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【3章】クララの願いと王を継ぐもの
フリードと王太子、それからジェシカ王女
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(なんだか、とてつもなく疲れた……)
クララはため息を吐きながら、肩を落とした。
騎士に連行され、既にスチュアート伯爵の姿はない。レイチェルも、自主的に父親の後に付き従った。
(レイチェル……どうなっちゃうんだろう?)
親の罪は子の罪になりうる。貴族社会なら致し方ない部分もあるが、クララにはどうにもやり切れない。
(どうか、レイチェルの罪が少しでも軽くなりますように)
クララはレイチェルの去っていった方角を見つめながら、一人そんなことを願った。
「あれ?もう全部終わっちゃったの?」
その時、背後からフリードの声がした。先程までの重々しい空気を知らぬが故の、少し間の抜けた声。苦笑交じりに振り向きながら、クララは目を見開いた。
「騒ぎになってるって言うから、急いできたのになぁ」
(えっ!?えぇっ!?)
目の前にいるフリードは、間違いなくクララの知っているフリードその人だ。
けれど彼は今、クララと同じように、女性ものの美しいドレスを身に纏っていた。優雅に裾を靡かせるその様は、あまりにも衝撃的で。クララの目が点になる。
「遅いぞ、ジェシカ」
「ホントホント。せっかく兄弟揃い踏み、ってタイミングだったのに」
(ジェシカ!?カール殿下さっき、ジェシカって言った!?)
思わぬことにクララは目を見張る。
クララの知る彼は、この国の第3王子フリード殿下。カールとヨハネスの弟であり、コーエンと血が繋がっている。
そう聞かされていたし、今日までずっと、そうだと思ってきた。
けれど、どうやら違和感を感じているのはクララただ一人らしい。行き交う騎士も、文官たちも、誰一人として驚いてはいない。フリードの格好も呼び名も、寧ろ、当たり前のこととして受け入れている様子である。
(どういうこと?)
混乱に陥っているクララの手を、コーエンがそっと握った。その目は何処か気まずげに逸らされていて、クララは眉間に皺を寄せる。
「仕方がないだろう?父上に呼び出されていたんだ。三人に大事な言伝があるんだけど」
フリードはそう言ってニコリと微笑む。
カールは不機嫌に鼻を鳴らし、ヨハネスははぁ、とため息を吐いた。
「まぁ、大体は分かるけどね。王位継承戦の結果だろう?」
「御名答。今回のことで色々と動いたからね。お察しの通りの結果だと思うけど」
「……むぅ。致し方なし、だろうな」
カール、ヨハネス、フリードの三人はそう言って、コーエンを見つめる。クララも遅れて、コーエンの方を向いた。
「おめでとう、フリード。君が次の王太子だ」
そう口にしたのは他でもない。フリード自身だった。
カールもヨハネスも、彼の言葉を異論なく受け入れている。
けれどクララは、大きく首を傾げながら、フリードを凝視した。するとフリードはニコリと微笑みながら、クララの方へ歩み寄った。
「どうしたの、クララ?そんな怖い顔しちゃって」
「……どうしたの?じゃありません。一体、どういうことなのでしょうか?」
未だコーエンはクララの手を放すことなく、けれど目を合わせようともしない。いつもは饒舌な癖に、一切口を開こうとしないのだ。
「さっき話した通りだよ。次の王太子はフリードに決まったんだ」
まるで幼子に言い聞かせをするかのように、フリードはクララの頭を優しく撫でる。仕草も口調も普段通りのフリード。けれど、格好と言っていることだけがチグハグで、クララの理解が追い付かない。
「良かったね、クララ。これでヨハネスと結婚しなくて良いし」
「それは……そうかもしれませんけど、今はそれどころじゃありません」
ヨハネスとの結婚のことなど、今はどうでも良かった。
それ以上に大切なことが目の前に横たわっている。
「殿下」
「うん」
「フリード殿下」
「ううん」
二回目のクララの呼びかけに、フリードは首を横に振った。彼の後ろでは、カールとヨハネスが何とも言えない渋い顔をしている。
「うわぁ……まさかとは思っていたけど」
「俺もだ。何かがおかしいとは思っていた。しかし、またなんとも……」
ヨハネスは扇で口元を隠しているが、口の端が引き攣っているし。カールは腕組みをし、眉間に皺を寄せて大きく首を傾げている。
クララは何やら眩暈がしてきた。
「つい先程まで――――この広間に来るまでは、フリード殿下とそうお呼びして、お返事をしてもらえていましたよね?」
クララは今や、混乱で涙目になっていた。
「うん、そうだね。だけど、ボクがフリードでいるのはここまで。今までごめんね」
困ったように笑いながら、フリードは首を傾げる。
次にどんな話が飛び出すのか、想像しては震えてしまうし、きつく繋がれたコーエンの手を振り払いたくなる。けれど、コーエンの手のひらは熱く、触れたところから緊張が伝わってくるかのようだった。
「改めて自己紹介を。ボクはジェシカ。この国の王女だよ」
フリード、改めジェシカはそう言って、恭しく膝を折る。
その瞬間、クララの心臓がドクンと大きく跳ねた。
「ジェシカ王女……?」
クララは当然、その名を知っている。
国王と皇后の唯一の子で、三人の王子たちの妹。
そして、コーエンを王太子にできる人――――。彼の想い人だと、そう思っていた。
「そう、それがボクの本当の名だよ」
ジェシカは目を細めて笑うと、クララを真っ直ぐに見つめた。
「ボクはね、この王位継承戦のオブザーバー役を仰せつかっていたんだ。兄たちの側にいて、彼等を見守ること、それから王位を継ぐ気のないフリードを、この継承戦に最後まで参加させること、それがボクの仕事だった」
次々に明かされていく真実。けれど、ジェシカはまだ、一番重要なことをクララに教えてくれていない。
「だけど、でも…………それじゃあフリード殿下は――――」
クララがフリード殿下だと思っていた人は、実はジェシカ王女だった。
そして、ジェシカはフリードを側近くで監視する役割を担っていた。この、王位継承戦に参加させるために。そうして今、フリードは次の王太子に指名された。
(まさか……まさか…………)
「フリードはそこにいるよ」
ジェシカはそう言って朗らかに笑った。
「ずっとずっと、クララの隣にいたんだよ」
手のひらがじんじん疼く。目頭が熱くてたまらない。
「クララ――――」
ようやくコーエンが口を開いたその時だった。
クララはコーエンの手を勢いよく振り払うと、全速力で広間を駆け出していた。
クララはため息を吐きながら、肩を落とした。
騎士に連行され、既にスチュアート伯爵の姿はない。レイチェルも、自主的に父親の後に付き従った。
(レイチェル……どうなっちゃうんだろう?)
親の罪は子の罪になりうる。貴族社会なら致し方ない部分もあるが、クララにはどうにもやり切れない。
(どうか、レイチェルの罪が少しでも軽くなりますように)
クララはレイチェルの去っていった方角を見つめながら、一人そんなことを願った。
「あれ?もう全部終わっちゃったの?」
その時、背後からフリードの声がした。先程までの重々しい空気を知らぬが故の、少し間の抜けた声。苦笑交じりに振り向きながら、クララは目を見開いた。
「騒ぎになってるって言うから、急いできたのになぁ」
(えっ!?えぇっ!?)
目の前にいるフリードは、間違いなくクララの知っているフリードその人だ。
けれど彼は今、クララと同じように、女性ものの美しいドレスを身に纏っていた。優雅に裾を靡かせるその様は、あまりにも衝撃的で。クララの目が点になる。
「遅いぞ、ジェシカ」
「ホントホント。せっかく兄弟揃い踏み、ってタイミングだったのに」
(ジェシカ!?カール殿下さっき、ジェシカって言った!?)
思わぬことにクララは目を見張る。
クララの知る彼は、この国の第3王子フリード殿下。カールとヨハネスの弟であり、コーエンと血が繋がっている。
そう聞かされていたし、今日までずっと、そうだと思ってきた。
けれど、どうやら違和感を感じているのはクララただ一人らしい。行き交う騎士も、文官たちも、誰一人として驚いてはいない。フリードの格好も呼び名も、寧ろ、当たり前のこととして受け入れている様子である。
(どういうこと?)
混乱に陥っているクララの手を、コーエンがそっと握った。その目は何処か気まずげに逸らされていて、クララは眉間に皺を寄せる。
「仕方がないだろう?父上に呼び出されていたんだ。三人に大事な言伝があるんだけど」
フリードはそう言ってニコリと微笑む。
カールは不機嫌に鼻を鳴らし、ヨハネスははぁ、とため息を吐いた。
「まぁ、大体は分かるけどね。王位継承戦の結果だろう?」
「御名答。今回のことで色々と動いたからね。お察しの通りの結果だと思うけど」
「……むぅ。致し方なし、だろうな」
カール、ヨハネス、フリードの三人はそう言って、コーエンを見つめる。クララも遅れて、コーエンの方を向いた。
「おめでとう、フリード。君が次の王太子だ」
そう口にしたのは他でもない。フリード自身だった。
カールもヨハネスも、彼の言葉を異論なく受け入れている。
けれどクララは、大きく首を傾げながら、フリードを凝視した。するとフリードはニコリと微笑みながら、クララの方へ歩み寄った。
「どうしたの、クララ?そんな怖い顔しちゃって」
「……どうしたの?じゃありません。一体、どういうことなのでしょうか?」
未だコーエンはクララの手を放すことなく、けれど目を合わせようともしない。いつもは饒舌な癖に、一切口を開こうとしないのだ。
「さっき話した通りだよ。次の王太子はフリードに決まったんだ」
まるで幼子に言い聞かせをするかのように、フリードはクララの頭を優しく撫でる。仕草も口調も普段通りのフリード。けれど、格好と言っていることだけがチグハグで、クララの理解が追い付かない。
「良かったね、クララ。これでヨハネスと結婚しなくて良いし」
「それは……そうかもしれませんけど、今はそれどころじゃありません」
ヨハネスとの結婚のことなど、今はどうでも良かった。
それ以上に大切なことが目の前に横たわっている。
「殿下」
「うん」
「フリード殿下」
「ううん」
二回目のクララの呼びかけに、フリードは首を横に振った。彼の後ろでは、カールとヨハネスが何とも言えない渋い顔をしている。
「うわぁ……まさかとは思っていたけど」
「俺もだ。何かがおかしいとは思っていた。しかし、またなんとも……」
ヨハネスは扇で口元を隠しているが、口の端が引き攣っているし。カールは腕組みをし、眉間に皺を寄せて大きく首を傾げている。
クララは何やら眩暈がしてきた。
「つい先程まで――――この広間に来るまでは、フリード殿下とそうお呼びして、お返事をしてもらえていましたよね?」
クララは今や、混乱で涙目になっていた。
「うん、そうだね。だけど、ボクがフリードでいるのはここまで。今までごめんね」
困ったように笑いながら、フリードは首を傾げる。
次にどんな話が飛び出すのか、想像しては震えてしまうし、きつく繋がれたコーエンの手を振り払いたくなる。けれど、コーエンの手のひらは熱く、触れたところから緊張が伝わってくるかのようだった。
「改めて自己紹介を。ボクはジェシカ。この国の王女だよ」
フリード、改めジェシカはそう言って、恭しく膝を折る。
その瞬間、クララの心臓がドクンと大きく跳ねた。
「ジェシカ王女……?」
クララは当然、その名を知っている。
国王と皇后の唯一の子で、三人の王子たちの妹。
そして、コーエンを王太子にできる人――――。彼の想い人だと、そう思っていた。
「そう、それがボクの本当の名だよ」
ジェシカは目を細めて笑うと、クララを真っ直ぐに見つめた。
「ボクはね、この王位継承戦のオブザーバー役を仰せつかっていたんだ。兄たちの側にいて、彼等を見守ること、それから王位を継ぐ気のないフリードを、この継承戦に最後まで参加させること、それがボクの仕事だった」
次々に明かされていく真実。けれど、ジェシカはまだ、一番重要なことをクララに教えてくれていない。
「だけど、でも…………それじゃあフリード殿下は――――」
クララがフリード殿下だと思っていた人は、実はジェシカ王女だった。
そして、ジェシカはフリードを側近くで監視する役割を担っていた。この、王位継承戦に参加させるために。そうして今、フリードは次の王太子に指名された。
(まさか……まさか…………)
「フリードはそこにいるよ」
ジェシカはそう言って朗らかに笑った。
「ずっとずっと、クララの隣にいたんだよ」
手のひらがじんじん疼く。目頭が熱くてたまらない。
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