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朝ごはんを食べた俺たちは須野先輩の部屋に移動した。
部屋に入るといつも三浦先輩が使っている香水の匂いがして思わず二度見、ならぬ二度嗅ぎをした。芸能の仕事をしている以上お洒落などには人一倍気を使っている先輩は、匂いにも気を使っているようだ。
それでも、実は杜撰なところがある三浦先輩のベッドには、相変わらず脱ぎ捨てられた寝間着が散乱していた。須野先輩はそれらを全て拾って椅子の背もたれに掛け、「さて......」と囁いた。

「亮多、お前が急に男に告られて困惑するのは分かる。だが、瑠唯人が告白したのも相当な覚悟があってのことだ。それは分かってるな?」

「ええ、それは......」

人を好きになる、という気持ちは俺でも分かっているつもりだ。ただ、同性を好きになるという人に今まであったことがないだけ。それが、テレビなどで聞いたことはあっても現実で初めて出会ったことで、俺の中でまだ現実味を帯びていないのだった。

「だったらいいじゃねえか、お前は自分で考えて、悩んで、瑠唯人の告白に答えるんだ。分かったな?」

「は、はい……」

「瑠唯人もせっかく告ったんだ。遠慮せずどんどん自分の気持ちを伝えてけ!」

「あっ、はい!」

「よし、じゃあこれで仲直りな!」

ほら、握手しろという須野先輩の命令を聞いて渋々手を繋ぐ。
これじゃ、まるで小学生の喧嘩みたいじゃないか。
そして、別に俺は怒ってる訳じゃないし、ただ考える時間が欲しかっただけだ。

「それじゃあ、お前ら部屋戻って昼まで時間つぶしてこい。せいぜいラブラブでもしとけよー」

そんな適当な事を言う先輩に、はぁ、と大きなため息を吐いて、「そんなことしませんって!」と叫んだ。
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