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嫉妬、妬み、怒り、恨み、焦燥。
誰もが持つそんな感情が、まさか自分から欠如していたなんて。
『好きじゃなくてもいいから』
『他に相手がいてもいいから』
付き合った相手やパートナーから、幾度となく言われてきたその言葉。
『ちゃんと好きだよ?』
『君だけだよ?』
俺がにっこり笑って言ってみせても、相手はいつだって悲しげな表情しか見せてはくれなかった。それがどうしてなのか、自分の何が悪いのか、分からぬまま結局別れの瞬間は訪れる。
『やっぱり、耐えられなかった』
『うん、そっか。仕方ないね』
告げられた別れの言葉に笑って返せば、今度こそ相手は泣いて見せるのだ。
黙って泣くくらいなら、不満を言えばいいのに。そうは思っても、別れたいと泣いた相手を引き止めてまで、理由を聞き出す気にはならなかった。今思えば、面倒だったのかもしれない。
泣いて縋る相手を無様だと思うことはあっても、そうしてまで手放したくないと思える恋をしたことがなかった。
だけどそんな自分こそ、酷く退屈で寂しい道を歩いていたんだと…俺はあの日あの時、彼に出逢ってから嫌というほど思い知ることになる。
◇
「清宮くん、頼みがあるんだけどさ……」
偶然の出来事だった。あまり引き受けることのない、自分の存在を餌に使った飲み会への誘い。それを、気まぐれに受け入れた。
「いいよ」
相手が安堵の表情を浮かべても何も感じない。ただこの時は、日常がスムーズに進めばそれで良かった。そんな俺にとってはちっぽけな選択が、その後の運命を大きく変えてしまうことになった。
思った以上に人の集まった飲み会は、案外楽しかった。
男も女も、必死で俺の意識を自分に向けようとするその様が、まるでムキになっている幼い子どものようで可愛く思えた。だがそれでも、ドムやサブが居ないこの場は少々味気ない。
適当に笑顔を浮かべ、愛想を振りまく。そうして無意識に撒いた餌に獲物が食いつくのも時間の問題だが、その獲物に深く興味を持てるかどうかが大きな課題だった。
〝普通の人〟ほど深みのないものはない。それなりに楽しむことはできるが、直ぐに飽きてしまう。
痛みが快楽に変わる瞬間を知っている人間の、あの甘美な眼差し。それが俺の心を楽しませてくれるのだ。
飲み会を楽しむことはできたが、今日参加したのはある意味失敗だったかもしれない。興味を持たれても、期待されるものを返してやることができないから。
何杯目か分からなくなった酒のグラスを手に握ったところで、漸くタイミングを掴んだとでもいうように一人の青年が前のめりに声をかけてきた。
「なぁなぁ、清宮くん。ドムの必殺技使えるって、マジなの?」
「……必殺技?」
何それ、と一瞬首を傾げるが思い当たるモノが一つ。
「ああ、〝switch〟のこと?」
そう口に出して言えば、青年は大きく目を見開き期待に瞳を輝かせた。
「え、やっぱりあの噂ってマジなの!?」
「それってどんなドムでも相手にできんの!?」
待ってましたと言わんばかりに、別の青年が混じってきた。周りの学生たちも、みんな食い入るようにこっちを見ている。
「うん、まぁ……少しでも素質があればイケると思うよ」
「マジかよ! 俺たちその噂聞いてたからさ、今日やってみて欲しい奴連れてきたんだよ!」
「ぜひ今から実践して見せて欲しいんだけど、どう!?」
「うーん、俺にも一応好みがあるんだけどなぁ。どんな子ぉ?」
「アイツ! 伊沢っていうんだけど」
遠くでひとり、退屈そうに座っている青年を指さした。俺の席からは遠く、彼がこの飲み会に居たことを今、知る。
「見た目はちょっとアレだから、清宮君には悪いんだけどさ。伊沢、マジでドムの風上にも置けない様なクズでさ。お仕置き的な感じでどう?」
「……ふぅん」
突然自分に視線が集まったことに驚いたのか、その青年は訝しげにこちらを見返した。そうして彼と目があった瞬間、心臓がドクンと脈打った。
「どうかな、やっぱコイツじゃ食指動かない?」
まさか、そんな。
「……ううん、寧ろそそられた」
何故この場にいるのだろうかと不思議に思うくらい、不満そうな、卑屈そうな、退屈で退屈で仕方がないといった表情。如何にもサブ性を見下し相手を傷つけていそうな、典型的なドムのなり損ないタイプ。
俺が思わず口元を吊り上げると、遠くからこちらを見ていた青年は何かを感じ取ったのか、突然立ち上がり逃げを打った。だが、それを見越していた周りの人間にあっと言う間に取り押さえられ、後ろから羽交い絞めにされる。
「ンだよっ、離せよ!」
動けなくなった彼の前に立ち、まだ訳がわからないとばかりに俺を睨みつける彼に名前を告げた。少しして、彼の頭の中で何かが繋がったのか顔色が変わる。
「嫌だ!」
一瞬にして敵意の滲んでいた瞳に怯えが広がった。……俺は、君のその顔が見たかったんだ。
「俺、何か君のこと気に入っちゃったんだよね。…涙が枯れるまで滅茶苦茶に泣かせて、その後たぁ~っくさん可愛がってあげたいなぁ。ねぇ、ダメ?」
彼の返事など有って無いようなもの。俺は未だ嘗てないほど本気で、その目に力を込めた。
相手の意志を無視してまで、プレイの為にスイッチを使ったことなどなかった。なのに…今はなり振り構わず力を使おうとしている。どうしても、目の前の彼だけは逃がしたくなかった。
欲しいと思った。
今までに見たことのない、心底俺を毛嫌いしているといった顔を向ける、その青年が。
─── Kneel
瞳の奥が燃えるように熱くなる。熱の下りた喉で紡がれた絶対的な命令は、本来ドムであるはずの彼を簡単に跪かせた。
「ひっ、あ……う!?」
「スイッチかけられるのは初めてかなぁ」
「あぁ……ぁ……あぅっ」
「ん、初めてだね。嬉しいよ、君に出逢えて」
「やぁ……やらぁ……」
彼の言葉が舌っ足らずになったのを見て、周りが嘲りの声をあげた。それだけで、どれだけ彼が周りの人間に疎まれているのか窺い知れた。それがまた、俺の独占欲に火を点ける。
君たちは、彼の秘められた魅力をきっと知らない。
「伊沢くん、だったよね? 抵抗するの、苦しいでしょう。今きみは、ドムではなくサブだからね。抵抗すればする程苦しくなるし、言う事をきけばきくほど、気持ちよくなれるんだよ」
「うっうぅ……」
「俺の手に、キスできる?」
伊沢くんが俺を。差し出した手を、苦しげに、憎らしげに見上げる。
「できる? 楽になりたいんでしょう?」
「ひっ、う……く……」
床に倒れ込んでいる伊沢くんが、四つん這いになり俺の足に顔をゆっくりと近づけた。
「伊沢くん……?」
差し出された手を無視して、足の甲へと口付ける。
「んっ……ふ……ん、」
靴下が邪魔なのか、彼は布に思い切り噛み付いた。辛そうにしながらも俺の足から靴下を咥えて剥ぎ取る彼に、周りは息を呑んだ。
「うっ」
「まだ苦しい? そうだよね、だって俺は〝手にキスをしろ〟と言ったんだ」
俺を、潤んだ眼差しで見上げる。見上げながら、真っ赤に染まった舌で俺の足を舐め上げた。
「は……」
思わず吐息が零れた。
この俺にスイッチを強くかけられたというのに、きっと凄く苦しいはずなのに、それでもまだ反抗しようとする強情な青年。
「可愛い……」
呟くのと、彼がどさりと躰を床に投げ出したのは同時だった。
「伊沢くん、聞こえる? こんなにも俺に逆らって頑張る子、初めて見たよ。凄く凄く、気持ち良かった。そのご褒美をあげるから、俺の手にキスをして?」
荒い呼吸を繰り返し倒れ込んでいる彼が、一度だけぎゅっと瞼を閉じた。そうして開いた瞳は降参をかかげ、差し出された俺の手にそっと口付けた。周りが、わっと湧いた瞬間だった。だけど、ノーマルな奴らがその異様さに気づくのに、それ程時間はかからなかった。
「伊沢くん。足、指まで全部舐めて」
「えっ、」
驚いた声を上げたのは伊沢くんじゃない。俺たちの周りを囲む学生たちだった。
「できるでしょ? 指と指の間まで、きちんと全部綺麗に舐めるの。ご褒美はその後だよ」
「ぃ……ぃや……ぁ」
「なぁに? 言うこときけないの? 悪い子だなぁ、君は。さっきも君は、手だって言ったのに足にキスしたね。悪い子にはお仕置きが待ってるけど、良いの? ねぇ」
「ひあっ!」
唾液に濡れた足を、彼の股間に強く押し付ける。加減なく踏み込んでやれば、伊沢くんは涙を流し許しを乞うた。
「ごめっ……なさ……ひっ、やだ……ぃた」
「悪いと思ったのなら、ちゃんと言うこときいて?」
「はっ……はひ……」
自分の股間から戻された俺の足に、伊沢くんがもう一度舌を這わせた。泣きながら、そして時折足に噛み付きながら、だけど。
「あはは、噛み付いた! かぁわいいなぁ~!」
「き、清宮くん……あの、」
「ねぇ、この子貰ってってもいい?」
「え? あ……うん、えっと」
「やったー!! 今日は誘ってくれてありがとね? お陰で最高の宝物が手に入ったよ」
強いスイッチをかけられ、泣きながら俺の足を舐める伊沢くんの腕を掴み立ち上がらせる。
「はい、じゃあ伊沢くん。お仕置きとご褒美は俺のお家でねぇ。みんなにバイバイしよっか?」
「あぅ……う……さよう……なら」
苦しげにぺこりと頭を下げた彼を見て、笑うことができる奴はもういなかった。
誰もが持つそんな感情が、まさか自分から欠如していたなんて。
『好きじゃなくてもいいから』
『他に相手がいてもいいから』
付き合った相手やパートナーから、幾度となく言われてきたその言葉。
『ちゃんと好きだよ?』
『君だけだよ?』
俺がにっこり笑って言ってみせても、相手はいつだって悲しげな表情しか見せてはくれなかった。それがどうしてなのか、自分の何が悪いのか、分からぬまま結局別れの瞬間は訪れる。
『やっぱり、耐えられなかった』
『うん、そっか。仕方ないね』
告げられた別れの言葉に笑って返せば、今度こそ相手は泣いて見せるのだ。
黙って泣くくらいなら、不満を言えばいいのに。そうは思っても、別れたいと泣いた相手を引き止めてまで、理由を聞き出す気にはならなかった。今思えば、面倒だったのかもしれない。
泣いて縋る相手を無様だと思うことはあっても、そうしてまで手放したくないと思える恋をしたことがなかった。
だけどそんな自分こそ、酷く退屈で寂しい道を歩いていたんだと…俺はあの日あの時、彼に出逢ってから嫌というほど思い知ることになる。
◇
「清宮くん、頼みがあるんだけどさ……」
偶然の出来事だった。あまり引き受けることのない、自分の存在を餌に使った飲み会への誘い。それを、気まぐれに受け入れた。
「いいよ」
相手が安堵の表情を浮かべても何も感じない。ただこの時は、日常がスムーズに進めばそれで良かった。そんな俺にとってはちっぽけな選択が、その後の運命を大きく変えてしまうことになった。
思った以上に人の集まった飲み会は、案外楽しかった。
男も女も、必死で俺の意識を自分に向けようとするその様が、まるでムキになっている幼い子どものようで可愛く思えた。だがそれでも、ドムやサブが居ないこの場は少々味気ない。
適当に笑顔を浮かべ、愛想を振りまく。そうして無意識に撒いた餌に獲物が食いつくのも時間の問題だが、その獲物に深く興味を持てるかどうかが大きな課題だった。
〝普通の人〟ほど深みのないものはない。それなりに楽しむことはできるが、直ぐに飽きてしまう。
痛みが快楽に変わる瞬間を知っている人間の、あの甘美な眼差し。それが俺の心を楽しませてくれるのだ。
飲み会を楽しむことはできたが、今日参加したのはある意味失敗だったかもしれない。興味を持たれても、期待されるものを返してやることができないから。
何杯目か分からなくなった酒のグラスを手に握ったところで、漸くタイミングを掴んだとでもいうように一人の青年が前のめりに声をかけてきた。
「なぁなぁ、清宮くん。ドムの必殺技使えるって、マジなの?」
「……必殺技?」
何それ、と一瞬首を傾げるが思い当たるモノが一つ。
「ああ、〝switch〟のこと?」
そう口に出して言えば、青年は大きく目を見開き期待に瞳を輝かせた。
「え、やっぱりあの噂ってマジなの!?」
「それってどんなドムでも相手にできんの!?」
待ってましたと言わんばかりに、別の青年が混じってきた。周りの学生たちも、みんな食い入るようにこっちを見ている。
「うん、まぁ……少しでも素質があればイケると思うよ」
「マジかよ! 俺たちその噂聞いてたからさ、今日やってみて欲しい奴連れてきたんだよ!」
「ぜひ今から実践して見せて欲しいんだけど、どう!?」
「うーん、俺にも一応好みがあるんだけどなぁ。どんな子ぉ?」
「アイツ! 伊沢っていうんだけど」
遠くでひとり、退屈そうに座っている青年を指さした。俺の席からは遠く、彼がこの飲み会に居たことを今、知る。
「見た目はちょっとアレだから、清宮君には悪いんだけどさ。伊沢、マジでドムの風上にも置けない様なクズでさ。お仕置き的な感じでどう?」
「……ふぅん」
突然自分に視線が集まったことに驚いたのか、その青年は訝しげにこちらを見返した。そうして彼と目があった瞬間、心臓がドクンと脈打った。
「どうかな、やっぱコイツじゃ食指動かない?」
まさか、そんな。
「……ううん、寧ろそそられた」
何故この場にいるのだろうかと不思議に思うくらい、不満そうな、卑屈そうな、退屈で退屈で仕方がないといった表情。如何にもサブ性を見下し相手を傷つけていそうな、典型的なドムのなり損ないタイプ。
俺が思わず口元を吊り上げると、遠くからこちらを見ていた青年は何かを感じ取ったのか、突然立ち上がり逃げを打った。だが、それを見越していた周りの人間にあっと言う間に取り押さえられ、後ろから羽交い絞めにされる。
「ンだよっ、離せよ!」
動けなくなった彼の前に立ち、まだ訳がわからないとばかりに俺を睨みつける彼に名前を告げた。少しして、彼の頭の中で何かが繋がったのか顔色が変わる。
「嫌だ!」
一瞬にして敵意の滲んでいた瞳に怯えが広がった。……俺は、君のその顔が見たかったんだ。
「俺、何か君のこと気に入っちゃったんだよね。…涙が枯れるまで滅茶苦茶に泣かせて、その後たぁ~っくさん可愛がってあげたいなぁ。ねぇ、ダメ?」
彼の返事など有って無いようなもの。俺は未だ嘗てないほど本気で、その目に力を込めた。
相手の意志を無視してまで、プレイの為にスイッチを使ったことなどなかった。なのに…今はなり振り構わず力を使おうとしている。どうしても、目の前の彼だけは逃がしたくなかった。
欲しいと思った。
今までに見たことのない、心底俺を毛嫌いしているといった顔を向ける、その青年が。
─── Kneel
瞳の奥が燃えるように熱くなる。熱の下りた喉で紡がれた絶対的な命令は、本来ドムであるはずの彼を簡単に跪かせた。
「ひっ、あ……う!?」
「スイッチかけられるのは初めてかなぁ」
「あぁ……ぁ……あぅっ」
「ん、初めてだね。嬉しいよ、君に出逢えて」
「やぁ……やらぁ……」
彼の言葉が舌っ足らずになったのを見て、周りが嘲りの声をあげた。それだけで、どれだけ彼が周りの人間に疎まれているのか窺い知れた。それがまた、俺の独占欲に火を点ける。
君たちは、彼の秘められた魅力をきっと知らない。
「伊沢くん、だったよね? 抵抗するの、苦しいでしょう。今きみは、ドムではなくサブだからね。抵抗すればする程苦しくなるし、言う事をきけばきくほど、気持ちよくなれるんだよ」
「うっうぅ……」
「俺の手に、キスできる?」
伊沢くんが俺を。差し出した手を、苦しげに、憎らしげに見上げる。
「できる? 楽になりたいんでしょう?」
「ひっ、う……く……」
床に倒れ込んでいる伊沢くんが、四つん這いになり俺の足に顔をゆっくりと近づけた。
「伊沢くん……?」
差し出された手を無視して、足の甲へと口付ける。
「んっ……ふ……ん、」
靴下が邪魔なのか、彼は布に思い切り噛み付いた。辛そうにしながらも俺の足から靴下を咥えて剥ぎ取る彼に、周りは息を呑んだ。
「うっ」
「まだ苦しい? そうだよね、だって俺は〝手にキスをしろ〟と言ったんだ」
俺を、潤んだ眼差しで見上げる。見上げながら、真っ赤に染まった舌で俺の足を舐め上げた。
「は……」
思わず吐息が零れた。
この俺にスイッチを強くかけられたというのに、きっと凄く苦しいはずなのに、それでもまだ反抗しようとする強情な青年。
「可愛い……」
呟くのと、彼がどさりと躰を床に投げ出したのは同時だった。
「伊沢くん、聞こえる? こんなにも俺に逆らって頑張る子、初めて見たよ。凄く凄く、気持ち良かった。そのご褒美をあげるから、俺の手にキスをして?」
荒い呼吸を繰り返し倒れ込んでいる彼が、一度だけぎゅっと瞼を閉じた。そうして開いた瞳は降参をかかげ、差し出された俺の手にそっと口付けた。周りが、わっと湧いた瞬間だった。だけど、ノーマルな奴らがその異様さに気づくのに、それ程時間はかからなかった。
「伊沢くん。足、指まで全部舐めて」
「えっ、」
驚いた声を上げたのは伊沢くんじゃない。俺たちの周りを囲む学生たちだった。
「できるでしょ? 指と指の間まで、きちんと全部綺麗に舐めるの。ご褒美はその後だよ」
「ぃ……ぃや……ぁ」
「なぁに? 言うこときけないの? 悪い子だなぁ、君は。さっきも君は、手だって言ったのに足にキスしたね。悪い子にはお仕置きが待ってるけど、良いの? ねぇ」
「ひあっ!」
唾液に濡れた足を、彼の股間に強く押し付ける。加減なく踏み込んでやれば、伊沢くんは涙を流し許しを乞うた。
「ごめっ……なさ……ひっ、やだ……ぃた」
「悪いと思ったのなら、ちゃんと言うこときいて?」
「はっ……はひ……」
自分の股間から戻された俺の足に、伊沢くんがもう一度舌を這わせた。泣きながら、そして時折足に噛み付きながら、だけど。
「あはは、噛み付いた! かぁわいいなぁ~!」
「き、清宮くん……あの、」
「ねぇ、この子貰ってってもいい?」
「え? あ……うん、えっと」
「やったー!! 今日は誘ってくれてありがとね? お陰で最高の宝物が手に入ったよ」
強いスイッチをかけられ、泣きながら俺の足を舐める伊沢くんの腕を掴み立ち上がらせる。
「はい、じゃあ伊沢くん。お仕置きとご褒美は俺のお家でねぇ。みんなにバイバイしよっか?」
「あぅ……う……さよう……なら」
苦しげにぺこりと頭を下げた彼を見て、笑うことができる奴はもういなかった。
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