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第五章
大好きな君のために。
しおりを挟むあの日から1週間。
今も悠介さんのお屋敷に住ませていただいているんだけど……ここには何故か倉庫でお会いした人が3名ほど。
そして今……。
「…陽平は出掛けたんだよ。だから今日は俺が一緒にいる。」
超無愛想。
きっと女嫌い。
「嫌なら、一緒にいなくてもいいよ……私君達のチームに入ってるわけじゃないので。」
「は?そんなことしたら、俺が怒られる。」
それはそうか。陽平くん、総長だもんね。けどさ…なんで怒られるの?
怒られる理由が分からないんだけど……?
「なんで怒られるの?」
「なんで、って……陽平の彼女だろ?」
「え……?私、彼女なのかな」
そう言うと、彼は驚いた顔をする。だってさ……
「付き合おうとか、言われてないし……お互いに気持ちを確認しただけだし。」
「は?まじかよ。」
「だから無理してここに居なくても平気。誰もこないよ」
彼は何を考え事をしているのか黙ってる。なんなのこの人……。
「…だけどさ、陽平はおまえのこと好きだよ。本気で大切なやつだと思ってる。おまえを姫にしないって言った時の衝撃は驚いたけど」
そんなことまで話していたの?
じゃあ、知ってるのかなぁ……私が元姫なんだってこと。
「知ってるよ。全部。噂なんて簡単に流れてくるもんだからな。だけどさ、俺信じてないから。」
え……
「第一にさ、噂自体が好きじゃない。噂は所詮噂。そんな誰が流したかわからないものを信用なんてできない。流されるやつはバカだな。そんなのに傷つく必要ないと思う……」
彼は私の頭をポンっと叩く。
「俺、見たことしか信じないから。それに、女嫌いじゃない。ただ、めんどくさいだけ。……陽平と同じ意見だよ、姫になりたくないならならなくていい。」
この人、根はいい人なのかな?
「それに、俺は灰崎 理玖。ちゃんと名前あるんだけど。」
「ご、ごめん。灰崎くん……」
そう言うと彼はデコピンをする。地味に痛い……
「陽愛、困ったことあれば言えよ。もうじき陽平帰ってくるよ。バイクの音が聞こえる」
すると、ドアが開いた。
「ただいま、理玖ありがとう。」
彼はニコリと笑うと灰崎くんと話をしている。
「…まだ、龍太さんダメか……?」
「あぁ……まだ」
龍太さんって誰?
「あ、灰崎くん。ごはん一緒に食べませんか?」
「……あ、うん。気持ちは嬉しいけど、陽平からの目の圧力が怖いから帰るよ。またね、陽愛。」
目の、圧力……?
「………結構、仲良くなったんだね。理玖と」
「え?少し話をしただけだよ?」
そう言うと、いつの間にか私の顔は陽平くんの胸の中に埋まっていた。
「あ、あの……どうしたの?」
彼に聞くけど、何も返ってこない……それどころか抱きしめられている手の力は増すばかりで……。
「……取られるかと思ったんだよ。」
「え……」
「陽愛だけは取られたくねぇから。」
取られたく、ない……って
それじゃあ、
「私たち、付き合ってる……の?」
「え、はっ?」
灰崎くんが言った通り、もう付き合ってたのかな?
「じゃあ、陽愛どう思ってたの……?」
「気持ちが通じた、くらいしか………。」
すると頭の上からため息が聞こえてくる。呆れられちゃったかな……
「……もう一度、もう一度だけ言うからよく聞いてろよ。2度と言わないからな。」
彼の腕が緩んで彼の顔を見る。ドアップで見ると…本当にイケメンだなぁ。
暴走族の人はイケメンしか入れないわけ?月輝もみんなイケメンだったし、灰崎くんもイケメンだし……
もう一度彼の顔を見れば、すごく真剣な目で見つめられる。彼から目が離せないっ…。
どうしよ、鼓動が鳴り止まない。
陽平くんにこの音が、聞こえたりしてないかな?
「…朝倉 陽愛さん、好きです。これからはずっと俺が守る……俺に、守らせてください。だから、俺と付き合ってください。」
すごくど直球な言葉。こんなど直球に言われたことないから身体が熱くなる。さっきよりも鼓動が早い。熱い。
「ありがとう……陽平くん。わ、私も陽平くんのことが好きです。これからもよろしくお願いします……っ」
「……これでやっと、彼氏彼女だよな?もう、“付き合ってるの?”なんて聞くなよ。」
「もう聞かないよ。ごめんね……ひゃっ」
彼の手が伸びて来て私の頬に触れる。その時2人の目線がぶつかる……なんだか、緊張感溢れている空気に包まれる。少しずつ彼との距離が近くなって唇が重なった。
「…っん…………ぁ」
初めは触れるような優しいキスだったのに、噛みつくようなキスに変わった。
一瞬だけ唇が離れたけど、また重なって口を開けられて彼の舌が入って来た…息ができない……。
「…んっ……よ、うへぃく‥ん」
やめて欲しくて彼の胸を叩くけど、彼の力が強くて離れられない……それどころか、彼の手が頭の後ろにあって逃げられない…………。
息が苦しくて、呼吸がついていかない。
息切れしてるのをバレたくなくてバレるのが恥ずかしくてなるべく分からないように下を向いた。
足がぷるぷる震えて立ってらんない。なんだかふわふわしてる気がする。
「……5分だけ、休憩する……?」
そう言った彼は私をベッドの上に座らせた。だけど鼓動は止まることなんて出来ず
………陽平くんはフッと笑って「終了」と耳元で囁いた。
すると、また触れるようなキスから始まる。お互いの息が漏れると何故かもっとしてほしいって気持ちが溢れてくる。
すると、唇が触れながらベッドの上に倒れた。
「優しくするから……」
私の頬に彼の手が優しく触れると、さっきのよりもキスが降って来た……。
陽平くんの手がさっきよりも大胆に素肌の上に滑らせる。愛おしむように目を細め、見る陽平くんに少しだけ緊張がほぐれていた……けど、急に彼の手が止まる。
「…ど、どうしたの?」
「この傷というか、…痣どうしたんだ?」
……痣?
殴られた痕かな……でも、そんなにずっと…残るかな。
「ちょっと見せて」
え……ま、待って‼︎
だけど、彼は私の服の裾をめくってしまった……。見られちゃった。
「これなんなの……どうしたの、これ。もしかしてあいつらにやられたんか?」
月輝のこと言ってるよね……でも、月輝だけじゃないからなぁ。説明が難しい…
「……陽愛、俺のいる学校来ないか?」
「え……」
陽平くんの学校……?
「俺の学校の理事長は知り合いで融通は効くと思うし、それに俺もおる。側で守れるから。」
「でも……」
「大丈夫、俺の学校日向が占めてるから安心して……」
日向…?そう言えば日向って何?
そう思って直球に聞いて見る。
そしたら、彼は一瞬固まる……。
「あれ、話してなかったっけ日向のこと。」
「うん、ただ総長ということだけ。」
まぁ、総長だというのもたまたま聞いちゃっただけなんだけど……。
彼は“総長”と言った時、一瞬だけ切なそうな顔を見せたけどすぐに戻した。
「ごめんね、話してなかったみたいで……全部説明する。」
【陽平 side】
“日向 Hyuuga”
全国にある1番と言われるほど強いチーム。喧嘩が強いことも確かで最も仲間思いだと言うのも有名な話だ……多分。
そこの1番トップ…本部と呼ばれるのが俺たちの住む地域である。
そしてその全体を指揮する総長。それが俺……まぁ仮だけどさ。
この地域に住むチームのやつは俺が通っている不良高と有名な学校に殆どが在籍してる。
「……え、そんなに有名だったの?」
「そうだよ。まだまだだなぁ俺らも」
有名だと思っていた日向を陽愛は知らなかったんだからきっとまだ知らない人いっぱいいるんだろうな。
まぁ所詮暴走族には変わりないけど。
「そっか…陽平くんはすごい人なんだね。」
すごくはない……だって俺は代わりにやってるだけなんだよ。
龍太さん……いつになったら、目覚ますんだよ。妹探さなくていいの?
妹を見つけたいから、日向を作ったって言ってましたよね?
眠ってたら、見つからないのに………
「……ん!ぉうへいくん!陽平くん!!」
「え……あ、ごめん」
「疲れてるよね……ごめんね。ご飯急いで作るから待ってて。」
キッチンに立つ彼女を見ると本当に可愛いと思う。
さっきは危なかった……キスだけのつもりがしてしまうところだった。
彼女の乱れていた息とか火照っている頬とかを見ていたら我慢出来そうになかった。
だけど良かったわ。
…本当に良かった。寸止め出来て良かった。陽愛だけは大切にしたいから。
彼女が立つキッチンに近づいて後ろから抱きしめる。彼女から香る柔軟剤の香りが俺の理性を刺激するが、ここは耐えなくては。
「どうしたの……?陽平くん?」
「ん~…抱きしめたかったから。」
ほら、可愛い顔で俺に問いかけるものだからさキスしたくなるんだ。だけど、もっともっと……って自分の中で葛藤ばかり。
「……ハンバーグ?」
「うん、陽平くん好きでしょう?」
俺が抱きしめてるというのに気にしないようにハンバーグをフライパンで焼いていて……たしかに好きだよハンバーグ。
彼女は出来たのか火を止めた。彼女が食器のほうに足を向けた一瞬を狙って正面から抱きしめる。
「あの、ハンバーグ……」
「ハンバーグは後からでいい」
そう言って彼女にまたキスをする。ダメだと思っていても離れるの嫌だからがっしり抱きしめる。
「…ん……」
彼女の吐息が俺の何かを刺激する。もう可愛すぎて、すごく触れたくなる。
俺しか見れないようにしたい。
「陽愛……」
「あ!ハンバーグ……」
……だけど、彼女は今ハンバーグのことしか見えないらしい。
【陽平side 終】
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