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出会いましょう、新しい世界と共に
第七話 道中平和が一番ですが
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この世界の治安に関して言えば、前世よりも低いところがあるだろう。
重火器の類の代わりに魔法や魔道具と呼ばれるものもあるし、人口が少ない方なので広くカバーできるだけの人もいない。
法律とかは存在すれども、取り締まるだけの人が不足している感じは否めない。
だが、それでも日常的な世紀末みたいなことはない。
盗賊だろうと何だろうと、悪人も一応考えて行動する人が多いようで、頻繁な犯罪とかはないのである。
まぁ、その代わりに魔獣の襲撃などがあるので、盗賊とかよりもそっちの被害のほうが大きいようだが…とにもかくにも、王都までの道中で、異世界テンプレにありそうな族の襲撃にはまだ遭遇していなかった。
村々に寄っては入学する生徒を載せていき、乗客が増えていく。
平和な旅路ゆえに緊張感も少なく、そうなってくると暇になってくるわけで…
「よーし…セーフ。次、ルンバね」
「ふふふふ、これで無事に終えれば…おっふぅ、ギリギリ大丈夫だったか」
【むぅ、次私ですが…よっと、このぐらいならいけますね】
馬車内のスペースを作って、ルドたちは今ジェンガで遊んでいた。
暇だからこそ遊具を使って遊ぼうという発想になり、乗り込んできた他の人たちと一緒にやっているわけだが、暇つぶしにはちょうどいい。
何で前世にもあるような道具がここにあるのかといえば、どうも転生者というのは過去にもいたようで、チートでもあったのかそれとも商才でもあったのか、色々と作っていたようである。
リバーシ、チェス、縄跳び、コマ、ジェンガ、トランプ等々…流石に機械類の類は魔道具でも開発が難しいのかそこまでないようだが、そうでもなく紙や木等のお手軽な方の材料で作れるものは一通りそろっていたようで、そのため案外豊富だったりする。
村によっては特産品にしているところもあるようで、今使っているジェンガもひとつ前の村で生み出されたスライムジェンガで、崩すブロックがまさかのゼリーのような感触のブロックになっている。
そのせいで、かなりぶよぐにゃと不安定すぎる代物になっているが、その分のスリルが良いようで皆で楽しめているのである。
「さて、次はダレモッチだったか。お前できっと終わるだろう」
「いやいや、ここで負けるわけがない…ほぇっと!!さぁ、次はクレヤンだ!!」
「うぉぉぉぉ!!負けるかぁぁぁ!!」
中々のサイズだったので人数が多めで楽しめており、ちゃっかりハクロも混ざっていたりする。
最初こそ、乗ってきた乗客は魔獣であるハクロの存在に驚くところもあったが、一緒に遊ぶうちにだいぶ慣れたようで、今はすっかり馴染んでいた。
「おーい、坊主ども。この先坂道になっているから、傾くぞー」
「え?」
ぶぐっしゃぁぁん!!
「「「「ああああああああ!!」」」」
…平地なら堪え切れたようだが、流石に傾いたことでバランスが崩れて、ジェンガは崩れ去った。
とにもかくにも、皆で和気あいあいと楽しめており、平和な旅路になっている。
「なんかこう、もうちょっとハプニングとか起きそうなものなのに、意外に何もないな」
「まぁ、平民ばかりの馬車に悪党が襲撃をかけるメリットもないからねぇ」
一応この世界、階級制度はあるようで、しっかり貴族と平民の区分けがある。
そのこともあってか、国指導の教育制度も貴族と平民で分かれて学ぶところがあるようで、同じように王都で学ぶにしても向かうまでの道中の馬車は全くの別物になっているようだ。
「平民の馬車だと、荷物用の馬車を狙っても安物ばかりで価値のあるものはない。けれども、貴族の馬車であれば宝飾品とか持ち込む人がいるから、そっちを狙ったほうが十分利益が出るだろう」
「でも、貴族の馬車は馬車で、しっかり護衛もいるから、狙うだけのリスクを天秤にかけて難しい選択を迫られそうだけどね」
「よっぽど実力や数に自信がないと、そうそうやってくる奴はいないって」
【もしもこっちに来たら、私が相手しますけれどね。旦那様を脅かすのであれば、容赦せずスパッとやりますよ】
「何を斬るの?」
平和な道中なのは良いけど、途中で惨劇が起きないでほしい。
可能であれば襲ってこないほうが悪党たちにとって平和で済むのではないかと思う。
いやまぁ、かける情けもないのかもしれないけど、ハクロが相手をしたら肉片…残るか。そこは大丈夫かな?
そんな変な思いも抱きつつも、夜中には停車して車中泊を過ごし、朝には出発して進むこと1週間ほどで、ようやく王都が見えてくるところまで来た。
結局、賊たちは出ることがなかったが…うん、平和ならばそれで良いだろう。
「さてと、見えてきたけど…あれが王都か」
【うわぁ、大きいですねぇ】
まだ距離はあるはずだが、王都の周囲は壁のようなものに囲まれており、かなりの大きさを誇っている。
聖女の結界があるという話だが、よく見れば上の方にドーム状に包む何かが広がっており、あれが結界なのだと思われる。
「しかし、想像以上に大きいというか、なんというか」
国中の子供たちを集めて教育を施す場所があるからこそ、王都自体のサイズが巨大都市レベルになっている予想はしていた。
でも、こうやって実際に見てみると想像以上のサイズであり、かなりガッチガチに固められているので要塞都市と言っても過言ではないのかもしれない。
「アレで中心部のほうにお城があって…その周辺を城下街や教育施設もあるのか」
重要なものがあるからこそ、守りも辺境より固めているのだろう。
なお、聞いた話によれば他の国々の都市部も同じような構造になっているらしく、中には某天空の城のように空に浮かべているものもあると聞く。
ここはその中でも一般的なところになるようだが…これだけでも、国の力というのは相当大きなように感じられた。
「あ、そうだハクロ。都市に入るときに手続きがあるから、今のうちに書類を出しておいたほうが良いかも」
【そうですね。えっとこのあたりに…ありました】
ごそごそと収納魔法で収納していた、都市にハクロが入るために必要な手続きの書類も用意して、ルドたちは入る準備を整えるのであった。
「え?なんでそんな書類が?」
「あ、そういえば彼女魔獣だった」
「自然に過ごしていたけど、あの結界って魔獣を弾くって話があったんだっけ」
…少々馴染み過ぎたせいで、用意している途中で他の人たちにそんなことを言われた。
うん、自然にし過ぎた感じがあるが…これなら、中に入っても馴染めるかな?
「---おやまぁ、どうやら来たようだね」
「どうかされましたでしょうか、聖女様」
王都内、壁際に設けられた守衛所の中の、特別な一室。
その場にて、彼女がそうつぶやき、護衛していた騎士が訪ねた。
「ほら、先日辺境伯のほうから手続きがあったじゃないか。どうやら蜘蛛の魔獣って子が近づいてきた感触が結界から感じ取ってね」
「蜘蛛の魔獣…ああ、コレデナイト辺境伯より書簡で急いで用意していたあれですか」
「あの時受けた連絡では、本気で都市を滅ぼせるような実力があるって聞いていたが…ふむ、離れていても結界から感じる力だと…なるほど、嘘はついていないようだねぇ」
「それほどのですか…それはむしろ、入れないほうが得策では?」
シャレにならないような強さの魔獣を、容易く王都内に受け入れるのは愚策のようにも思える。
万が一暴れられたら壊滅的な被害が出る可能性があり、そうなる前に予防策としてそもそも入れないようにした方が得策なように騎士は思えた。
「いや、むしろ入れてゆっくりと友好的に接したほうが良いかもしれないねぇ。これほどのものならば、無理に敵対した時点で終わりだよ」
だが、受け入れずに敵対の方向性に持って行った時のことを考えたリスクのほうが、よりシャレにならない事態になると聖女は告げる。
「それにしても、これから手続きで見にいくのは良いが…この感じ、ちょっと気になるねぇ」
「何かありましたでしょうか?」
「強大な魔獣といえば魔獣だけど…この力のありようならば…ふむ、直接確かめたほうが早いか。さっさといくよ」
「はっ」
ひとまず今は、どのような相手なのか実際に確認するために、聖女たちは移動するのであった…
「それにしても、確か事前情報だとこの蜘蛛の魔獣、辺境の地で少年を見初めたとかあったね」
「そういえば、そのような情報がありましたな。それがどうかされましたでしょうか」
「これだけの力を持つ魔獣に愛されるとは運が良いのやら悪いのやら…と思ってねぇ。どうだい、今度あんたの嫁さん探しに魔獣も候補に入れるかい?」
「絶対お断りさせていただきます。そもそも自分、既婚者です」
「そういえばそうだったねぇ。あれ、独身って護衛騎士の中にいなかったっけ?」
「いるとすれば、そうですな…」
重火器の類の代わりに魔法や魔道具と呼ばれるものもあるし、人口が少ない方なので広くカバーできるだけの人もいない。
法律とかは存在すれども、取り締まるだけの人が不足している感じは否めない。
だが、それでも日常的な世紀末みたいなことはない。
盗賊だろうと何だろうと、悪人も一応考えて行動する人が多いようで、頻繁な犯罪とかはないのである。
まぁ、その代わりに魔獣の襲撃などがあるので、盗賊とかよりもそっちの被害のほうが大きいようだが…とにもかくにも、王都までの道中で、異世界テンプレにありそうな族の襲撃にはまだ遭遇していなかった。
村々に寄っては入学する生徒を載せていき、乗客が増えていく。
平和な旅路ゆえに緊張感も少なく、そうなってくると暇になってくるわけで…
「よーし…セーフ。次、ルンバね」
「ふふふふ、これで無事に終えれば…おっふぅ、ギリギリ大丈夫だったか」
【むぅ、次私ですが…よっと、このぐらいならいけますね】
馬車内のスペースを作って、ルドたちは今ジェンガで遊んでいた。
暇だからこそ遊具を使って遊ぼうという発想になり、乗り込んできた他の人たちと一緒にやっているわけだが、暇つぶしにはちょうどいい。
何で前世にもあるような道具がここにあるのかといえば、どうも転生者というのは過去にもいたようで、チートでもあったのかそれとも商才でもあったのか、色々と作っていたようである。
リバーシ、チェス、縄跳び、コマ、ジェンガ、トランプ等々…流石に機械類の類は魔道具でも開発が難しいのかそこまでないようだが、そうでもなく紙や木等のお手軽な方の材料で作れるものは一通りそろっていたようで、そのため案外豊富だったりする。
村によっては特産品にしているところもあるようで、今使っているジェンガもひとつ前の村で生み出されたスライムジェンガで、崩すブロックがまさかのゼリーのような感触のブロックになっている。
そのせいで、かなりぶよぐにゃと不安定すぎる代物になっているが、その分のスリルが良いようで皆で楽しめているのである。
「さて、次はダレモッチだったか。お前できっと終わるだろう」
「いやいや、ここで負けるわけがない…ほぇっと!!さぁ、次はクレヤンだ!!」
「うぉぉぉぉ!!負けるかぁぁぁ!!」
中々のサイズだったので人数が多めで楽しめており、ちゃっかりハクロも混ざっていたりする。
最初こそ、乗ってきた乗客は魔獣であるハクロの存在に驚くところもあったが、一緒に遊ぶうちにだいぶ慣れたようで、今はすっかり馴染んでいた。
「おーい、坊主ども。この先坂道になっているから、傾くぞー」
「え?」
ぶぐっしゃぁぁん!!
「「「「ああああああああ!!」」」」
…平地なら堪え切れたようだが、流石に傾いたことでバランスが崩れて、ジェンガは崩れ去った。
とにもかくにも、皆で和気あいあいと楽しめており、平和な旅路になっている。
「なんかこう、もうちょっとハプニングとか起きそうなものなのに、意外に何もないな」
「まぁ、平民ばかりの馬車に悪党が襲撃をかけるメリットもないからねぇ」
一応この世界、階級制度はあるようで、しっかり貴族と平民の区分けがある。
そのこともあってか、国指導の教育制度も貴族と平民で分かれて学ぶところがあるようで、同じように王都で学ぶにしても向かうまでの道中の馬車は全くの別物になっているようだ。
「平民の馬車だと、荷物用の馬車を狙っても安物ばかりで価値のあるものはない。けれども、貴族の馬車であれば宝飾品とか持ち込む人がいるから、そっちを狙ったほうが十分利益が出るだろう」
「でも、貴族の馬車は馬車で、しっかり護衛もいるから、狙うだけのリスクを天秤にかけて難しい選択を迫られそうだけどね」
「よっぽど実力や数に自信がないと、そうそうやってくる奴はいないって」
【もしもこっちに来たら、私が相手しますけれどね。旦那様を脅かすのであれば、容赦せずスパッとやりますよ】
「何を斬るの?」
平和な道中なのは良いけど、途中で惨劇が起きないでほしい。
可能であれば襲ってこないほうが悪党たちにとって平和で済むのではないかと思う。
いやまぁ、かける情けもないのかもしれないけど、ハクロが相手をしたら肉片…残るか。そこは大丈夫かな?
そんな変な思いも抱きつつも、夜中には停車して車中泊を過ごし、朝には出発して進むこと1週間ほどで、ようやく王都が見えてくるところまで来た。
結局、賊たちは出ることがなかったが…うん、平和ならばそれで良いだろう。
「さてと、見えてきたけど…あれが王都か」
【うわぁ、大きいですねぇ】
まだ距離はあるはずだが、王都の周囲は壁のようなものに囲まれており、かなりの大きさを誇っている。
聖女の結界があるという話だが、よく見れば上の方にドーム状に包む何かが広がっており、あれが結界なのだと思われる。
「しかし、想像以上に大きいというか、なんというか」
国中の子供たちを集めて教育を施す場所があるからこそ、王都自体のサイズが巨大都市レベルになっている予想はしていた。
でも、こうやって実際に見てみると想像以上のサイズであり、かなりガッチガチに固められているので要塞都市と言っても過言ではないのかもしれない。
「アレで中心部のほうにお城があって…その周辺を城下街や教育施設もあるのか」
重要なものがあるからこそ、守りも辺境より固めているのだろう。
なお、聞いた話によれば他の国々の都市部も同じような構造になっているらしく、中には某天空の城のように空に浮かべているものもあると聞く。
ここはその中でも一般的なところになるようだが…これだけでも、国の力というのは相当大きなように感じられた。
「あ、そうだハクロ。都市に入るときに手続きがあるから、今のうちに書類を出しておいたほうが良いかも」
【そうですね。えっとこのあたりに…ありました】
ごそごそと収納魔法で収納していた、都市にハクロが入るために必要な手続きの書類も用意して、ルドたちは入る準備を整えるのであった。
「え?なんでそんな書類が?」
「あ、そういえば彼女魔獣だった」
「自然に過ごしていたけど、あの結界って魔獣を弾くって話があったんだっけ」
…少々馴染み過ぎたせいで、用意している途中で他の人たちにそんなことを言われた。
うん、自然にし過ぎた感じがあるが…これなら、中に入っても馴染めるかな?
「---おやまぁ、どうやら来たようだね」
「どうかされましたでしょうか、聖女様」
王都内、壁際に設けられた守衛所の中の、特別な一室。
その場にて、彼女がそうつぶやき、護衛していた騎士が訪ねた。
「ほら、先日辺境伯のほうから手続きがあったじゃないか。どうやら蜘蛛の魔獣って子が近づいてきた感触が結界から感じ取ってね」
「蜘蛛の魔獣…ああ、コレデナイト辺境伯より書簡で急いで用意していたあれですか」
「あの時受けた連絡では、本気で都市を滅ぼせるような実力があるって聞いていたが…ふむ、離れていても結界から感じる力だと…なるほど、嘘はついていないようだねぇ」
「それほどのですか…それはむしろ、入れないほうが得策では?」
シャレにならないような強さの魔獣を、容易く王都内に受け入れるのは愚策のようにも思える。
万が一暴れられたら壊滅的な被害が出る可能性があり、そうなる前に予防策としてそもそも入れないようにした方が得策なように騎士は思えた。
「いや、むしろ入れてゆっくりと友好的に接したほうが良いかもしれないねぇ。これほどのものならば、無理に敵対した時点で終わりだよ」
だが、受け入れずに敵対の方向性に持って行った時のことを考えたリスクのほうが、よりシャレにならない事態になると聖女は告げる。
「それにしても、これから手続きで見にいくのは良いが…この感じ、ちょっと気になるねぇ」
「何かありましたでしょうか?」
「強大な魔獣といえば魔獣だけど…この力のありようならば…ふむ、直接確かめたほうが早いか。さっさといくよ」
「はっ」
ひとまず今は、どのような相手なのか実際に確認するために、聖女たちは移動するのであった…
「それにしても、確か事前情報だとこの蜘蛛の魔獣、辺境の地で少年を見初めたとかあったね」
「そういえば、そのような情報がありましたな。それがどうかされましたでしょうか」
「これだけの力を持つ魔獣に愛されるとは運が良いのやら悪いのやら…と思ってねぇ。どうだい、今度あんたの嫁さん探しに魔獣も候補に入れるかい?」
「絶対お断りさせていただきます。そもそも自分、既婚者です」
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