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第二章
◇帝都・長宗我部邸
しおりを挟む時は流れ帝都では、ぱーてぃーという貴族や郷長たちの交流会の催しが開かれる時期になっていた。
郷長であり公爵位の士貴様は出席しなくてはいけない。そして、その婚約者である私も同伴するため一緒に帝都に行くことになった。
郷からは一日かかるのでゆっくり宿に泊まりながら向かっている。
「紗梛さん、もうすぐ帝都だよ」
士貴様にそう言われて馬車の窓掛けを開けると、結華郷とは全く違い街は賑わっていた。
「とても賑わいがありますね。それに雰囲気も違います」
「だろう? まぁ、皆が夢や希望を持って来る街だからいろんな人がいる。帝都にはたくさん学校があるからそれもあるが」
「そうなんですね、ふふ楽しそうです。なんかみんな輝いているって感じで」
みんなイキイキしていて楽しそう。女学校の同級生が帝都は華やかだと聞いてはいたけど本当だったなぁ
「紗梛さん、もうすぐ邸に着く」
「早いですね。低に士貴様のご両親がいらっしゃるのですか?」
「あぁ。紗梛さんに会うのを楽しみにしている。仲良くしてもらえたら嬉しい」
「はい。もちろんです」
それから帝都に入り中心部に向かうと、本宅とは少し小さめだが装飾が派手なお屋敷に到着した。
「これは、……両親の趣味だ」
「そうなんですね」
キラキラしていて別世界だなぁと考えていると先に降りた士貴様に手を差し出されて私は手を添えて馬車から降りた。
「ありがとうございます」
士貴様は微笑むとそのまま手を引いて屋敷の前まで案内してくださった。
すると「士貴さま?」と声を掛けられ、振り向くと七十代くらいの男性がいた。
「望月か。久しぶりだな」
「お久しぶりでございます、士貴様」
「あぁ、望月……元気そうで良かったよ。彼女は櫻月紗梛さん。紗梛さん、こっちは望月と言ってね父の執事だ」
士貴様のお父様の執事さん?だけど、松島さんもお父様の執事だったと言っていた気が……
「この邸で執事長を務めている望月でございます、よろしくお願いいたしますね……さぁ玄関口で立ち話もなんですから入りましょう。大旦那様と大奥様がお待ちですから」
「そうだな。紗梛、入ろう」
私は士貴様と中に入るとそこには、きっと士貴様のご両親だろうか壮年の男性とそのご夫人が並び迎えてくれた。
「遠路はるばるよく帰ってきたね、士貴。それから紗梛さんもよく来てくれた」
「あぁ、ただいま。父さん、母さん」
「元気そうで良かったよ、それに可愛らしいお嬢さんだね」
「お、お初にお目にかかります。櫻月紗梛と申します。よろしくお願いいたします」
私がお辞儀をすると士貴様のお母様が手を叩いて「お二人共お疲れなのだから早く入ってもらいましょう」と言った。すると「そうだな」と士貴様とお父さんは言葉が重なった。なんだか親子なんだなぁと思ったら少し笑みが溢れた。
***
「――今日はね、紗梛さんがいらっしゃるからたくさん作ったのよ」
居間に案内されて私はお二人から自己紹介をされた。
「改めまして、私は士貴の父の貴文です。そして妻の郁世です」
私も改めて名前を言うと「よろしく」と言われてお辞儀をした。
そんな中、大きな机には、たくさんの菓子が並べられている。
お団子やお饅頭、羊羹にカステラなどが並べられていて他にも異国のお菓子も並んでいる。
「紗梛さん、母は菓子を作るのが好きでね。すまないが食べてあげてほしい」
そういえば、士貴様も私をあの屋敷に連れて来てもらった時に色々お菓子を出してもてなしてくれたな……と思ったら、ご両親のいいとこ取りをしてるんだなと密かに思った。
「はい、とても美味しそうです……喜んでいただきます」
お茶も淹れてくださって、茶葉の香りがふわふわと漂っていて癒される。
「これは玉露という茶葉でね、うちが契約をしている茶畑でとれたものよ。茶師が厳選して作ったこだわりの茶葉なの」
「そうなんですね、とても旨みと甘味があって美味しいです」
「喜んでいただけて嬉しいわ。また、本邸にもお送りいたしますわ」
「ありがとうございます、大奥様」
お茶は大好きなのでとても嬉しい。
「あら、紗梛さん。私のことはお義母さんでいいのよ? 士貴のお嫁さんになるのだからおかしくないわ」
「え、ですが……」
「そうだな。では、私のこともお義父さんと呼んでほしい」
えっ……そ、そんな!
「ふふ、まぁゆっくり呼んでくれればいいわよ。そうだわ、明日はゆっくり二人でお茶会しましょう。夜会は明後日だものね」
「え、いいのですか?」
「もちろんよ。そうだ、呉服商も呼んで着物を仕立てましょうか……楽しみだわ」
郁世様は思いついたように話をした。それに頷いていいのか分からず戸惑っていると、士貴様に微笑まれたので郁世様の言葉に頷いた。
それから今日は疲れただろうと晩餐まで用意してくださった部屋で休むことになった。
部屋を用意していただいて私は、華が楽な着物を用意してくれて着替えると部屋にあるテーブルで春がお茶を淹れてくれる。そしてお茶の隣には最中らしきお菓子があった。これって……
「紗梛様、先ほどはあまりお菓子を食べられなかったでしょう? 大奥様付きの侍女から渡されまして」
「そうなんですか? 晩餐まで時間まであるし、小腹が空いていたの」
お菓子を持ち上げると、生地の香ばしい香りがふんわりと香り口に入れればサクッと香ばしい食感と中に詰まっていた粒あんの小豆の風位が鼻を通って甘くて美味しい。それを食べながら茎茶を飲んだ。旨味が強くて爽やかな香りが特徴のお茶で最近のお気に入りだったりする。
その後は春たちとお話をしたりして晩餐の時に着る着物を着付けてもらい、時間がくるのを待っていた。暗くなった頃、部屋に迎えに来た士貴様と一緒に食堂へ向かった。
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