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ver.1.0 ~始まりの音色~
ver.1.0-6話 善意以外も、やってきてしまうが
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「ハルさん!!こちらに『激ニガ毒団子』10個売ってくれ!!」
「『雑草ジュース』も20本!!怯みが案外、モンスターに結構効くんだ!!」
「待って待って、本当に何でこんなに来るの!?」
アルケディア・オンライン内の始まりの街にて、僕は今、来客対応を必死にさせられていた。
軽い気持ちでいらないものを整理することも兼ねて、レンタル屋台でゆっくりと売り出していたのだが、ここ数日一気に客が押し寄せてきてしまったのである。
しかも、普通ならば見向きもされないような道具の数々を求めまくるせいで、他の錬金術師のプレイヤーにもなんとか交流をもって手伝ってもらうことにしたのだが、生産が追い付かない。
「ああもう、ハルさんが前にあんなことをするからだよ!!」
「稼げると言えば稼げるけど、それでも大変になり過ぎだって!!」
文句を言われるが、どうしようもない事だった。そう、この状況になったのはさかのぼる事数日前の…‥‥
「‥‥‥っと、順調に客足が増えて来たけど、需要がそこそこあるようすかも」
「ハルさん、この『ニガジュース』をください。」
「5ALだね。しかし、中三病さんよく買うよね、これ」
「はははは、このダメージをわずかに与える効果が、案外前線組にとって、ダメージを与えにくい相手に中々良いんですよね」
「そうそう、ハルさんのこのニガジュース、NPCとかでは手に入らないからねぇ」
アルケディア・オンラインにてゆっくりと屋台を営みつつ、得られた資金で新しい錬金術のレシピが無いかと探る中で、僕は訪れたプレイヤーたちと仲良く談笑をしあっていた。
今話しているのは、このゲーム内の情報をどんどん得るための「前線組」と言われるパーティを組んでいる一人、アバターのネームが「中三病」と「ぽっけねこ」さん。それぞれネームに合わせるようにした装備品で身を固めており、中三病さんは厨二病と呼ばれるようなものをもうちょっとまともで面影を残した装備であり、ぽっけねこさんはどこで手に入れたのか、著作権的に不安になるギリギリの着ぐるみを着ているのだ。名前とバランスが取れているけれども、ぽっけねこさんはいつかどこかで訴えられかねない気がする。
「他の錬金術師の人って案外少ないし、レシピが公開されていてもやってくれる人が案外いないものなんですよねぇ」
「どうせほぼ原材料費がただなんだけど…‥‥そこに至るまでの労力を考えて、作らないだけかな?」
ただ同然と言って良いような、そのあたりで採取できた雑草や木の枝を何回も重ねて錬金して作り上げているだけに、他の錬金術師が真似を試みなかったわけではない。簡単でもあるし、コツさえつかめば結構楽にやることはできるはずである。
だがしかし、雑草を延々と抜き続けたりするようなスタイルはそんなに性に合う人はいないのか、あっという間に放り投げる人が多く、結果として手を出す気を失せてしまうようだ。そんな真似をするぐらいならば、戦闘してALを稼いで、もっといいものを入手してからやるってことが出来るからね。
とはいえ、それでもNPCなどが販売することが無いような道具もあるので、こうやって求める人も出てきているらしい。
「でも、雑草を抜き続けたりしたせいか、所持スキルが増えたから悪くもないな」
「んー、前線組ではなかなか見ないようなものですよねぇ」
「『引っこ抜きマスター』に『緑の手』とはなぁ」
このアルケディア・オンライン、自由度が高い分スキルなども何をきっかけにして得るのかが分からないところも多く、前線組でも色々と試行錯誤をしているらしい。
そんな中で、僕はいつの間にか新しいスキルを身につけていたのである。
―――――
『引っこ抜きマスター』
・雑草を抜き続けた者が手に入れられる補助スキル。常時発動型。
・雑草を抜くたびに得られる量が20%増しつつ、より鮮度の高いものを得られるようになる。
『緑の手』
・薬草を得続けた者が得ることが出来る補助スキル。常時発動型。
・草花を入手した際に、低確率でレアな薬草を獲得できる機会が増える。また、雑草を抜いて薬草が占める割合を増やす効果もある。
―――――
「常時発動型…‥‥スキルの中でも、特に何もしなくても勝手に作用し続けるものがあるのもわかっていたが、こういう形のものもあるとはな」
「両方とも作用しあって、雑草が増えて薬草も増えるからこそ、回復用のポーションもよりいいのが作れるようになったけれどね」
色々とわからないことも多い分、新しい発見は面白いものが多い。
今のところ前線組ほど活発に動くことができないとはいえ、こういう小さな面白さを見つけるのもアルケディア・オンラインの醍醐味だろう。
そう思いつつ、仲良く談笑を楽しんでいた‥‥‥そんな時だった。
「おいおいおい!!ここが噂のハルってやつが営む屋台かぁ?」
「ん?何だありゃ?」
「見たことがないが‥‥‥あの様子だと、多分最近始めた新規の奴だろう」
「あ、知っているぞ。昨日あたりに入って来た問題児で『アアアアアアアア』さんだったかな?」
「「手抜きかよ」」
ぽっけねこさんの言葉を聞き、僕と中三病さんはツッコミを入れてしまう。いくらゲームとは言え、自身そのものともいえるアバターに対してそんなネームをつけるのはどうなのか。手抜きにもほどがあるというか、まともにやる気もないような‥‥‥
「なぁ!そこのちっこいやつ!!そんな小さな店を営む程度ってことはたいしたことないんだろう?ああ、何で大したことがない奴が、ゲームを遊べるのかねぇ?」
はははははっと馬鹿にしたように笑うアアア、いや、長すぎるので「ア(略)」さんとでも呼ばせてもらうか。ア(略)さんの笑いに対して、周囲の人々は不快そうな表情を浮かべる。
「たまにいるよなー、やり込む気もないけど、ただ単純に人を馬鹿にしたがる奴」
「すぐに逃げ出すようにしているからこそ、徹底的に弱そうに見える人を叩くだけ叩く、質の悪いやつだよ」
オンラインゲームはいい人ばかりではなく、こういう問題児も出ると聞くけれども、実際に目の当たりにすると結構不快感がすごい。じっくり遊ぶ気もなく、自己満足にふけりたいだけのやつって、こんなところにも出るのか。しかし、普通はある程度レベルアップしつつ装備をそろえてから来そうなものなのに、何でこの人初心者装備っぽいのを着ているままなのだろうか。確かあれは、序盤の戦士の人の装備セットだよね?
「そりゃあれだよ、NPCにもばっちり嫌われて売ってくれなくなっているんだよ」
「そう言えば、ゲームと言えども侮れないってゴリラマンさんも言っていたな」
NPCはコンピューター上の存在でもあるが、その動き方は感情を持った人のようになっている。それだけこのゲームがすごいのだろうけれども、その分関わり方によって個人差が出てくるのだ。優しくしていると相手も優しく、意地悪をすると相手も意地悪になるらしいし、売買に関して親しまれてくると値引きや高額買取をしてくれるけど、反対に悪化すれば値段のつり上げや低額買取になり、最悪の場合は売ってもらえなくなるんだっけか。
そう考えると、目の前のア(略)さんは見事にやらかした人なのだろう。レベルが上がっても装備品を一新できず、そのまま彷徨っているだけの変えられない人…‥‥何だろう、哀れにしか思えなくなってきたんだが。
「そう考えると、この虚勢も納得だな。怒りを通り越して呆れるというか、憐れむというか」
「残念な頭では考えられず、かとって手助けも見込めず」
「自業自得とはいえ、それでもむなしく自尊心だけを高める日々って、本当に価値があるのか?」
「何を好き勝手に言っているんだお前らぁ!!」」
僕らの感想に対して、しっかりと聞こえていたア(略)さんは激怒する様子を見せる。いや、もうすでにさんづけする必要もないかな。真っ赤になっているし、図星だったようなのだが、無駄に高い自尊心を傷つけられ、怒ることしかできないようだ。
「そんなに言うのなら、この俺様と勝負して見やがれぇ!!」
「え?本当にやる気?」
「むしろ、圧倒的な差になるんだけど」
ア(略)の言葉に対して、中三病さんとぽっけねこさんが反応して目を向ける。前線組の二人のレベルは結構高いし、圧倒的な差をつけられてやられるのが目に見えているんだが。むしろその愚の骨頂の勇者というような行動に、周囲のプレイヤーたちが野次馬となって集まって来たぞ。
「いや、てめぇらじゃねぇ!!やるならそこのチビ助だ!!」
―――――
>プレイヤー「アアアアアアアア」から、PvPのお誘いを受けました。
>受けますか?
―――――
「あ、もしかして僕に対して?」
ぽんっとログが出て来たと思えば、そんな表示が出されていた。どうやら二人を無視して弱そうな僕に対して狙いを絞ったらしい。一応このゲーム、プレイヤー同士だと勝手に殴り合いができないように、きちんとこうやってPvPをしなければ戦えなかったりするのだが…‥‥思いっきり前線組から逃げて弱そうな僕を狙うとは、底が知れているなぁ。弱いのは否定しないけれどね。
「なぁ、ハルさん、こんな奴の誘いを受ける必要はないって」
「この真っ赤勘違い男、放置すればいいよ」
「んー‥‥‥いや、でも受けて見ようかな?」
「「え?」」
ア(略)とのPvPを受ける必要はないと言われたが…‥‥一応、こういう対戦も興味が無かったわけではない。相手もゴリゴリに装備を固めていないし、レベルもすごい大差があるって訳でもないし‥‥‥後はちょっと、自分が人相手だとどのぐらいできるかなと思ったところがあるからね。後は普通に、不快なプレイヤーに対して自分の手でしっかり潰したいという想いが無いわけでもない。強くはないけれども、手段は色々とあるのだ。
―――――
>受けますか?
―――――
「ああ、受けるよ」
―――――
>受理を確認、30秒後にPvPが開始されますので、用意してください。
―――――
受理をした途端、周囲にドーム状の壁が現れ、中に僕とア(略)だけとなり、外側に中三病さんたちがだされる。戦闘で巻き込まれないようになっているとはいえ、念には念を入れての安全措置らしく、こういう戦闘用のフィールドが形成されるのだ。
「ふははは!!俺様との戦闘を堂々と受けるとはな!チビ助にはたっぷり痛い目を見せてやろう!!」
「こう見えても、現実だと大人なんだけどなぁ‥‥‥」
最初のアバター生成時のランダム設定で、少年っぽい見た目なだけである。いやまぁ、現実と凄い大差があるかと言われれば、そこまで言い切れなかったりするが。
とにもかくにも30秒の用意時間とは言え、僕は所持品と装備を確認する。戦士の職業の相手だが、セット装備とは言えそのATKやDEFは錬金術師より高いので侮れない。下手な攻撃では大したダメージも与えられないが、裏腹に、AGIが低い所を狙うか。
―――――
>3,2,1‥‥‥スタート!!
―――――
「おらぁ、これでフルボッコだぜぇ!!」
開始の合図と共に、一気に駆けだして戦士の初心者装備である剣を振り下ろしてくるア(略)。
勢いなどを見ると強そうだが、生憎ここはアルケディア・オンライン‥‥‥自由度の高さがあるので、行動が制限されることはそうない。
むしろステータス任せのやり方なんぞ、自由に動ける相手からすれば格好の的でしかないだろう。
「よっと、ここで避けて‥‥‥ほいっと」
さっと躱しつつ、身をかがめて相手の口の位置を確認する。幸い、初心者装備なので頭は固められ切っているわけではないようだし、この手が使えるだろう。
そう思い、所持品の中から次の商品として使えるかなと思っていたものを取り出し、相手の口にめがけて投げ込んだ。
ずぼがぼっ!!
「むぐぅ!?チビ何を、つっつ!?に、にがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
口に放り込まれたものに対して把握しきる前に、猛烈な叫び声をあげるア(略)。その突然の叫びように周囲の野次馬たちは驚き、何が起きたのかすぐに理解したようだ。
「お、おい!!あいつの口に何か入ったぞ!」
「ありゃ何だ?緑色の団子のようなものだが、見たこともないぞ」
「ん?あれってハルさんが雑草ジュースの代わりになりそうな投擲道具として作っていた‥‥‥『激ニガ毒団子』!?」
どうやらぽっけねこさんはすぐに気が付いたようで、そう口にする。
ああ、そうだ、確かに作っていた「激ニガ毒団子」であり、その味わいは目の前の大悶絶する様子から察することが出来るだろう。
―――――
『激ニガ毒団子』
制作評価:5
効果:ニガニガ草やその他の毒草を混ぜ合わせ、固められてできた団子。一口食べればたちまちどんなモンスターも思わず苦いと叫んでしまうほどの苦さを発揮し、悶絶状態へ陥らせて低確率で行動不能状態にさせてしまう。さらに、毒(微)状態にもさせる。
―――――
どこで評価基準を設けているんだろうかと疑問に思いつつも、出来上がってしまった凶悪なアイテム。今度前線組への特殊な状態異常の攻撃手段として紹介して見ようかと思っていたのだが、こんな場で初披露するとは思わなかった。
「ぎゃああああああああ!!にがいにがいにがいにがいにがいにがいぃぃぃ!!」
びくんびくんっと悶え苦しみ、のたうち回るア(略)。VRMMOではあるが、このアルケディア・オンラインでは味も実際に感じることが可能であり、今回はそのシステムがあだとなった形で襲い掛かった。想像を絶する苦さだというが、ちょっとどのぐらいやばいのか、自分の舌で試さなくて良かったかもしれない。
しかも毒状態にしており、そこまでダメージを与える毒ではないとはいえ、のたうち回っているだけでどんどんHPが削られていき、気が付けば…‥‥
「あああああああ、あふぅん!?」
ボウンッツ!!
変な声を上げて、ア(略)がどこからともなく表れた棺桶に収納されて、黙ってしまった。
―――――
>HPが0になったことを確認しました。
>撃破されたと判断され、初期リスポーン地点へ転送されます。
>‥‥‥おめでとうございます!!このPvP、「ハル」の勝利です!!
―――――
しゅわぁぁっと消えてしまった棺桶と同時に、終了の合図と勝利の表示がなされる。
あまりにもあっけない最期を見て、思わず相手がちょっと愚かだったとはいえ、全員あんな最後にはなりたくないとは思い、思わず皆で合掌してア(略)の冥福を祈ってしまうのであった‥‥‥
‥‥‥そして結果として、今回の状態異常用の道具だけでやらかしたことが、アルケディア・オンライン内での掲示板とやらで話題に挙がり、映像も撮られていたらしい。
これまで状態異常と言えば僧侶などの魔法があったが、それ以外の手段であり、モンスター相手にも有効そうな撃破方法として注目を浴びてしまった。
故に今、倒しにくい相手をどうにかできるかもしれないという事で、大人気商品になってしまったのであった‥‥‥
「でもそろそろ材料無くなるんだけど!!NPCも同じようなの売ってほしい!!」
「ダメだハルさん!!運営に問い合わせて見たけど、今回の件で調整を入れるらしいが、それでも3日はかかるらしい!!」
「意外に早いような、遅いような、さっさとして欲しいんだけどなぁぁぁぁ!!」
ALを稼げる機会だけど、商売繁盛すぎてゲーム内で過労死しかねん!!改善早く求む!!
「『雑草ジュース』も20本!!怯みが案外、モンスターに結構効くんだ!!」
「待って待って、本当に何でこんなに来るの!?」
アルケディア・オンライン内の始まりの街にて、僕は今、来客対応を必死にさせられていた。
軽い気持ちでいらないものを整理することも兼ねて、レンタル屋台でゆっくりと売り出していたのだが、ここ数日一気に客が押し寄せてきてしまったのである。
しかも、普通ならば見向きもされないような道具の数々を求めまくるせいで、他の錬金術師のプレイヤーにもなんとか交流をもって手伝ってもらうことにしたのだが、生産が追い付かない。
「ああもう、ハルさんが前にあんなことをするからだよ!!」
「稼げると言えば稼げるけど、それでも大変になり過ぎだって!!」
文句を言われるが、どうしようもない事だった。そう、この状況になったのはさかのぼる事数日前の…‥‥
「‥‥‥っと、順調に客足が増えて来たけど、需要がそこそこあるようすかも」
「ハルさん、この『ニガジュース』をください。」
「5ALだね。しかし、中三病さんよく買うよね、これ」
「はははは、このダメージをわずかに与える効果が、案外前線組にとって、ダメージを与えにくい相手に中々良いんですよね」
「そうそう、ハルさんのこのニガジュース、NPCとかでは手に入らないからねぇ」
アルケディア・オンラインにてゆっくりと屋台を営みつつ、得られた資金で新しい錬金術のレシピが無いかと探る中で、僕は訪れたプレイヤーたちと仲良く談笑をしあっていた。
今話しているのは、このゲーム内の情報をどんどん得るための「前線組」と言われるパーティを組んでいる一人、アバターのネームが「中三病」と「ぽっけねこ」さん。それぞれネームに合わせるようにした装備品で身を固めており、中三病さんは厨二病と呼ばれるようなものをもうちょっとまともで面影を残した装備であり、ぽっけねこさんはどこで手に入れたのか、著作権的に不安になるギリギリの着ぐるみを着ているのだ。名前とバランスが取れているけれども、ぽっけねこさんはいつかどこかで訴えられかねない気がする。
「他の錬金術師の人って案外少ないし、レシピが公開されていてもやってくれる人が案外いないものなんですよねぇ」
「どうせほぼ原材料費がただなんだけど…‥‥そこに至るまでの労力を考えて、作らないだけかな?」
ただ同然と言って良いような、そのあたりで採取できた雑草や木の枝を何回も重ねて錬金して作り上げているだけに、他の錬金術師が真似を試みなかったわけではない。簡単でもあるし、コツさえつかめば結構楽にやることはできるはずである。
だがしかし、雑草を延々と抜き続けたりするようなスタイルはそんなに性に合う人はいないのか、あっという間に放り投げる人が多く、結果として手を出す気を失せてしまうようだ。そんな真似をするぐらいならば、戦闘してALを稼いで、もっといいものを入手してからやるってことが出来るからね。
とはいえ、それでもNPCなどが販売することが無いような道具もあるので、こうやって求める人も出てきているらしい。
「でも、雑草を抜き続けたりしたせいか、所持スキルが増えたから悪くもないな」
「んー、前線組ではなかなか見ないようなものですよねぇ」
「『引っこ抜きマスター』に『緑の手』とはなぁ」
このアルケディア・オンライン、自由度が高い分スキルなども何をきっかけにして得るのかが分からないところも多く、前線組でも色々と試行錯誤をしているらしい。
そんな中で、僕はいつの間にか新しいスキルを身につけていたのである。
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『引っこ抜きマスター』
・雑草を抜き続けた者が手に入れられる補助スキル。常時発動型。
・雑草を抜くたびに得られる量が20%増しつつ、より鮮度の高いものを得られるようになる。
『緑の手』
・薬草を得続けた者が得ることが出来る補助スキル。常時発動型。
・草花を入手した際に、低確率でレアな薬草を獲得できる機会が増える。また、雑草を抜いて薬草が占める割合を増やす効果もある。
―――――
「常時発動型…‥‥スキルの中でも、特に何もしなくても勝手に作用し続けるものがあるのもわかっていたが、こういう形のものもあるとはな」
「両方とも作用しあって、雑草が増えて薬草も増えるからこそ、回復用のポーションもよりいいのが作れるようになったけれどね」
色々とわからないことも多い分、新しい発見は面白いものが多い。
今のところ前線組ほど活発に動くことができないとはいえ、こういう小さな面白さを見つけるのもアルケディア・オンラインの醍醐味だろう。
そう思いつつ、仲良く談笑を楽しんでいた‥‥‥そんな時だった。
「おいおいおい!!ここが噂のハルってやつが営む屋台かぁ?」
「ん?何だありゃ?」
「見たことがないが‥‥‥あの様子だと、多分最近始めた新規の奴だろう」
「あ、知っているぞ。昨日あたりに入って来た問題児で『アアアアアアアア』さんだったかな?」
「「手抜きかよ」」
ぽっけねこさんの言葉を聞き、僕と中三病さんはツッコミを入れてしまう。いくらゲームとは言え、自身そのものともいえるアバターに対してそんなネームをつけるのはどうなのか。手抜きにもほどがあるというか、まともにやる気もないような‥‥‥
「なぁ!そこのちっこいやつ!!そんな小さな店を営む程度ってことはたいしたことないんだろう?ああ、何で大したことがない奴が、ゲームを遊べるのかねぇ?」
はははははっと馬鹿にしたように笑うアアア、いや、長すぎるので「ア(略)」さんとでも呼ばせてもらうか。ア(略)さんの笑いに対して、周囲の人々は不快そうな表情を浮かべる。
「たまにいるよなー、やり込む気もないけど、ただ単純に人を馬鹿にしたがる奴」
「すぐに逃げ出すようにしているからこそ、徹底的に弱そうに見える人を叩くだけ叩く、質の悪いやつだよ」
オンラインゲームはいい人ばかりではなく、こういう問題児も出ると聞くけれども、実際に目の当たりにすると結構不快感がすごい。じっくり遊ぶ気もなく、自己満足にふけりたいだけのやつって、こんなところにも出るのか。しかし、普通はある程度レベルアップしつつ装備をそろえてから来そうなものなのに、何でこの人初心者装備っぽいのを着ているままなのだろうか。確かあれは、序盤の戦士の人の装備セットだよね?
「そりゃあれだよ、NPCにもばっちり嫌われて売ってくれなくなっているんだよ」
「そう言えば、ゲームと言えども侮れないってゴリラマンさんも言っていたな」
NPCはコンピューター上の存在でもあるが、その動き方は感情を持った人のようになっている。それだけこのゲームがすごいのだろうけれども、その分関わり方によって個人差が出てくるのだ。優しくしていると相手も優しく、意地悪をすると相手も意地悪になるらしいし、売買に関して親しまれてくると値引きや高額買取をしてくれるけど、反対に悪化すれば値段のつり上げや低額買取になり、最悪の場合は売ってもらえなくなるんだっけか。
そう考えると、目の前のア(略)さんは見事にやらかした人なのだろう。レベルが上がっても装備品を一新できず、そのまま彷徨っているだけの変えられない人…‥‥何だろう、哀れにしか思えなくなってきたんだが。
「そう考えると、この虚勢も納得だな。怒りを通り越して呆れるというか、憐れむというか」
「残念な頭では考えられず、かとって手助けも見込めず」
「自業自得とはいえ、それでもむなしく自尊心だけを高める日々って、本当に価値があるのか?」
「何を好き勝手に言っているんだお前らぁ!!」」
僕らの感想に対して、しっかりと聞こえていたア(略)さんは激怒する様子を見せる。いや、もうすでにさんづけする必要もないかな。真っ赤になっているし、図星だったようなのだが、無駄に高い自尊心を傷つけられ、怒ることしかできないようだ。
「そんなに言うのなら、この俺様と勝負して見やがれぇ!!」
「え?本当にやる気?」
「むしろ、圧倒的な差になるんだけど」
ア(略)の言葉に対して、中三病さんとぽっけねこさんが反応して目を向ける。前線組の二人のレベルは結構高いし、圧倒的な差をつけられてやられるのが目に見えているんだが。むしろその愚の骨頂の勇者というような行動に、周囲のプレイヤーたちが野次馬となって集まって来たぞ。
「いや、てめぇらじゃねぇ!!やるならそこのチビ助だ!!」
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>プレイヤー「アアアアアアアア」から、PvPのお誘いを受けました。
>受けますか?
―――――
「あ、もしかして僕に対して?」
ぽんっとログが出て来たと思えば、そんな表示が出されていた。どうやら二人を無視して弱そうな僕に対して狙いを絞ったらしい。一応このゲーム、プレイヤー同士だと勝手に殴り合いができないように、きちんとこうやってPvPをしなければ戦えなかったりするのだが…‥‥思いっきり前線組から逃げて弱そうな僕を狙うとは、底が知れているなぁ。弱いのは否定しないけれどね。
「なぁ、ハルさん、こんな奴の誘いを受ける必要はないって」
「この真っ赤勘違い男、放置すればいいよ」
「んー‥‥‥いや、でも受けて見ようかな?」
「「え?」」
ア(略)とのPvPを受ける必要はないと言われたが…‥‥一応、こういう対戦も興味が無かったわけではない。相手もゴリゴリに装備を固めていないし、レベルもすごい大差があるって訳でもないし‥‥‥後はちょっと、自分が人相手だとどのぐらいできるかなと思ったところがあるからね。後は普通に、不快なプレイヤーに対して自分の手でしっかり潰したいという想いが無いわけでもない。強くはないけれども、手段は色々とあるのだ。
―――――
>受けますか?
―――――
「ああ、受けるよ」
―――――
>受理を確認、30秒後にPvPが開始されますので、用意してください。
―――――
受理をした途端、周囲にドーム状の壁が現れ、中に僕とア(略)だけとなり、外側に中三病さんたちがだされる。戦闘で巻き込まれないようになっているとはいえ、念には念を入れての安全措置らしく、こういう戦闘用のフィールドが形成されるのだ。
「ふははは!!俺様との戦闘を堂々と受けるとはな!チビ助にはたっぷり痛い目を見せてやろう!!」
「こう見えても、現実だと大人なんだけどなぁ‥‥‥」
最初のアバター生成時のランダム設定で、少年っぽい見た目なだけである。いやまぁ、現実と凄い大差があるかと言われれば、そこまで言い切れなかったりするが。
とにもかくにも30秒の用意時間とは言え、僕は所持品と装備を確認する。戦士の職業の相手だが、セット装備とは言えそのATKやDEFは錬金術師より高いので侮れない。下手な攻撃では大したダメージも与えられないが、裏腹に、AGIが低い所を狙うか。
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>3,2,1‥‥‥スタート!!
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「おらぁ、これでフルボッコだぜぇ!!」
開始の合図と共に、一気に駆けだして戦士の初心者装備である剣を振り下ろしてくるア(略)。
勢いなどを見ると強そうだが、生憎ここはアルケディア・オンライン‥‥‥自由度の高さがあるので、行動が制限されることはそうない。
むしろステータス任せのやり方なんぞ、自由に動ける相手からすれば格好の的でしかないだろう。
「よっと、ここで避けて‥‥‥ほいっと」
さっと躱しつつ、身をかがめて相手の口の位置を確認する。幸い、初心者装備なので頭は固められ切っているわけではないようだし、この手が使えるだろう。
そう思い、所持品の中から次の商品として使えるかなと思っていたものを取り出し、相手の口にめがけて投げ込んだ。
ずぼがぼっ!!
「むぐぅ!?チビ何を、つっつ!?に、にがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
口に放り込まれたものに対して把握しきる前に、猛烈な叫び声をあげるア(略)。その突然の叫びように周囲の野次馬たちは驚き、何が起きたのかすぐに理解したようだ。
「お、おい!!あいつの口に何か入ったぞ!」
「ありゃ何だ?緑色の団子のようなものだが、見たこともないぞ」
「ん?あれってハルさんが雑草ジュースの代わりになりそうな投擲道具として作っていた‥‥‥『激ニガ毒団子』!?」
どうやらぽっけねこさんはすぐに気が付いたようで、そう口にする。
ああ、そうだ、確かに作っていた「激ニガ毒団子」であり、その味わいは目の前の大悶絶する様子から察することが出来るだろう。
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『激ニガ毒団子』
制作評価:5
効果:ニガニガ草やその他の毒草を混ぜ合わせ、固められてできた団子。一口食べればたちまちどんなモンスターも思わず苦いと叫んでしまうほどの苦さを発揮し、悶絶状態へ陥らせて低確率で行動不能状態にさせてしまう。さらに、毒(微)状態にもさせる。
―――――
どこで評価基準を設けているんだろうかと疑問に思いつつも、出来上がってしまった凶悪なアイテム。今度前線組への特殊な状態異常の攻撃手段として紹介して見ようかと思っていたのだが、こんな場で初披露するとは思わなかった。
「ぎゃああああああああ!!にがいにがいにがいにがいにがいにがいぃぃぃ!!」
びくんびくんっと悶え苦しみ、のたうち回るア(略)。VRMMOではあるが、このアルケディア・オンラインでは味も実際に感じることが可能であり、今回はそのシステムがあだとなった形で襲い掛かった。想像を絶する苦さだというが、ちょっとどのぐらいやばいのか、自分の舌で試さなくて良かったかもしれない。
しかも毒状態にしており、そこまでダメージを与える毒ではないとはいえ、のたうち回っているだけでどんどんHPが削られていき、気が付けば…‥‥
「あああああああ、あふぅん!?」
ボウンッツ!!
変な声を上げて、ア(略)がどこからともなく表れた棺桶に収納されて、黙ってしまった。
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>HPが0になったことを確認しました。
>撃破されたと判断され、初期リスポーン地点へ転送されます。
>‥‥‥おめでとうございます!!このPvP、「ハル」の勝利です!!
―――――
しゅわぁぁっと消えてしまった棺桶と同時に、終了の合図と勝利の表示がなされる。
あまりにもあっけない最期を見て、思わず相手がちょっと愚かだったとはいえ、全員あんな最後にはなりたくないとは思い、思わず皆で合掌してア(略)の冥福を祈ってしまうのであった‥‥‥
‥‥‥そして結果として、今回の状態異常用の道具だけでやらかしたことが、アルケディア・オンライン内での掲示板とやらで話題に挙がり、映像も撮られていたらしい。
これまで状態異常と言えば僧侶などの魔法があったが、それ以外の手段であり、モンスター相手にも有効そうな撃破方法として注目を浴びてしまった。
故に今、倒しにくい相手をどうにかできるかもしれないという事で、大人気商品になってしまったのであった‥‥‥
「でもそろそろ材料無くなるんだけど!!NPCも同じようなの売ってほしい!!」
「ダメだハルさん!!運営に問い合わせて見たけど、今回の件で調整を入れるらしいが、それでも3日はかかるらしい!!」
「意外に早いような、遅いような、さっさとして欲しいんだけどなぁぁぁぁ!!」
ALを稼げる機会だけど、商売繁盛すぎてゲーム内で過労死しかねん!!改善早く求む!!
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記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
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勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
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前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
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(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
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