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第二章:動き出す終末の歯車
第一話:キスの意味は?
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しばらく曇天続きだったが、きょうは久々の快晴だった。
俺は制服ではなく、黒のジャケットにズボンを身につけ、迎えが来るのを待った。
窓も、扉も、鉄格子で補強ーーというより、閉ざされている。
もともと俺の自室だった部屋だが、今はこうして牢のように様変わりしていた。
息が詰まりそうで、俺は深いため息をこぼした。
すると、入り口付近で静かにたたずんでいたローガンが、腕時計を見た。
「もうすぐ団長が来る。辛抱してくれ」
「あ、ああ・・・・・・」
俺はまともにローガンと目も合わせられず、曖昧に返した。
本部に強制送還となった日から三日も経つのに、彼との関係はぎこちなかった。
すべては、あのキスのせいだ。
あれがなければ、今頃いつも通り接していられたのに、変に意識してしまう。
どうして俺にキスなんかした?
気が治まらないってどういうことなんだ?
聞きたいことがあるのに、ローガンも俺と目を合わそうとしない。
団長の命令で俺の見張り兼護衛として四六時中傍にいるのに、黙って入り口の傍で控えているだけだった。
今、聞いてみるべきなのだろうか。
いや・・・・・・気にしすぎると、よけいローガンがよそよそしくなってしまうかもしれない。
彼ほど安心して背中を任せられる相棒はいないというのに、このまま他人行儀な関係が続くのは嫌だった。
俺は意を決し、ローガンの方を見た。
「あ、あのさ・・・・・・」
「・・・・・・なんだよ」
ローガンは平静さを保っているように見えた。しかし、わずかに肩が跳ねていた。
「この前のーーキスなんだけど・・・・・・」
「あ・・・・・・」
ローガンは頬を朱に染め、うつむいた。
何か言おうと、口を開閉している。
「あ、あれは・・・・・・」
彼が言葉を紡いだときだった。
ローガンの背後で扉がノックされ、団長の声が聞こえた。
「ライアンお待たせ! ローガン、ちょっと出てきて~」
「え、あーーはい!」
ローガンは内側の鍵を慌ただしく開けると、扉の外へするりと出て行った。
また、聞きそびれてしまった。
俺は机に突っ伏し、長い息を吐いた。
指先が、自然と唇へ伸びる。ローガンの唇が合わさったあの感触が蘇り、頬がカッと熱くなった。
あのキスの意味は、一体なんだろう。
友情? 心配? どれも違う。
第一、男同士でーー。
「ライアン? どうかした?」
「ーーっ、団長・・・・・・」
ぼんやり部屋の隅を見ていたら、突然団長がすぐ脇に立っていた。
本当に、この人は四六時中気配がない。
武を極めたせいで、プライベートでも自然と臨戦時の歩調が抜けないのだと、彼は言っていた。
俺も、そんな隙のない戦士になりたい。
そんなあこがれの気持ちを込めて見つめていると、団長は微笑を浮かべ、俺の頭に手を乗せた。
「また煙草吸ったな? においが髪にまで染み着いてるぞ」
「それくらいしか、気を紛らわすものが無くて」
密室にローガンと一緒に缶詰にされ、特に話すこともなく気まずい時間が流れるーー煙草しか頼れる物がなかった。
団長はちらりと卓上に視線を移し、吸い殻が溢れかえった灰皿を一瞥すると、苦笑した。
「窮屈な思いをさせてしまってすまない。でも、お前のためなんだ」
「分かってます」
「だから、今日は思う存分気分転換してくれ」
そう、今日は団長と二人で食事なのだ。
護衛としてローガンが同行するが、親子二人だけでの食事は、久々だった。
子供のようにはしゃぐ団長に手を引かれ、部屋を出る。
すると、扉の外でローガンが待っていた。
制服姿ではなく、グレーのパーカにデニムというラフな格好だ。パーカについているフードを目深にかぶっているが、一瞬、俺と目があった。
俺の心臓が、跳ねる。
冴えた碧眼と視線が交差したのはほんの一時だったにも関わらず、まるで何時間も見つめ合っていたような気持ちだ。
俺が俯いてしまいそうになると、ローガンから視線を外し、団長に言った。
「団長、すでにヘリは屋上に待機しているそうです」
「分かった。行こうか」
団長は意気揚々と歩き出す。
その後をローガンが追うが、俺は動かなかった。
・・・・・・いや、動けなかった。
自分でも理由を把握しきれない、漠然とした不安が胸に広がり、足が固まってしまったようだ。
こんな気持ちで食事なんて、団長にも悪い。
俺がどんよりと重い気分でたたずんでいると、すくい上げるような優しい仕草で、右腕をそっと掴まれた。
「なにしてんだ」
気怠そうに、俺を見下ろしている。
それでも、ローガンの目は優しかった。
「ほら、行くぞ」
「あ・・・・・・うん」
うながされるように手を引かれ、俺は歩き出した。
***
聖騎士団の本部が建つ場所は、まだヴァンパイアが地上を支配していた頃、サンマリノ共和国と呼ばれていた。
イタリアの中に存在する小国で、絶壁の頂上に立つ城塞を守るように美しい町並みが広がっていたそうだ。
国主を筆頭に聖騎士団が結成された為、その城塞が今の本部となっている。
何百年という時を経て周囲の地面が沈み、本部はことさら高い位置にそびえる孤高の要塞となったわけだ。
その本部からヘリで移動し、イタリア内に入るのは、そう難しいことではなかった。
なにより、聖騎士団はあらゆる国境を自由に越える権限を持っている為、問題にはならない。
「今日はローガンが調べてくれたイタリア料理の有名店に行くよ」
ヘリの中で嬉しそうに言った団長が差し出した端末には、以前非番の日にローガンに誘われた店が写されていた。
「実は私も以前から気になっていた店だったんだ」
「団長、ここはロブスターのパスタが美味しいそうですよ」
端末を指さし、ローガンが微笑する。
団長は目を輝かせ、押しつけるようにして俺に画面を見せてきた。
「ライアン、見てごらん。こんなに大きなロブスターを使っているんだよ!」
「団長、落ち着いて下さい」
「落ち着けないよ~。戦争以来、海鮮は特に貴重だからね」
そう言うと、団長はヘリの大きな窓から、眼下に広がるアドリア海の青一色を見下ろした。
「綺麗だね。これほど美しい海は、今や珍しいよ」
数百年たって戻りつつあるが、戦争によって海には毒が流れ、多くの生き物が死んだ。
全てを賭けて戦った代償の一つとしては、大きいものだった。
「私もいずれは老い、そして死ぬだろう。これからの世界を担っていくのは、君たち若者だ」
アドリア海の色を映したような、美しい碧眼が俺とローガンに向けられた。
全ての闇を吸収し、浄化してくれるようなーー慈愛に満ちた優しい目。
同時に、全てを見透かしているような目だ。
俺はじっと、柔和でいて鋭利な団長の目を見続けた。
なにを話す訳でもなく、三人で海を眺めていると、ヘリコプターがじょじょに降下しはじめた。
地形の変化によって隆起し、形成された島々の中で、最も大きな島へ向けて高度を下げている。
窓から島の様子を見下ろすと、赤みがかった屋根に白壁の家が、細い道を縁取るように並んでいた。それが島中に広がり、青々と茂る木々の中で映えていた。
「着いたようだね」
俺と同じように外を覗いていた団長は、そう言って微笑した。
ヘリコプターは右に旋回し、海岸付近に設けられたヘリポートへゆっくりと降りていく。
目立って大きな振動もなく着陸したヘリから降りると、ヘリポートから少し離れた場所に、黒塗りの車が停まっていた。
運転手が深くお辞儀をし、団長に向かって微笑んだ。
「お待ちしておりました、ブラックフォード団長」
「こんにちは。今日はよろしく頼むよ」
「心得てございます」
運転手は再度深くお辞儀をすると、後部座席の扉を開いた。
団長はすぐに後部座席に乗り込み、俺を手招きする。
ローガンをちらりと見ると、彼は黙って助手席へ向かっていった。
俺は笑顔で待つ運転手に軽く会釈し、団長の横へ乗り込んだ。
「それでは、参りますね」
運転手は静かに運転席へ腰掛けると、ゆっくりと車を発進させた。
煉瓦を敷き詰めて舗装された道を、車が滑るように進む。けしてなだらかな道とはいえず、車は微弱に振動していた。
道の左右には広葉樹が植えられ、人々を直射日光から守っている。それは車内にいる俺たちにもありがたいことだった。
車窓から覗く空は快晴で、海の色を鏡で写し取ったように鮮やかだ。もしヴァンパイアが地上にいたら、きっと苦しんだことだろう。
その時、一瞬視界がぶれた。
眠気、めまい・・・・・・どちらでもない。
目をこすってふたたび空を見ると、ちょうど木々の切れ目から太陽が顔を覗かせ、俺の顔を照らした。
瞬間、目が焼けるように痛んだ。
とっさに顔を逸らし、目頭を押さえる。
「・・・・・・っ」
「ん? どうした、ライアン」
すかさず団長が、心配そうに声をかけてきた。
「いえ・・・・・・目が疲れているようで、少し痛んだだけです」
「ああ、銃は目が疲れるものね」
団長はそう言って、俺の側にある車窓用のカーテンを閉めた。
日光が遮られると、じょじょに目が楽になっていった。
まだじんじんと痛みが残っているが、しばらくすれば治るだろう。
何度か瞬きを繰り返していると、助手席にいたローガンが振り返ってきた。
「大丈夫か? 目、真っ赤だぞ」
「え?」
「充血してる」
ちらりとバックミラーで確認すると、確かに両目が真っ赤に充血している。
まるでーーヴァンパイアのようだと思った。
そして驚くことに、鏡に映る自分が、血塗れに見えた。
真っ赤な目をして、唇の端からどす黒い血を流し、笑っているーー。
「ーーっ」
慌ててまばたきを繰り返すと、ミラーには真っ青な顔をした俺自身が映っているだけだった。
そして、やや不安げに眉根を寄せている運転手と、鏡越しに目が合う。
「大丈夫ですか? ご気分が優れないのでしたら・・・・・・」
「いえ、平気です」
きっと、最近いろんな事がありすぎて疲れているだけだ。
そう、俺は自分に言い聞かせた。
俺は制服ではなく、黒のジャケットにズボンを身につけ、迎えが来るのを待った。
窓も、扉も、鉄格子で補強ーーというより、閉ざされている。
もともと俺の自室だった部屋だが、今はこうして牢のように様変わりしていた。
息が詰まりそうで、俺は深いため息をこぼした。
すると、入り口付近で静かにたたずんでいたローガンが、腕時計を見た。
「もうすぐ団長が来る。辛抱してくれ」
「あ、ああ・・・・・・」
俺はまともにローガンと目も合わせられず、曖昧に返した。
本部に強制送還となった日から三日も経つのに、彼との関係はぎこちなかった。
すべては、あのキスのせいだ。
あれがなければ、今頃いつも通り接していられたのに、変に意識してしまう。
どうして俺にキスなんかした?
気が治まらないってどういうことなんだ?
聞きたいことがあるのに、ローガンも俺と目を合わそうとしない。
団長の命令で俺の見張り兼護衛として四六時中傍にいるのに、黙って入り口の傍で控えているだけだった。
今、聞いてみるべきなのだろうか。
いや・・・・・・気にしすぎると、よけいローガンがよそよそしくなってしまうかもしれない。
彼ほど安心して背中を任せられる相棒はいないというのに、このまま他人行儀な関係が続くのは嫌だった。
俺は意を決し、ローガンの方を見た。
「あ、あのさ・・・・・・」
「・・・・・・なんだよ」
ローガンは平静さを保っているように見えた。しかし、わずかに肩が跳ねていた。
「この前のーーキスなんだけど・・・・・・」
「あ・・・・・・」
ローガンは頬を朱に染め、うつむいた。
何か言おうと、口を開閉している。
「あ、あれは・・・・・・」
彼が言葉を紡いだときだった。
ローガンの背後で扉がノックされ、団長の声が聞こえた。
「ライアンお待たせ! ローガン、ちょっと出てきて~」
「え、あーーはい!」
ローガンは内側の鍵を慌ただしく開けると、扉の外へするりと出て行った。
また、聞きそびれてしまった。
俺は机に突っ伏し、長い息を吐いた。
指先が、自然と唇へ伸びる。ローガンの唇が合わさったあの感触が蘇り、頬がカッと熱くなった。
あのキスの意味は、一体なんだろう。
友情? 心配? どれも違う。
第一、男同士でーー。
「ライアン? どうかした?」
「ーーっ、団長・・・・・・」
ぼんやり部屋の隅を見ていたら、突然団長がすぐ脇に立っていた。
本当に、この人は四六時中気配がない。
武を極めたせいで、プライベートでも自然と臨戦時の歩調が抜けないのだと、彼は言っていた。
俺も、そんな隙のない戦士になりたい。
そんなあこがれの気持ちを込めて見つめていると、団長は微笑を浮かべ、俺の頭に手を乗せた。
「また煙草吸ったな? においが髪にまで染み着いてるぞ」
「それくらいしか、気を紛らわすものが無くて」
密室にローガンと一緒に缶詰にされ、特に話すこともなく気まずい時間が流れるーー煙草しか頼れる物がなかった。
団長はちらりと卓上に視線を移し、吸い殻が溢れかえった灰皿を一瞥すると、苦笑した。
「窮屈な思いをさせてしまってすまない。でも、お前のためなんだ」
「分かってます」
「だから、今日は思う存分気分転換してくれ」
そう、今日は団長と二人で食事なのだ。
護衛としてローガンが同行するが、親子二人だけでの食事は、久々だった。
子供のようにはしゃぐ団長に手を引かれ、部屋を出る。
すると、扉の外でローガンが待っていた。
制服姿ではなく、グレーのパーカにデニムというラフな格好だ。パーカについているフードを目深にかぶっているが、一瞬、俺と目があった。
俺の心臓が、跳ねる。
冴えた碧眼と視線が交差したのはほんの一時だったにも関わらず、まるで何時間も見つめ合っていたような気持ちだ。
俺が俯いてしまいそうになると、ローガンから視線を外し、団長に言った。
「団長、すでにヘリは屋上に待機しているそうです」
「分かった。行こうか」
団長は意気揚々と歩き出す。
その後をローガンが追うが、俺は動かなかった。
・・・・・・いや、動けなかった。
自分でも理由を把握しきれない、漠然とした不安が胸に広がり、足が固まってしまったようだ。
こんな気持ちで食事なんて、団長にも悪い。
俺がどんよりと重い気分でたたずんでいると、すくい上げるような優しい仕草で、右腕をそっと掴まれた。
「なにしてんだ」
気怠そうに、俺を見下ろしている。
それでも、ローガンの目は優しかった。
「ほら、行くぞ」
「あ・・・・・・うん」
うながされるように手を引かれ、俺は歩き出した。
***
聖騎士団の本部が建つ場所は、まだヴァンパイアが地上を支配していた頃、サンマリノ共和国と呼ばれていた。
イタリアの中に存在する小国で、絶壁の頂上に立つ城塞を守るように美しい町並みが広がっていたそうだ。
国主を筆頭に聖騎士団が結成された為、その城塞が今の本部となっている。
何百年という時を経て周囲の地面が沈み、本部はことさら高い位置にそびえる孤高の要塞となったわけだ。
その本部からヘリで移動し、イタリア内に入るのは、そう難しいことではなかった。
なにより、聖騎士団はあらゆる国境を自由に越える権限を持っている為、問題にはならない。
「今日はローガンが調べてくれたイタリア料理の有名店に行くよ」
ヘリの中で嬉しそうに言った団長が差し出した端末には、以前非番の日にローガンに誘われた店が写されていた。
「実は私も以前から気になっていた店だったんだ」
「団長、ここはロブスターのパスタが美味しいそうですよ」
端末を指さし、ローガンが微笑する。
団長は目を輝かせ、押しつけるようにして俺に画面を見せてきた。
「ライアン、見てごらん。こんなに大きなロブスターを使っているんだよ!」
「団長、落ち着いて下さい」
「落ち着けないよ~。戦争以来、海鮮は特に貴重だからね」
そう言うと、団長はヘリの大きな窓から、眼下に広がるアドリア海の青一色を見下ろした。
「綺麗だね。これほど美しい海は、今や珍しいよ」
数百年たって戻りつつあるが、戦争によって海には毒が流れ、多くの生き物が死んだ。
全てを賭けて戦った代償の一つとしては、大きいものだった。
「私もいずれは老い、そして死ぬだろう。これからの世界を担っていくのは、君たち若者だ」
アドリア海の色を映したような、美しい碧眼が俺とローガンに向けられた。
全ての闇を吸収し、浄化してくれるようなーー慈愛に満ちた優しい目。
同時に、全てを見透かしているような目だ。
俺はじっと、柔和でいて鋭利な団長の目を見続けた。
なにを話す訳でもなく、三人で海を眺めていると、ヘリコプターがじょじょに降下しはじめた。
地形の変化によって隆起し、形成された島々の中で、最も大きな島へ向けて高度を下げている。
窓から島の様子を見下ろすと、赤みがかった屋根に白壁の家が、細い道を縁取るように並んでいた。それが島中に広がり、青々と茂る木々の中で映えていた。
「着いたようだね」
俺と同じように外を覗いていた団長は、そう言って微笑した。
ヘリコプターは右に旋回し、海岸付近に設けられたヘリポートへゆっくりと降りていく。
目立って大きな振動もなく着陸したヘリから降りると、ヘリポートから少し離れた場所に、黒塗りの車が停まっていた。
運転手が深くお辞儀をし、団長に向かって微笑んだ。
「お待ちしておりました、ブラックフォード団長」
「こんにちは。今日はよろしく頼むよ」
「心得てございます」
運転手は再度深くお辞儀をすると、後部座席の扉を開いた。
団長はすぐに後部座席に乗り込み、俺を手招きする。
ローガンをちらりと見ると、彼は黙って助手席へ向かっていった。
俺は笑顔で待つ運転手に軽く会釈し、団長の横へ乗り込んだ。
「それでは、参りますね」
運転手は静かに運転席へ腰掛けると、ゆっくりと車を発進させた。
煉瓦を敷き詰めて舗装された道を、車が滑るように進む。けしてなだらかな道とはいえず、車は微弱に振動していた。
道の左右には広葉樹が植えられ、人々を直射日光から守っている。それは車内にいる俺たちにもありがたいことだった。
車窓から覗く空は快晴で、海の色を鏡で写し取ったように鮮やかだ。もしヴァンパイアが地上にいたら、きっと苦しんだことだろう。
その時、一瞬視界がぶれた。
眠気、めまい・・・・・・どちらでもない。
目をこすってふたたび空を見ると、ちょうど木々の切れ目から太陽が顔を覗かせ、俺の顔を照らした。
瞬間、目が焼けるように痛んだ。
とっさに顔を逸らし、目頭を押さえる。
「・・・・・・っ」
「ん? どうした、ライアン」
すかさず団長が、心配そうに声をかけてきた。
「いえ・・・・・・目が疲れているようで、少し痛んだだけです」
「ああ、銃は目が疲れるものね」
団長はそう言って、俺の側にある車窓用のカーテンを閉めた。
日光が遮られると、じょじょに目が楽になっていった。
まだじんじんと痛みが残っているが、しばらくすれば治るだろう。
何度か瞬きを繰り返していると、助手席にいたローガンが振り返ってきた。
「大丈夫か? 目、真っ赤だぞ」
「え?」
「充血してる」
ちらりとバックミラーで確認すると、確かに両目が真っ赤に充血している。
まるでーーヴァンパイアのようだと思った。
そして驚くことに、鏡に映る自分が、血塗れに見えた。
真っ赤な目をして、唇の端からどす黒い血を流し、笑っているーー。
「ーーっ」
慌ててまばたきを繰り返すと、ミラーには真っ青な顔をした俺自身が映っているだけだった。
そして、やや不安げに眉根を寄せている運転手と、鏡越しに目が合う。
「大丈夫ですか? ご気分が優れないのでしたら・・・・・・」
「いえ、平気です」
きっと、最近いろんな事がありすぎて疲れているだけだ。
そう、俺は自分に言い聞かせた。
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