抱きしめしたいだけなのデース。だから、大人しく捕まってほしいのデース!!」
「樽を抱きしめ粉砕した相手に捕まろうとする人、絶対にいないからね!?」
【シャゲシャゲェ!!】
【ガウガーウッ!!】

 ぞっとするような怪力に僕らは恐怖で震え、直ぐにその場から退散しようと駆けだした。そして女性の方も追いかけ始めてきて、恐怖の鬼ごっこが開幕してしまうのであった…‥‥

「待つのデース!捕らえた!!」
バギィッ!!
「ぐべらっちょ!?」

「違うのデース、今度こそ!!」
ベギバギィッツ!!
「ほんげぇっ!?」

「あ、やばい!!これ逃げていたらとばっちりでNPCたちが全滅するやつだ!?」
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