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第3章
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もう何度、こうして清宮の足元に膝をついたか分からない。けれどこんな人前でswitchをかけられるのは、こいつと出逢ったあの飲み会以来のことだった。
いつもよりswitchが軽い。頭の中はグルグルと回っているのに、意識はしっかりしていて周りの状況が良く分かる。
「伊沢くん、おすわりして」
「な……なんで……こんな」
「お す わ り」
Kneelではなく、使われた言葉は〝おすわり〟。
まるでペットに命令する様に言い放った清宮からは、いつのも熱が伝わってこない。本能的な恐怖を感じた俺の躰は、屈辱的な言葉を、それでも従順に受け入れた。
女のようにぺたりと座り込んだ俺を、清宮が見下ろす。
「ねぇ、ここがどこだか分かってる?」
「………」
「ゲイバーだよ」
えっ、と篠原を見れば奴は俺からサッと目を逸らす。
「こんな所にノコノコと、そんな奴について来ちゃって」
「で……も、そいつは……」
幾ら軽くたって、switchをかけられた状態で普通に話すのはキツイ。躰は清宮の命令を今か今かと待ち侘びて、言いなりになったその先で与えられる快楽を期待している。けど、そんな躰の思うままに動くわけにはいかなかった。
ハァハァと荒い息を吐きながら、それでも自分の意志を持とうと踏ん張る。それが、switchを軽くかけた清宮の意志でもあるからだ。
「そいつ……は……おまえの」
「ハジメは俺の従兄弟。何でもかんでも俺の物を欲しがるクズ」
「……もと……パートナーじゃ、ねぇの……?」
「伊沢くんは本当に鼻が利かないね。そこが可愛いんだけど、今は心底憎たらしい。…ハジメはDomでもSubでもない、ただのゲイだよ」
「え……? でも……でも首輪……カギ……」
ぽかんと清宮を見上げた俺を、奴は鼻で笑った。
「こいつの家はD/S専用の首輪を作ってんの。ハジメは鍵担当。だからコレだって簡単に外せる。ハジメに唆されたんでしょ? 首輪、外してあげるって」
無意識に俺の目が泳ぐ。そんな俺に向ける目を鋭くした清宮は、乱暴に首輪を引っ張り俺を吊り上げた。
「そんなに外したいなら、お望み通り外してあげる。もう、必要ないもんね」
「なっ、や……!」
咄嗟に抵抗していた。けれど、あれだけ苦労しても外せなかった首輪の鍵は清宮の手によってあっけなく開錠された。漆黒の首輪が、俺の首からズルリと滑り落ちる。
鈍い音を立てて床に落ちた首輪。俺はそれを目で追って……思わず、手を伸ばして……。
「……ッ!」
あと少しで手が届くその場所で、俺は清宮に手を甲から踏みつけられた。
「そんな物、拾ってどうするの」
「あ……」
だって…だってそれは…俺が、特別だって証で。俺が、お前の唯一だって証で…。それが外れてしまったら、俺は…俺は…。
「や……やだ……いや……だ」
「何が? ずっと外したかったんでしょう? やっと外せて良かったじゃない、喜んでよ」
踏まれた手の痛みなんて感じなかった。それよりも、首輪が外れたことによる虚無感と喪失感の方がずっと痛くて、怖くて。
「嫌だ……はず、はずしたら……いやだ」
あんなに重く感じていたのに、あんなに外したかったのに。やっとソレから逃れることができたのに、それがどうしてこんなに怖いんだろう。
無心で嫌だと頭を振る俺を、見下ろしていた清宮が冷たく笑った。
「ねぇ伊沢くん、頬っぺが赤くなってるよ。手ぇ踏まれて感じちゃった?」
「なっ、ちが……」
カッ、と更に頬を紅潮させた俺に清宮が口角を上げる。
「じゃあ何でココ、こんなにしてるの?」
手の甲から外れた足は、そのまま俺の固くなり始めていた中心へと移った。
「あっ、あ……やめッ!」
つま先を押し付けてグリグリと捩じ込む。痛みが強いのに、背筋には堪らない痺れが走って口から唾液が溢れる。
「もしかして、お座りさせられただけで感じちゃった?」
「いッ、あっ、ぁあッ」
「ハジメと付き合うとか言ってたけど、こんな淫乱な躰がさぁ、俺以外で満足できるとか本気で思ってんのぉ?」
「いッ、いんら……じゃ……なあぁあっ、アッ、ひあぁあッ!」
一際強く踏まれたソコが、下着の中でぐっしょりと濡れる。先走りから何から大量に出てしまったそれらは下着に収まらず、まるで漏らしたみたいに履いていたデニムに濃いシミを作った。
「みんなの前で座らされて、手ぇ踏まれて、ちんこ踏まれて。それでイっちゃうなんて、これのどこが淫乱じゃないって言うの?」
軽くかけられただけのswitchのせいで、周りの状況は今もよく分かる。俺を見ていた周りから嘲笑が漏れ、羞恥で全身の血が沸騰する。
言い返したいのに言い返す余裕が無いほど、俺の躰は絶頂によって興奮していて、でもまだまだ足りなくて。清宮に沢山不満があったはずなのに、それを口にするよりももっとずっと優先したいものが、こいつから与えられる快楽で。こいつにしか、与えることのできない快楽で…。
一ミリも触られていない尻の奥がグズグズと疼く。そんな自分が情けなくて涙が出た。
「も、やだ……俺……ばっかり」
「……何が?」
ボロボロと落ちる涙は、唇を噛んだって止まらない。そのまま酷い顔で清宮を睨みあげれば、奴は少しだけ戸惑ったようだった。
「お前は……いいよな。いっぱい、相手いるんだから。でも、俺にはお前しかいねぇじゃん」
「……俺だって伊沢くんだけ」
「ウソつくなよ! 俺以外だって、相手にしてきたじゃねぇか!」
ヒッ、と喉が引きつれる。
「こんな、こんな首輪なんか貰ったって、なんも意味、ねぇじゃねぇか。特別でも、なんでもねぇじゃんか」
首輪付きのSubは、Domの特別である証。このSubには触るなと、別のDomへ向けた牽制そのもの。首輪を貰って優越を感じないSubはいない。けれど清宮は、そんな自分の首輪付きの目の前で、何度も何度も別のSubを、またはDomを相手にしてきた。
例えそれが〝Kneel〟の一言で済む簡単なプレイであっても、そいつらが俺に向ける視線は雄弁に物語っていた。
お前は特別でもなんでもない、と。
「有っても無くても同じモンなら、無い方がマシじゃねぇか! 特別でもねぇのに、コレのせいで殴られて、妬まれて、蔑まれて」
「特別だよ」
清宮が、ボロ泣きする俺をギュッと抱き締めた。
「言ったじゃない、君は特別だよ」
「ウソだ」
「嘘じゃないよ、俺には伊沢くんしかいないもの」
「でも他のヤツ、」
「アレは……アレは、ちゃんと人、選んでたの分かんなかった? あぁ……そっか、勘違いしたから妬いてくれたんだね」
「……?」
清宮が、慰めるように俺の短い髪を優しく撫でた。
「俺が相手にしてたのは、全部〝予備軍〟だよ」
予備軍? と首を傾げると、清宮は俺の耳元で大きな溜め息を吐いた。
「予備軍ってのは、あそこで無視することで、後々俺じゃなくて伊沢くんを傷つけに来るタイプのヤツのことね。無視したいのは山々だったんだけど、四六時中君の側に居るのは無理だから…だから、そいつらの気が少しでも紛れるように、適当に相手してたの」
「……俺……?」
「うん、君を守りたくて。でも、途中でちょっとだけ、楽しくなったのもホント」
さっきよりもずっと強く、清宮が俺を抱きしめた。
「だって、初めて伊沢くんが俺に妬いてくれたから……嬉しくて」
「妬いてねぇし」
「妬いてたよ」
やっと、いつもみたいに優しく笑った。
「ごめんね? 酷いことはしたくないのに、どうしても君のことになると強引なことして泣かせちゃう。君に泣かれるのが一番苦手なのに」
「……泣いてねぇし」
「物凄い勢いで泣いてたよ、今もまだ、泣いてる」
笑いながら、清宮が俺にキスをした。
軽くちゅっちゅと啄まれていただけのものが、みるみるうちに深くなっていって、いつの間にか舌を絡み取られ甘噛みされていた。
俺の、お気に入りのやつ。
「ンっ、ふ……んぅ、んっ」
やっと離されたと思っても、次々にキスは降ってくる。その内俺を抱きしめていた腕が背中を伝ってどんどん下に下がって行って、やがてたどり着いた尻をムギュっと鷲掴みにした。
「ンうっ!?」
驚いて声を上げても、それは呆気なく清宮の口内に呑み込まれて消えた。清宮の手は少しも止まる事なく尻を揉んで、やがて指が尻の窄まりを撫でた。
「ふぁっ!」
「首輪が無くても、君は俺の特別だから。もう二度と他のヤツは相手にしないし、触らない。俺の世界に必要なのは、伊沢くんだけだから。俺は、君だけのものだから」
「ンっ、あ、やめ……そこはっ」
「君も、俺だけのものでしょう?」
「あっあっ」
「今日だけでいいから、君が俺のものだって見せつけさせて。俺にどれだけ躾られちゃってるのか、いやらしくて従順か、見せつけさせて」
「ひぁっ!!」
デニムの上から、清宮が指を窄まりに捩じ込んだ。
「やっ、ぁ……」
「うん?」
パンツの中に溢れていたモノが尻まで伸びて、布と指の侵入を助けている。けれど幾ら助けを受けていたって、直に触っている訳ではないから指は奥まで届かない。分厚く堅いデニムが邪魔をして、入口を弄ぶのが関の山だ。
粘ついた音が静まり返った店と自分の耳に響く。けれどソレに値する快楽は得られていない。
「ちゃ……とさわっ」
ちゃんと触れよ。それを伝えたくて自らデニムを脱ごうとする。けれどそれは、清宮の手によって阻まれた。
「ダメだよ」
「なっ、だっ」
「誰にも伊沢くんの肌は見せたくない」
それだけ言って、窄まりに入れていた指を再び動かし始めた。
「あっぁあ、あっ、は……あっ」
「気持ちぃ?」
「た、たりな……」
「足りない? どうして?」
どうして? だってお前、いつもちゃんと触るじゃねぇか。中にちゃんと入れて、掻き混ぜるじゃねぇか。そんで……そんで……、
「……れろ……」
「なぁに? もっと、ちゃんとハッキリ言って? ここに居るみんなに聞こえるように」
はっ、とどうにもできない熱い息を吐く。清宮の背中にしがみついていた手を外して首に巻きつける。
「ちゃ……と、いつもみた……に、しり……いれろ」
「何を?」
「……きよみ……の、コレ」
十分に硬さを持った清宮のそれを鷲掴みにした。清宮からも熱い吐息が漏れる。周りがゴクリと唾を飲んだ。
「……ねぇ、見たぁ? 可愛いでしょう?」
また俺を腕の中にギュッと抱き込んだ。そのまま俺は、欲しくて堪らないソレを触り続ける。
欲しい。これが欲しい。これを早く俺ン中にいれて、熱くて溶けちまいそうになるまで突っ込んで掻き混ぜて欲しい。
「これ、俺の恋人なの。もう、ただのパートナーじゃないの。俺だけのものなの」
清宮が俺を抱き上げる。
「今日だけはアンタらの膨らんだソレ、許したげる。けど、今後伊沢くんで抜いたりしたら俺、許さないよ。ハジメ、首輪拾って持ってきて」
俺を軽々とお姫様抱っこした清宮は、そのまま全員に背を向けて店を後にした。
いつもよりswitchが軽い。頭の中はグルグルと回っているのに、意識はしっかりしていて周りの状況が良く分かる。
「伊沢くん、おすわりして」
「な……なんで……こんな」
「お す わ り」
Kneelではなく、使われた言葉は〝おすわり〟。
まるでペットに命令する様に言い放った清宮からは、いつのも熱が伝わってこない。本能的な恐怖を感じた俺の躰は、屈辱的な言葉を、それでも従順に受け入れた。
女のようにぺたりと座り込んだ俺を、清宮が見下ろす。
「ねぇ、ここがどこだか分かってる?」
「………」
「ゲイバーだよ」
えっ、と篠原を見れば奴は俺からサッと目を逸らす。
「こんな所にノコノコと、そんな奴について来ちゃって」
「で……も、そいつは……」
幾ら軽くたって、switchをかけられた状態で普通に話すのはキツイ。躰は清宮の命令を今か今かと待ち侘びて、言いなりになったその先で与えられる快楽を期待している。けど、そんな躰の思うままに動くわけにはいかなかった。
ハァハァと荒い息を吐きながら、それでも自分の意志を持とうと踏ん張る。それが、switchを軽くかけた清宮の意志でもあるからだ。
「そいつ……は……おまえの」
「ハジメは俺の従兄弟。何でもかんでも俺の物を欲しがるクズ」
「……もと……パートナーじゃ、ねぇの……?」
「伊沢くんは本当に鼻が利かないね。そこが可愛いんだけど、今は心底憎たらしい。…ハジメはDomでもSubでもない、ただのゲイだよ」
「え……? でも……でも首輪……カギ……」
ぽかんと清宮を見上げた俺を、奴は鼻で笑った。
「こいつの家はD/S専用の首輪を作ってんの。ハジメは鍵担当。だからコレだって簡単に外せる。ハジメに唆されたんでしょ? 首輪、外してあげるって」
無意識に俺の目が泳ぐ。そんな俺に向ける目を鋭くした清宮は、乱暴に首輪を引っ張り俺を吊り上げた。
「そんなに外したいなら、お望み通り外してあげる。もう、必要ないもんね」
「なっ、や……!」
咄嗟に抵抗していた。けれど、あれだけ苦労しても外せなかった首輪の鍵は清宮の手によってあっけなく開錠された。漆黒の首輪が、俺の首からズルリと滑り落ちる。
鈍い音を立てて床に落ちた首輪。俺はそれを目で追って……思わず、手を伸ばして……。
「……ッ!」
あと少しで手が届くその場所で、俺は清宮に手を甲から踏みつけられた。
「そんな物、拾ってどうするの」
「あ……」
だって…だってそれは…俺が、特別だって証で。俺が、お前の唯一だって証で…。それが外れてしまったら、俺は…俺は…。
「や……やだ……いや……だ」
「何が? ずっと外したかったんでしょう? やっと外せて良かったじゃない、喜んでよ」
踏まれた手の痛みなんて感じなかった。それよりも、首輪が外れたことによる虚無感と喪失感の方がずっと痛くて、怖くて。
「嫌だ……はず、はずしたら……いやだ」
あんなに重く感じていたのに、あんなに外したかったのに。やっとソレから逃れることができたのに、それがどうしてこんなに怖いんだろう。
無心で嫌だと頭を振る俺を、見下ろしていた清宮が冷たく笑った。
「ねぇ伊沢くん、頬っぺが赤くなってるよ。手ぇ踏まれて感じちゃった?」
「なっ、ちが……」
カッ、と更に頬を紅潮させた俺に清宮が口角を上げる。
「じゃあ何でココ、こんなにしてるの?」
手の甲から外れた足は、そのまま俺の固くなり始めていた中心へと移った。
「あっ、あ……やめッ!」
つま先を押し付けてグリグリと捩じ込む。痛みが強いのに、背筋には堪らない痺れが走って口から唾液が溢れる。
「もしかして、お座りさせられただけで感じちゃった?」
「いッ、あっ、ぁあッ」
「ハジメと付き合うとか言ってたけど、こんな淫乱な躰がさぁ、俺以外で満足できるとか本気で思ってんのぉ?」
「いッ、いんら……じゃ……なあぁあっ、アッ、ひあぁあッ!」
一際強く踏まれたソコが、下着の中でぐっしょりと濡れる。先走りから何から大量に出てしまったそれらは下着に収まらず、まるで漏らしたみたいに履いていたデニムに濃いシミを作った。
「みんなの前で座らされて、手ぇ踏まれて、ちんこ踏まれて。それでイっちゃうなんて、これのどこが淫乱じゃないって言うの?」
軽くかけられただけのswitchのせいで、周りの状況は今もよく分かる。俺を見ていた周りから嘲笑が漏れ、羞恥で全身の血が沸騰する。
言い返したいのに言い返す余裕が無いほど、俺の躰は絶頂によって興奮していて、でもまだまだ足りなくて。清宮に沢山不満があったはずなのに、それを口にするよりももっとずっと優先したいものが、こいつから与えられる快楽で。こいつにしか、与えることのできない快楽で…。
一ミリも触られていない尻の奥がグズグズと疼く。そんな自分が情けなくて涙が出た。
「も、やだ……俺……ばっかり」
「……何が?」
ボロボロと落ちる涙は、唇を噛んだって止まらない。そのまま酷い顔で清宮を睨みあげれば、奴は少しだけ戸惑ったようだった。
「お前は……いいよな。いっぱい、相手いるんだから。でも、俺にはお前しかいねぇじゃん」
「……俺だって伊沢くんだけ」
「ウソつくなよ! 俺以外だって、相手にしてきたじゃねぇか!」
ヒッ、と喉が引きつれる。
「こんな、こんな首輪なんか貰ったって、なんも意味、ねぇじゃねぇか。特別でも、なんでもねぇじゃんか」
首輪付きのSubは、Domの特別である証。このSubには触るなと、別のDomへ向けた牽制そのもの。首輪を貰って優越を感じないSubはいない。けれど清宮は、そんな自分の首輪付きの目の前で、何度も何度も別のSubを、またはDomを相手にしてきた。
例えそれが〝Kneel〟の一言で済む簡単なプレイであっても、そいつらが俺に向ける視線は雄弁に物語っていた。
お前は特別でもなんでもない、と。
「有っても無くても同じモンなら、無い方がマシじゃねぇか! 特別でもねぇのに、コレのせいで殴られて、妬まれて、蔑まれて」
「特別だよ」
清宮が、ボロ泣きする俺をギュッと抱き締めた。
「言ったじゃない、君は特別だよ」
「ウソだ」
「嘘じゃないよ、俺には伊沢くんしかいないもの」
「でも他のヤツ、」
「アレは……アレは、ちゃんと人、選んでたの分かんなかった? あぁ……そっか、勘違いしたから妬いてくれたんだね」
「……?」
清宮が、慰めるように俺の短い髪を優しく撫でた。
「俺が相手にしてたのは、全部〝予備軍〟だよ」
予備軍? と首を傾げると、清宮は俺の耳元で大きな溜め息を吐いた。
「予備軍ってのは、あそこで無視することで、後々俺じゃなくて伊沢くんを傷つけに来るタイプのヤツのことね。無視したいのは山々だったんだけど、四六時中君の側に居るのは無理だから…だから、そいつらの気が少しでも紛れるように、適当に相手してたの」
「……俺……?」
「うん、君を守りたくて。でも、途中でちょっとだけ、楽しくなったのもホント」
さっきよりもずっと強く、清宮が俺を抱きしめた。
「だって、初めて伊沢くんが俺に妬いてくれたから……嬉しくて」
「妬いてねぇし」
「妬いてたよ」
やっと、いつもみたいに優しく笑った。
「ごめんね? 酷いことはしたくないのに、どうしても君のことになると強引なことして泣かせちゃう。君に泣かれるのが一番苦手なのに」
「……泣いてねぇし」
「物凄い勢いで泣いてたよ、今もまだ、泣いてる」
笑いながら、清宮が俺にキスをした。
軽くちゅっちゅと啄まれていただけのものが、みるみるうちに深くなっていって、いつの間にか舌を絡み取られ甘噛みされていた。
俺の、お気に入りのやつ。
「ンっ、ふ……んぅ、んっ」
やっと離されたと思っても、次々にキスは降ってくる。その内俺を抱きしめていた腕が背中を伝ってどんどん下に下がって行って、やがてたどり着いた尻をムギュっと鷲掴みにした。
「ンうっ!?」
驚いて声を上げても、それは呆気なく清宮の口内に呑み込まれて消えた。清宮の手は少しも止まる事なく尻を揉んで、やがて指が尻の窄まりを撫でた。
「ふぁっ!」
「首輪が無くても、君は俺の特別だから。もう二度と他のヤツは相手にしないし、触らない。俺の世界に必要なのは、伊沢くんだけだから。俺は、君だけのものだから」
「ンっ、あ、やめ……そこはっ」
「君も、俺だけのものでしょう?」
「あっあっ」
「今日だけでいいから、君が俺のものだって見せつけさせて。俺にどれだけ躾られちゃってるのか、いやらしくて従順か、見せつけさせて」
「ひぁっ!!」
デニムの上から、清宮が指を窄まりに捩じ込んだ。
「やっ、ぁ……」
「うん?」
パンツの中に溢れていたモノが尻まで伸びて、布と指の侵入を助けている。けれど幾ら助けを受けていたって、直に触っている訳ではないから指は奥まで届かない。分厚く堅いデニムが邪魔をして、入口を弄ぶのが関の山だ。
粘ついた音が静まり返った店と自分の耳に響く。けれどソレに値する快楽は得られていない。
「ちゃ……とさわっ」
ちゃんと触れよ。それを伝えたくて自らデニムを脱ごうとする。けれどそれは、清宮の手によって阻まれた。
「ダメだよ」
「なっ、だっ」
「誰にも伊沢くんの肌は見せたくない」
それだけ言って、窄まりに入れていた指を再び動かし始めた。
「あっぁあ、あっ、は……あっ」
「気持ちぃ?」
「た、たりな……」
「足りない? どうして?」
どうして? だってお前、いつもちゃんと触るじゃねぇか。中にちゃんと入れて、掻き混ぜるじゃねぇか。そんで……そんで……、
「……れろ……」
「なぁに? もっと、ちゃんとハッキリ言って? ここに居るみんなに聞こえるように」
はっ、とどうにもできない熱い息を吐く。清宮の背中にしがみついていた手を外して首に巻きつける。
「ちゃ……と、いつもみた……に、しり……いれろ」
「何を?」
「……きよみ……の、コレ」
十分に硬さを持った清宮のそれを鷲掴みにした。清宮からも熱い吐息が漏れる。周りがゴクリと唾を飲んだ。
「……ねぇ、見たぁ? 可愛いでしょう?」
また俺を腕の中にギュッと抱き込んだ。そのまま俺は、欲しくて堪らないソレを触り続ける。
欲しい。これが欲しい。これを早く俺ン中にいれて、熱くて溶けちまいそうになるまで突っ込んで掻き混ぜて欲しい。
「これ、俺の恋人なの。もう、ただのパートナーじゃないの。俺だけのものなの」
清宮が俺を抱き上げる。
「今日だけはアンタらの膨らんだソレ、許したげる。けど、今後伊沢くんで抜いたりしたら俺、許さないよ。ハジメ、首輪拾って持ってきて」
俺を軽々とお姫様抱っこした清宮は、そのまま全員に背を向けて店を後にした。
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