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ver.1.0 ~始まりの音色~

ver.1.0.2-15話 増やしたい部分は、そりゃあるけれどもね

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>本日、アップデートが行われました!
>前バージョンでのバグなどに対する修正が施され、新要素が追加されました。
―――――

「っと、バグとかは見なかったけれども、あったのかな?」
【シャゲェ?】

 仕事帰りであり、明日はちょっと休日という事で少し遅くまでログインできる本日。
 ログインしてみると事前に通知が合った通りにアップデートが行われており、色々と調整がされたらしい。バグとかの修正というが、そんなものは見かけることは無かったのだが、やっぱりこういうオンライン系のゲームではあるものなのかな?
 そう疑問に思いつつも、ログに流されてくる情報に目を通していく。

―――――
>新要素『鍛冶師工房』『模擬大戦広場』『ギルドシステム』が追加されました!

『鍛冶師工房』
・次々回アップデートにて追加予定の亜人種族の内、『ドワーフ』の親方が務めている工房。鉱石からインゴットを精製する際に倍加させたり、武器や防具を鍛えることができる施設。錬金術師の付与とは違う方面で強化され、隠しステータスが追加されます。

『模擬大戦広場』
・基本的なPvPは1対1のものが多かったのですが、この広場では一度に100人までの同時対戦が可能。チーム戦、バトルロイヤル戦などを選択可能であり、互いに同意さえ存在すればだれでも利用可能です。
・また、今回のギルドシステムの追加に伴い、今後予定されているギルド同士の戦闘に向けてのデータ情報収集の場となりますので、興味があればぜひどうぞ。

『ギルドシステム』
・様々な職業同士で、価値観で、趣味で集まり合う事が出来る仕組みです。
・ギルドに所属後、自動的にギルドホームが建設されてホーム内でのログインが可能になったり、そのギルドだからこその特殊なバフが付与されることがあります。
・ただし、ギルドを組むためには3人以上の申請が必要であり、設立以降はギルドマスター、副ギルドマスターと自動的に称号へ追加され、以降の許可などがゆだねられることがあります。
・恐喝、暴行などが見られれば監査が入り、場合によっては閉鎖されて一気に解散となるので注意してください。


>また、本日のアップデートをもって二週間も続けられた【テイムモンスター大集合フェスティバル!! ~第1回~】のイベントが終了となります。
>最終的に投稿された画像数は12万4千枚。テイムモンスターとの画像はイベント終了後も1週間の猶予をもって記録されていますので、見返したい方はどうぞ。
>また、今回のイベントによって投稿された画像の中から厳選された画像によって、選ばれたプレイヤーたちには特別な称号、アイテムをプレゼントいたします。

―――――

「‥‥‥思った以上に多かったような、少なかったような。いや、でもまだテイムの確率自体が低いから、手に入れられなかった人もいたせいかな」

 一応結構大盛り上がりしたイベントとは言え、テイムモンスターを結局ギリギリまで手に入れることができなかった人もいれば、いなくても良いという人、むしろ他人の子を可愛がりたい人などがいたようで、テイムモンスターを得ているプレイヤーの数は増えたとはいえ、すごい多いわけでもない。
 中には二体目、三体目のテイムを目指しつつ、同じのをそろえようとしている人もいたようで、そちらはチャレンジの具合が投稿され、その熱烈ぶりはすさまじかった。
 なお、オマケのようにテイムモンスターの種族別割合とやらも開示されていたが、イベント中に解放されたエリアで得られたモンスターで、羊のようなシープ系のモンスターが多かったりしていた。もこもこふわふわを求め、徹底的にやった人がいたに違いない。

 あとはちらほらと感想などを覗くと、少し気になったものもあった。

「やっぱり、あのロリのじゃは他にも出没していたようだな」
【シャゲェ】

 勧善懲悪とか言っていたが、どうやら有言実行をしていたようで、各地のプレイヤーたちから目撃報告と何をしたのかという話が出ていたのだが、色々とやらかしていたらしい。
 テイムできないから他のやつの妨害をしようとしたところで、全装備品が強制的に豚の着ぐるみに変えられたせいでずっと豚男として活動させられていたり、テイムモンスターへの虐待行為を隠そうとしていた人が、何をどうやってか恥ずかしい映像を取られて公開されるなど、様々なお仕置きが見られるようだ。
 とはいえ全部が全部お仕置きなどでもなく、良い事をしていた人たちにはそれなりの手助けをしていたようで、戦闘に負けそうになっていたところを加勢して逆転勝利させたり、昼食時に食べていたところを狙って食べに来て、去り際にレアアイテムなどを配っていたようだ。
‥‥‥なんでそんな奴なのに、僕には女体化というスキルを渡してきたのかが分からない。出来ればアイテムの方が良かった。

「何にしても、ネット上では出没自体が非常にレアなNPCとして、見かけたら幸運になれるという話も出歩いてたようだな‥‥‥」


 元気にしているのは良いかもしれないが、また出くわすとまた面倒な事にはなりかねない。
 なので、注意深く目撃情報を確認して、近づいてきたら避けておいた方がいいかなと思うのであった。







 それはともかくとして、本日僕らは『猛獣の楽園』というエリアを訪れていた。
 ギルドシステムや工房などの気になる新要素もあるとはいえ、やるのであればもうちょっと十分に準備をしてから挑んでおきたい。
 情報を集めつつ、素材も増やして備えておき、目一杯楽しむ方が良いと判断したのである。まぁ、前者の方に関しては元々働いているのでゲームできる時間も限られているので、集団でやるよりもソロプレイの方が何かと自由にやりやすいってのもあるけれどね。

「あとは、猛獣の楽園の素材も鍛冶とやらで使えそうなのもあるし‥‥‥マリー、出たぞ」
【シャシャゲェ】

 茂みに身を隠しつつ、そっと見るのは猛獣の楽園で出現するモンスター『アイアンゴート』。鉄のような大きな角を持つ山羊のモンスターであり、脅威的な突進でプレイヤーたちを葬るらしい。
 そのドロップ品は鉄よりも重く硬い『ヘヴィーメタル』と呼ばれるインゴットの元になる鉱石のようで、鍛冶などの要素に触れるにはまさにうってつけの相手だろう。
 とはいえ、真正面から挑むのは流石にきついので、ここは搦め手をじっくりと使う。

【シャゲシャゲ‥‥‥シャゲェッ】

 そっと気配を消してゆっくりとマリーが近づき、アイアンゴートに目を向けて魔眼を発動させる。
 真珠化の魔眼の効果は生きた相手だと5分程度の真珠化だが、どうやら効果範囲が存在しているようで、避けられては意味がない。
 なのでここは不意を撃つようにして一気に硬直させ、動けなくなった隙に状態異常をたっぷりとかけまくる。
 ニガ毒団子・改、猛烈毒ポーション、ヒリヒリ薬、爆裂トラップ。一部状態異常ではなく周辺に仕掛けるトラップではあるが、動き出した後にしっかりと効果を発揮してくれるのだ。
 そして動けない間にたっぷりと仕掛け終え、5分が経過する頃合いにはささっと木の上に逃げておく。
 視界から逃げておきつつ、様子を観察するのだが…‥‥その後のことは言わずとも凄惨な現場になった。

「‥‥‥というか、見事に全部かかって、最終的にマリーが真珠化させたヘルメットでの頭突きで勝利するとは思わなかったな。相手の方が頭が固いのに、それだけダメージを負っていたのかな?」
【シャゲェ~シャゲェ~】

 ピヨピヨと目を回すマリーだが、それでも攻撃手段を一つ試してみたかったようで、結果としては満足のいく物だったようだ。
 というか、頭大丈夫かコレ。ヘルメットが粉砕しているうえに、ステータスを見たらHPが減少していた。でも、称号とかスキルは修得できてないな。ネット情報だとアイアンタートルとの頭突き勝負に挑んだ猛者がして、その人に『アイアンヘッド』というスキルがついたという話だったが…‥‥うん、ガセネタだった可能性もあるかもしれない。

 でもまぁ、得たドロップ品もあるので満足しつつ、狩りを続けようとしてたそんな時だった。

【シャゲェ~‥‥‥シャゲ?】
「ん?どうしたの、マリー?」

 ふと、ピヨピヨと目を回していたマリーが何かに気が付いた。
 何かと思っているとマリーはそのまま進み始め、茂みの奥へ向かい始める。その後についていくと、何が気になったのかすぐに分かった。


【…‥ガゥゥ】
「‥‥‥『ファイターレオパルド』?」

―――――
『ファイターレオパルド』
豹のような容姿をしたモンスターだが、その戦闘方法はまさかの二足歩行での格闘術。
キックでの攻撃に長けておりつつ尻尾も混ぜての器用な格闘をこなし、状況に合わせて戦法を臨機応変に変えていく。
とはいえ卑怯な手段は取らずに、正々堂々と挑んでくるので、真正面から戦うとスッキリとした戦闘を味わう事が出来る相手として人気がある。
―――――

 でも、なぜか凄い怪我だらけである。
 そう言えば、生態系の要素が加わっていることで、モンスター同士の争いなども入って来たらしいのだが、この様子だとその争いに負けたのだろうか?
 プレイヤー相手ならば弱っているのは見逃さずに狩るだろうし、こんな状態を放っておくわけもない。ドロップ品から作れる防具などは素早くなれるそうで、ひそかに人気だというからな。

‥‥‥とは言え、こんな弱った様子の獣を狩る趣味はない。

「というかマリー、何でこの子見つけちゃったんだよ」
【シャゲシャゲェ】

 獲物として狙えそうだから?というような表情を浮かべているが、流石に獲物扱いにし辛い。というか、コレだとこっち側が悪者になるような気がするんだが。
 とはいえ、逃すと元気になったら他のプレイヤーを襲うようなモンスターだし、放置しづらいという問題もある。ここでいっその事、介錯をしようと思うけれども、生への執着が見えるのでやりにくい。

「だったらいっその事、元気じゃないなら元気になってから戦ってもらえばいいのかな?」
【シャゲェ?】

 我ながらどうかしているとは思うが、弱った獲物を狩りたくないのであれば、また削る手間が増えるとはいえ回復させて元気な状態で相手になってもらった方がいい。
 正々堂々とやってくる相手だと、僕らのように搦め手を使うのとは相性が悪いかもしれないが、これはこれでどう相手にすればいいか学べる機会でもあるからね。

 なのでここは思いきって、回復薬を与えることにした。

「ほら、回復薬だよ。これで元気になってから、対戦してくれないかな?」
【‥‥‥ガウ?】

 僕が出した回復薬に対して、理解したのか「お前は正気か?」というような顔を浮かべたレオパルド。

「良いよ、弱っている相手を狩る趣味もないし、正々堂々とした勝負が出来るのであればそれはそれで面白そうだからね。僕らだってちょっとは装備も整えて強くなっているし、どのぐらい真正面からの戦闘が出来るのか、良い経験になるからな」
【‥‥‥ガウッ、ガウガウッ】


 かたじけない、というようにお辞儀をしたかと思うと、渡された回復薬の扱い方を知っているのか飲み干し、そのボロボロだった様子が元の状態へ戻る。
 毛並みが艶々になり、すくっと立ち上がって少し距離をとって構えた。


【ガウガウガーウ!!】

―――――
>ネームドモンスター『リン』が勝負を挑んできています。
>モンスターからの正々堂々とした挑戦状ですが、受諾しますか?
―――――

 あ、ネームドモンスターだったのか…‥‥それって確か、通常よりも強いんだっけ。もしかして僕、選択失敗したか?

【シャゲェ…‥‥シャゲ】

 じーっとマリーが呆れたような目を向けて来たが、諦めたようにレオパルドもといネームドモンスターのリンの方へ向き直り、構えをとった。
 どうやら呆れつつものってくれるようで、やる気はあるらしい。

「まぁ、正々堂々とした戦いってのもやってみたいからね。搦め手ばっかだと色々と疲れることもあるし、まともな戦闘も思いっきり楽しませてもらおうよ!!」

 やっちゃったことはもう後にも引けないので、しっかりとやるしかないだろう。
 何にしても、どうやって挑むべきか考えつつ、せっかくの戦闘要素をここで思いっきり楽しんでみるかと、面白くなりそうな戦いに対してちょっとだけ心を躍らせるのであった‥‥‥のんびりしたいけれども、ちょっとは血の気があったのかもしれない。
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