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第十二章
日向の仲間たち。
しおりを挟む「陽愛さん!こっちでトランプしません⁈」
「いやいや、今日は俺のバイク見てください‼︎」
日向の姫になり数日。
学校から陽平くんに連れられて倉庫に来た私は、なぜか引っ張りだこ状態になっていた。
こんな展開になるなんて思ってなくてアタフタしたけどやっと慣れて来た。
「今日は、えっと……」
トランプをやるってなるとババ抜きしか知らないらしくて永遠にババ抜きやらされるし
バイクを見に行けば、専門用語を30分くらい永遠に聞かなきゃいけなくなる……
仲良くしてくれるのはすごく嬉しい。だけど、少し困っていると……
「こら、お前ら。陽愛さん困ってる!陽愛さんごめんなさい。お飲み物の準備できましたので行きましょう」
いつもレンくんが助け舟をくれる。レンくんには感謝しかないよ。
「いつもすみません、困らせてしまって。」
「私もいつもごめんね、助け舟を出してもらっちゃって」
2人で謝りながら上に行くのも日常になりつつある。
2階にある部屋“幹部室”の前に行けば、レンくんが開けてくれる。これも日常になってる。
「ありがとう、レンくん。」
「いえ」
本当にいい子だなぁ…気遣いとかできるなんて素敵だ。きっとレンくんはモテるよね。
「陽愛さん、俺モテませんよ。」
「え?こ、声に出ちゃってた?」
「はい、まるっきり。」
……恥ずかしい。こんなことが声に出てたなんて……それに、
「陽愛、レンのことそんな風に思ってたんだ。」
「え、えっと……あの陽平くん………」
「陽愛、総長室いこうか。」
………え⁈と思った時にはもう既に遅くて手を繋がれて拒否をすることはできなくなっていた。
総長室に入るなりキスをする。唇が触れ合う度に身体が熱くなっていくのを感じる。
「………んっ…」
彼の今日のキスは優しくない。怒ってるように激しい……。
「…陽愛が悪いんだからな。」
『陽愛が悪いんだ……俺らを裏切ったから』
なんで、なんでこんな時に彼が出てくるのよ……っ
彼が触れる手が怖く感じる。あの日と重なるように恐怖心が支配していた。
「ごめ、なさいっ……私。」
「ひ、より……っ!」
彼の手が私に再び触れたその時、
「陽愛ちゃん怖がってる…陽、感情コントロールはしろよ。」
入り口には昇さんが立っていた。そのおかげで彼は私から離れた。
「ごめん」
それは昇さんに対してなのか私に対してなのかわからないけど……
それは分からないまま、彼は私を残して幹部室に入って行った。
……のに、急にドアが開いた。
「……陽愛も一緒に。話、聞いて」
私と陽平くんが幹部室に入ると、昇さん以外は何も知らないのか「おかえり~」なんて明るく言う。
「陽と陽愛ちゃん、座って。ちゃちゃっと話すから」
「ちゃちゃっとって……そんな軽い話じゃないだろ」
「まぁそうだけど。陽、今日届いたらしいんだ。」
1つの白い封筒が陽平くんに手渡された。その封筒の裏、差出人の名前には月輝のあの人からだった。
「三間 洸(みま こう)……月輝の総長か。」
封筒を開けると、綺麗に三つ折りされていて洸の性格が出ているなと思う。
すると、1人見ていた陽平くんは嘲笑った。
「……宣戦布告、ね。」
「宣戦布告か。やってくれんじゃん」
宣戦布告って、月輝が日向に戦いを申し込んだってことだよね……?
それって私のせい、だよね……っ
「なーに、陽愛勘違いしてんの?」
「え?だって、私がみんなと仲良いからじゃ……」
「……大丈夫だよ、陽愛。陽愛のせいじゃないよ。前から抗争あるんじゃないかって言われていたことなんだ。」
そう灰崎くんは言うけどやっぱり自責の念に駆られる。
「陽愛、逆に良かったって思ってんだ。戦いを仕掛ける手間が省けたんだから。しかも、日時も決まってるしラッキーだよ。逆にありがとうだよ。」
彼が見せた手紙には日時がしっかりと記されている。
……って、明後日じゃん!大丈夫なの⁈
「ふっ…全国を代表とする日向に宣戦布告なんてね。」
「バカだねぇ…そういえば本職も呼んだらしいよ」
「あらまぁ…それじゃ、俺たちも何かと作戦を考えなきゃだ。」
そうみんなが話していて、みんなの表情は切羽詰まった感じとは逆に楽しそうな表情をしていた。
「な、なんでそんなに楽しそうなの?」
楽しそうに話す彼らに聞くと口を揃えて同じことを口にする。
「久しぶりに喧嘩出来るからね~楽しみだからだよ。」
「だよなー!最近平和すぎて、体なまっちゃったかもだな。」
「喧嘩好きじゃなきゃ、暴走族に入らないでしょ?」
そりゃそうか。喧嘩が嫌なら暴走族には入らないか……。
「昇、あいつらに連絡お願い。早めにつけるように言えよ。」
「もうしたよ、夜中には全員揃うんじゃない?」
またみんなで会話始める彼らに頭の中はハテナだらけになる。そのあとは、本当に私じゃわからない話ばかりで眠くなってくる。
「陽愛ちゃん、眠そうだけど寝る?今日は泊まりだから」
泊まりなんて聞いてないって思ったのに、ねむくてそんな言い返すことはできずにうなずいた。
【陽平 side】
陽愛が眠った後の夜中の1時。
倉庫には、悠介さんと呼んだ3人がやってきた。
「ほんっと、人使い荒いんだから。だけど今回は俺も協力するから。話も聞きにきた。」
「ありがとうございます、悠介さん。圭太たちもこんな時間から来てもらってありがとう。」
「まぁ、噂で聞いてたからそろそろかなーって思ってたんだ。」
「陽平はいつものことじゃん?だから慣れてる。」
「……眠いから早く話始めてよ」
その声によって、真夜中の秘密会議が始まった……━︎━︎━︎━︎━︎━︎━︎━︎━︎━︎。
【陽愛 side】
……ん………
なんか身体が動かない……?
目を開くと、陽平くんに抱きしめられていてすっぽり入っていて抜け出せなくなっていた。
「……ん?ひ、より?」
「陽平くん、起きて……!離れてよ!」
「やだ。陽愛と離れたくない」
「はい⁈はーやーくー起きて‼︎」
……起きない………起きる気配も感じられない。
「ねぇ、どうしたら…」
「キスしてくれたら起きる。」
はぁ⁈
何言って……
「早く~」
なんで今日はこんなに駄々こねてるのよ。もう……仕方ない……。
私は意を決して彼にキスをするけど、何故か私がキスをされていた。
「……キスはこうやるんだよ。わかった?」
彼は私の答えを聞かずにまた唇にキスをした。
「…よし、今日は紹介したいやついるんだ。先に行くから着替えて来いよ」
よしじゃないし!!
それに紹介、したいやつ……ってだれなの?
ブツブツと言いながら花柄のワンピースに着替えて私も幹部室に向かった。
「おまたせしました…?」
ドアを開ければ知らない人が3人いて、困惑していると庵くんは呑気に「おはよー」なんて言ってる……。
「陽愛、ここ座って。」
私をソファへと促すと、昇くんが話し出した。いつも思うんだけど昇くんって説明係なのかな……いつも話すのは昇くんだ。
なんてことはさて置き、昇くんは私の方を向いた。
「陽愛ちゃん。はじめの頃、日向のこと話したの覚えてる?」
「あ、はい……日向は全国にあるって………」
「そう。日向の正式名称は【日向会】。ここは【日向会の日向】って言うんだけどみんなは本部って言ってる。
でね、ここにいる3人は日向会の中での3トップの【光冴 Kouga】【天陽 Amahi】【日和 Hiyori】って言うんだよ。」
3トップか……全国には日向会はどのくらい存在するんだろうか。
「まぁ、自己紹介でもしようかな。俺らも曖昧な感じだったし……」
そういえば、そうだった。ちゃんと自己紹介してないや……。
「じゃあ、俺。俺はわかってると思うんだけど、早川陽平。」
と、陽平くんから自己紹介が始まり昇さん、灰崎く…いや理玖くん、庵くん、蒼太くんが話した。
「あ、朝倉 陽愛です……よろしく。」
「お姫さまはひより、って言うの?俺のチームも日和って言います‼︎日和の総長の松野 仁(まつの じん)です!よろしくね。」
私の名前と同じチーム名を持つ日和の総長さんの松野 仁さん。ムードメーカータイプだと思う。髪も派手なオレンジ色。
「俺は光冴の総長、和泉 圭太(いずみ けいた)。日向会の中で医療チームの役割にある。一応、日和は守備隊の役割をしている。」
強そうな名前を持つのに医療チームらしい光冴の総長である和泉 圭太さん。すごく賢そうな彼は紺色の綺麗な髪にピアスを一つつけている。
「……あ、ぼ僕は天陽の総長柏木 響(かしわぎ きょう)です。よ、よ、よろしくです!」
すごく噛み噛みの彼は本当に総長なのかと疑うほど……そんな彼なのに、
「響くん、人見知り激しいんだ。響くんは情報担当と司令塔の役割なんだ。こんなんでも喧嘩の時はすごい性格が変わるから安心してね。」
そうなんだ……全く一体どんなふうに変わるのか想像つかないんだけど。
「……で、明日に向けての作戦会議だ。響、情報は出たか?」
「うん、ちょっとえいってやったら簡単に入れちゃったよ。」
ちょっとえいって…何?
よくわからないんだけど……
「ありがとう、」
その説明で受け取る陽平くんはわかってるんだろうか。慣れなのか。
「やっぱりな。白鳥組が関わってる。本職をつけるなんてどうかしてる。」
「じゃあ、本職には本職をってことでいい?俺、悠介さんに連絡する。」
本職って何?なんで悠介さんなの⁈話が全く見えないんだけど……。
だけど一つだけ引っかかることがある。それは陽平くんが言った“白鳥組”。まさかとは思うけど、白鳥組って……
「白鳥組は、陽愛ちゃんが思ってる通り。白鳥組組長の愛娘は白鳥花凛だよ。」
間違ってなかったか。やっぱりそうか。
「え⁈陽愛ちゃんは白鳥組お嬢を知ってるの⁈」
「え……それは」
県外だと噂は流れてこないのかな?私が宣戦布告してきた族の元姫ってこと。
「仁、それは後から説明するよ。それよりも組の方は悠介さんに任せて、医療チームの光冴はこの倉庫に残る人と一緒に行く人分けといて。」
「了解。今、こっちに向かってる。」
「わかった。
天陽は、もう少し情報収集よろしく。これも待機班と分けといて。
それと日和。日和は陽愛ちゃんを守って。それと同時に戦闘な。」
「うん」
「わかった!」
すごい……こんなに早く決まってくんだ………昇さんが副総長だってこと納得できる。
「あちらは、傘下含めて1万。組も入れると1万200人。
日向は、本部と合わせても5000。組も100ちょっと。
……ふっ、こんなの行けるだろ?」
え……すごい差があると思うんだけど、大丈夫なの………。
「楽勝楽勝!こんな小さな街で1番だと思ってるやつらに負ける気しないし!」
「負けるはずないじゃん。だって、仲間を裏切るようなチームに僕らは負けないよ。」
え……じゃあ、知って……?
「知ってたのか?響だけ?圭太と仁もまさか?」
「あー…俺が頼んだの。響にさ。月輝が姫を追い出した数日後にね。それに陽愛ちゃんがその元姫だってこと。だけど、俺らは噂とか信じないから現姫を徹底的に調べたんだよ」
「俺らって……調べたのは僕だよ。陽愛ちゃん、泣かないで……陽愛ちゃんのことはきっと仁が守ってくれるから。」
なんでこんなに、優しいのかな。月輝のみんなは信じてくれなかったのになんで日向の人たちは信じてくれるの?
「……って、響は守らないのかよ!」
「え?僕は間接的に守るよ。情報を整理してその上で作戦を考える。僕は僕の役割でお姫さまを守るよ。」
コントみたいな会話も私を守るために話し合ってくれてるのが本当に嬉しい……。
仲間ってこういうことなのかな。
「陽愛。まだまだこれからだよ。陽愛に教えてやるよ。仲間の絆、信頼関係ってやつを。だから、陽愛は俺らに守らせてよ。」
ぎゅっと陽平くんに抱きしめられる。それがなんだか心地いい。
「絶対、勝つよ。俺、今度は絶対に陽愛を守るから。」
「陽平、俺じゃなくて俺らだよ。」
最後はみんなで笑ってしまった。なんか、いいなぁこういうの……。
「うん、みんなありがとっ……頑張ってね」
そう言うと、みんな笑ってくれる。きっと明日は勝てるよ。だって、こんなにもここは温かいんだから。
そして、翌日の午後18時。
きっとこの世界の記憶に残るであろう戦いが始まろうとしていた━︎━︎━︎━︎━︎━︎━︎━︎━︎…。
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