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【2章】婿選び編

実はわたし、お姫様でした!

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 その日、宮殿の空気は凛と張り詰めていた。

 鳴り響くファンファーレ。真紅色をしたベルベットのケープをドレスを着た美しい女官達が持ち、扉が開くその時を、固唾を飲んで待っている。


 わたしは今日、王太女に即位する。


 ゆっくりと、大きく深呼吸をし、目配せを一つ。


「参りましょう」


 女官たちを振り返れば、「はい!」と答えが返ってくる。
 それを合図に、広間へ続く扉が開いた。


 ずらりと並んだ参列者達。
 視線が一斉に集まる。


 ここまでに尽力してくれた、たくさんの人々の顔を思い浮かべつつ、わたしはおじいちゃんの元へと向かう。


 おじいちゃんは眩しげに瞳を細め、わたしのことを待っていた。目尻がほんの少しだけ光った気がして、わたしは内心微笑みを浮かべる。

 厳格で誇り高く、冷徹な国王。
 けれど、おじいちゃんだって本当は、誰にも見せられない弱さや迷いを抱えている。
 これからはわたしが隣に立って、おじいちゃんを支えていかなきゃいけない。


 胸元にはお父さん――クラウス殿下がゼルリダ様に贈った大事な宝石が輝く。
 わたしは二人の優しさに支えられ、幸せな日々を過ごすことができた。貴族や王族のしがらみから逃れ、伸び伸びと。
 普通の女の子として生きることができた。


 今度はわたしが、誰かの幸せを守る番。
 最前列で涙を流す、お父さんとお母さんに向かってそっと微笑む。


 広間の中央にたどり着くと、わたしは人々の方を向いた。
 厳かな雰囲気の中、おじいちゃんはわたしが王太女となる旨を宣言し、聖職者が祝の言葉を述べる。

 聖女シルビアが新たな王太女の即位を祝福し、広間がキラキラと光り輝く。
 歓喜の歌声に、響き渡る祝砲。


 おじいちゃんからティアラを授けられ、わたしは参列者達へと向き直る。
 湧き上がる拍手と喝采。
 目を瞑れば、今この場には居ない、我が国に暮らす数千万人もの人々が目に浮かぶようだった。

 もう一度大きく息を吸い、前を見据える。そうしてわたしは、一人ひとりに向けて語り掛けた。


「つい数ヶ月前に知ったことなのですが――――実はわたし、お姫様でした」


 それは、姫君のスピーチにはふさわしくない出だし。
 けれど、物凄くわたしらしい。おじいちゃんやアダルフォ、ゼルリダ様すらも目元を和らげるのが目に入り、わたしはそっと微笑む。


「わたしには父が二人、母が三人おります。

一人目の母は、わたしを命がけで産んでくれました。今わたしが存在するのは、一人目の母のおかげです。

二人目の母と一人目の父は、わたしが自分を姫君だと知るまでの間、平民として大事に育て、慈しんでくれました。幸せとは何なのか、家族とはどういうものか、愛情を教えてくれたのもこの二人でした。

そして、二人目の父は先日亡くなったクラウス殿下です。彼はわたしが一人の女の子として幸せに生きられるよう、育ての父母へと託してくれました。王太子として豊かで平和な国を作り、わたしやこの国の人々を幸せへと導いてくれました。

三人目の母は、王太子妃であるゼルリダ殿下です。彼女もまた、わたしが普通の女の子として幸せに生きられるよう、心を砕いてくれました。今は、王族としてどうあるべきか、わたしを導いてくれています。


わたしが今、こうしてここに居られるのは、二人の父、三人の母のおかげです。彼等の愛情のおかげです。心からの感謝と敬意を父母に捧げたいと思います。


さて、わたしは今ここで、王太女になりました。

この国はわたしにとっての家族そのもの。

わたしはこれから王太女として、父となり母となり、人々の幸せを守っていきたい――――それがわたしに課せられた使命だと思っております。
父母がそうしてくれたように、たくさんの愛情を胸に、一歩一歩、歩んでゆくことをここに誓います

王太女 ライラ」


 大きく息を吸い前を向く。
 その瞬間、広間をビリビリと痺れるような大歓声が轟いた。

 湧き上がる拍手。人々がわたしの名前を呼ぶ。
 込み上げる感情を胸に、傍らに跪くランハートを見遣る。


「お供しますよ」


 彼の唇がそんな風に動くのを見ながら、わたしはしっかりと胸を張る。


 わたしはライラ。
 この国の王太女です!
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みんなの感想(6件)

うしいとマム

こんばんわ

端的に言わせてください
この作品とても好きです

女の子が前を向いて生き生きと過ごす作品を
好んでよく読みます

〜っライラが!!
苦悩とけど周りの人の思いと
自分の状況と恋心総てを持って
王太女になっていく
この格好よさに惚れ惚れしました

とても素敵な作品をありがとうございます

鈴宮(すずみや)
2023.11.03 鈴宮(すずみや)

感想をありがとうございます。
ライラは私にとってもお気に入りの作品の一つでして、見つけて&気に入っていただけてとても嬉しいです…!
私自身、頑張る女の子の作品が大好きで、ライラを取り巻く人間関係等々、書いていてとても楽しかったのを覚えています。楽しんでいただけたら光栄です。
改めまして、ありがとうございました。

解除
おゆう
2022.10.11 おゆう
ネタバレ含む
鈴宮(すずみや)
2022.10.11 鈴宮(すずみや)

感想をありがとうございます。
書き始めた当初は全く違う結末を予定していたので、私自身驚いていたりします...!
楽しんでいただけたなら幸いです。

解除
June
2022.07.13 June

うーん分からなくなって来ました。

解除

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