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2.元傾国の悪女は、平凡な今世を熱望する
3.ザラの意思(1)
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(あぁーーーー、まずったなぁ)
広い生徒会室の中、妙に狭苦しい思いをしながら、わたしは深々とため息と吐く。
あの日から殿下は、これまで以上にわたしに絡んでくるようになった。
生徒会室内だけならまだしも、校舎でも、令嬢たちに囲まれていても、どこでもここでも声を掛けてくる。おまけに、ストーカーでもされてるんじゃないかってぐらいに粘着質だし神出鬼没。これじゃ気が休まる暇がない。鬱陶しいっていうか、正直言って困る。
『ザラ!』
普段とは違う、キラキラした笑顔で笑いかけてくる殿下を見ると、身体中がゾワゾワとむず痒い。おまけに彼との結婚を狙う貴族の令嬢方の般若みたいな表情が、前世の嫌~~な記憶を呼び起こした。
『生徒会室以外で声を掛けないで下さいとお願いしましたよね、わたし』
わたしの頭を撫でようとする殿下から距離を取りつつ、小さな声で抗議する。令嬢方の刺すような視線が痛い。早くこの場から立ち去りたくて、わたしは目を吊り上げた。
『悪いな、自分の気持ちに正直に動いたらこうなった』
なのに、殿下はそんなことを口にしつつ、耳元で笑うのだから腹立たしい。
これまで殿下は、自分から女性に声を掛けることが殆どなかった。それこそが、貴族の令嬢方が『自分にもまだ可能性はある』と思える心の拠り所だったらしい。
だから、わたしみたいな貴族ですらないただの魔女が、殿下に声を掛けられることを快く思う人間なんて一人もいなかった。
そりゃぁ周りは皆、わたしが生徒会に属していることを知っている。それが、殿下がわたしに声を掛ける唯一の理由なんだって。
けれど、それでも女性は嫉妬をする生き物らしい。憎悪の念を感じる度、寒気がした。
(ダメだ……このままじゃ前世の二の舞だ)
過去、後宮内で他の妃たちに向けられた嫉妬は、今の比ではない。
だけど、嫉妬なんて醜い感情、向けられずに過ごした方が断然幸せだ。世の中には、羨望の眼差しを快感に思う人もいるらしいけど、少なくともわたしは違う。
(殿下のクソ野郎。わたしが平凡に暮らしたいって知ってる癖に)
心の中で、とても人には聞かせられない悪態を吐きまくる。
とはいえ、本当に迷惑極まりないので、黙って我慢を続けるわけにもいかない。
エルヴィス殿下には、もう一度、わたしの望みを正しく理解してもらう必要がある。
そう思っているのだけど。
「セクハラは止めてください。訴えますよ」
「――――そんなことしたら、ザラの方が不敬扱いされるぞ」
放課後の生徒会室。
側近たちが不在なのを良いことに、殿下は今日もわたしの隣に腰掛け、頬っぺたや耳たぶを指先でそっと撫でている。まるで宝物を愛でるかのような手つき。何だか癪で、わたしは殿下の手を押しのけた。
広い生徒会室の中、妙に狭苦しい思いをしながら、わたしは深々とため息と吐く。
あの日から殿下は、これまで以上にわたしに絡んでくるようになった。
生徒会室内だけならまだしも、校舎でも、令嬢たちに囲まれていても、どこでもここでも声を掛けてくる。おまけに、ストーカーでもされてるんじゃないかってぐらいに粘着質だし神出鬼没。これじゃ気が休まる暇がない。鬱陶しいっていうか、正直言って困る。
『ザラ!』
普段とは違う、キラキラした笑顔で笑いかけてくる殿下を見ると、身体中がゾワゾワとむず痒い。おまけに彼との結婚を狙う貴族の令嬢方の般若みたいな表情が、前世の嫌~~な記憶を呼び起こした。
『生徒会室以外で声を掛けないで下さいとお願いしましたよね、わたし』
わたしの頭を撫でようとする殿下から距離を取りつつ、小さな声で抗議する。令嬢方の刺すような視線が痛い。早くこの場から立ち去りたくて、わたしは目を吊り上げた。
『悪いな、自分の気持ちに正直に動いたらこうなった』
なのに、殿下はそんなことを口にしつつ、耳元で笑うのだから腹立たしい。
これまで殿下は、自分から女性に声を掛けることが殆どなかった。それこそが、貴族の令嬢方が『自分にもまだ可能性はある』と思える心の拠り所だったらしい。
だから、わたしみたいな貴族ですらないただの魔女が、殿下に声を掛けられることを快く思う人間なんて一人もいなかった。
そりゃぁ周りは皆、わたしが生徒会に属していることを知っている。それが、殿下がわたしに声を掛ける唯一の理由なんだって。
けれど、それでも女性は嫉妬をする生き物らしい。憎悪の念を感じる度、寒気がした。
(ダメだ……このままじゃ前世の二の舞だ)
過去、後宮内で他の妃たちに向けられた嫉妬は、今の比ではない。
だけど、嫉妬なんて醜い感情、向けられずに過ごした方が断然幸せだ。世の中には、羨望の眼差しを快感に思う人もいるらしいけど、少なくともわたしは違う。
(殿下のクソ野郎。わたしが平凡に暮らしたいって知ってる癖に)
心の中で、とても人には聞かせられない悪態を吐きまくる。
とはいえ、本当に迷惑極まりないので、黙って我慢を続けるわけにもいかない。
エルヴィス殿下には、もう一度、わたしの望みを正しく理解してもらう必要がある。
そう思っているのだけど。
「セクハラは止めてください。訴えますよ」
「――――そんなことしたら、ザラの方が不敬扱いされるぞ」
放課後の生徒会室。
側近たちが不在なのを良いことに、殿下は今日もわたしの隣に腰掛け、頬っぺたや耳たぶを指先でそっと撫でている。まるで宝物を愛でるかのような手つき。何だか癪で、わたしは殿下の手を押しのけた。
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