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7章

通じ合った想い2

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「やな……っ」
名前を呼ぶ隙も与えず、柳瀬に唇を奪われる。重ねた唇の隙間から熱い吐息が零れ、ぞろりと生あたたかい舌先が遠慮なく咥内に侵入してくる。歯列を柔らかくなぞられたり、上壁を撫でられると、ぞわりと皮膚が粟立つ。
「や、柳瀬っ、ちょっと待てッ」
宥めるように声を上げながら、俺は柳瀬の腕から逃れようと緩くもがいた。
「すみません、今すぐ触りたい……。星川さんを、抱きたいんです」
ぎらぎらと劣情を孕んだ目が俺を見つめ、興奮に上擦った声が耳元に落ちてくる。柳瀬らしくない、そのストレートな台詞と瞳に、否応なく俺の体温も上がっていく。
「ダメですか?」
「っあ……」
(ダメだって……言わせる気ないくせ、に)
口を開こうとすると、腰を絡めとられ、噛みつくようなキスを受ける。口の端から唾液が溢れるのを感じながら、次第にぞわぞわとした快感に身体が支配されていく。

「っ……せめて、ベット、で……」

弱弱しい声で訴えられたのはそれだけだった。
その言葉にピタリと動きが止まったかと思うと、柳瀬の喉奥からグルルと唸るような音が鳴る。
「……っ、くそッ」
「うわっ」
柳瀬は俺を軽々と抱き上げると、そのままベッドに俺を投げた。
「なにす、」
「あなたって人は、何でそんなに……っ」
ベッドに乗り上げた柳瀬は何かを耐えるかのように眉間に皴を寄せキスの雨を降らせながら、片手で器用に俺のシャツにかろうじて残っていたボタンを外していく。外気に晒され粟立つ肌を、柳瀬の大きな手が這い回っていく。
「……んっ」
胸の飾りを弾かれ、びくりと腰が揺れる。それに気を良くしたのか、柳瀬は執拗に指先で軽く抓んだり、指の腹で押し潰したりする。そのたびに小さく声が出るが止まらない。そのうち乳首はじんじんと痺れてきて、ますます起ちあがっていく。
「ゃ……もう、触る……なァ……!」
「でも星川さんのココ、もっと触ってほしいみたいですよ」
「ひぁっ……!」
ざらりと起ちあがったものを舐められ、ひと際大きい声が出る。逃れるように上半身を揺らすが、腰に回った柳瀬の腕はほどけない。それどころか逃がすまいと、さらにきつく絡みついてくる。反対の手は俺の髪や唇を撫でて段々と下に下がっていく。へそを通り、スラックスの上から勃ちあがった股間を撫でられる。形を確かめるように触られる手の感触がもどかしい。
「っは……なんで、そんな……」
弱い快感に気が狂いそうになる。緩い刺激に耐えられず思わず手が伸びるが、柳瀬の手に阻まれる。確かな快感を得ようと腰が勝手に動く。もどかしい快感にぶわりと涙が出るが、それでも柳瀬は触ってくれない。
「んやぁ……や、なせぇ……」
「なんですか?」
柳瀬はわざと俺に言わせようとしているのか、意地悪気に聞き返してくる。いつもなら悪態の一つや二つぐらいすらすらと出てくる口は、こういう時に限って言葉が出ない。その間にも緩やかに続く快感は、俺の思考をぐずぐずにさせる。
「さわっ、てぇ……っあぁ!」
やっとのことで出てきた言葉に満足げに笑うと、柳瀬はスラックスと下着を足首まで下した。そしてシャツを持ち上げるように勃ち上がっていた性器を、柳瀬の手が包み込んだ。
「ひっ……あぁッ!」
待ち望んでいた快感は、身体中を突き抜けるほどに気持ちがいい。やや乱暴な手つきで陰茎をぐにぐにと揉み込まれる感触に、掠れた悲鳴を上げながら快感を感受する。
先端のくぼみから滲む液体を指先で掬われ、陰茎に塗り込まれるように上下に抜かれるたびに、膝がガクガクと震えた。
「あっ……っあァ!柳、せ……ッ!」
指先が雁首や浮かび上がった裏筋をなぞるたび、下腹にぞわりと快感の熱が広がる。鈴口に指を入れるように力を入れられると、それだけで目の奥がチカチカと瞬き、嬌声が止まらなくなる。同じ男だからこそ分かる気持ちいいポイントを執拗に擦られ、強すぎる快感に身を焦がされていると、耳元に柳瀬の熱い吐息が吹き込まれた。
「足、開いて」
その言葉にカァッと頬が一気に熱くなる。羞恥心に顔を赤くさせながら、震える両足を左右に開くと、それを待っていたかのように柳瀬の太股が間に滑り込む。目の前の男はまだ一枚も脱いでいないのに、自分ははだけたシャツ一枚の状態で淫らに悶えている。その事実に、羞恥心と怒りで頭がぐらりと揺れる。
「お前も、脱げ……よッ」
「ああ、そうですね。でも、先に……」
涙で濡れる目で睨むが、柳瀬は意に介していない様子で艶笑すると、途中で放っておかれて物欲しげにヒクつく竿にそっと指を這わせた。
「ッ……ぁあァ、ッ……」
先走りで濡れた性器は上下に動かされるたびに、ぐちゅりと水音を立てる。その音に鼓膜を犯されながら、段々と高まる絶頂に腰が浮かぶ。逃げようとするも、腰と性器を掴まれていてはそれも許されない。止まることを忘れた鈴口から溢れる蜜は、竿を握る柳瀬の手を汚していく。
「もっ、やな、せっ……離しッ……!」
腰を掴む腕を掴んで懇願するも、柳瀬は手を離してくれない。それどころか、手淫はますます激しくなり、咥内をまさぐる舌も興奮を高めてくる。両足は小鹿のように大きく震え、その間では反り返った性器がビクビクと痙攣していた。

「俺の手でイって」

柳瀬の熱い吐息と一緒に落ちてきたストレートな言葉に込められた欲望に、下腹に溜まっていた快楽が一気に高まる。ごつりとした指の節が裏筋をきつくこすり上げた感触に、俺は掠れた声を上げながら絶頂を迎えた。
「ッあ……あぁあア、ッ……!」
熱く熱した精液が、鈴口から盛大に吐き出され、自身の腹を汚していくのを溶け切った頭でぼんやりと感じる。両膝はガクガクと揺れ、待ち望んだ快感に目の奥がちかちかと瞬き、柳瀬の顔が霞む。
今まで経験したことがないような強烈な射精感と快感に、意識がベッドに沈みそうになる。だが、目の前の男はそれを許してはくれない。腹に溜まった精液を塗り込むように広げながら、柳瀬は着ていたカーキのシャツをばさりと脱ぎ捨てた。
「まだ寝ないでくださいね」
そう言うと、均整の取れたしなやかな筋肉とわずかに前に落ちる髪を惜しげもなく晒しながら、柳瀬は悠然と笑った。いまだ痙攣の収まらない太股に触れるようなキスをすると、柳瀬は自身の股に俺の手を導いた。
「ッ……!」
布越しでもはっきりとわかるずっしりとした質量と硬さは、柳瀬の興奮を顕著に表していた。そっと形をなぞるように指を這わせると、答えるかのようにぴくりと動く。その反応に僅かな愛おしさを感じていると、頭上から獣のような唸り声が聞こえ、両手を頭の上に絡めとられる。驚いて見上げると、目の奥でぎらぎらと劣情の炎をちらつかせながら、柳瀬が乱暴に唇を重ねてきた。
「んっ……ふっ、ぁっ……」
「あんま、煽んないでください、よッ」
息継ぎをする暇さえ与えられないほどの激しいキスに、なすすべもなく翻弄されていると、柳瀬の手が後孔に触れた。
「や……やめ、ッ」
先走りでぬるつく窄まりを指でノックされ、慌てて柳瀬の胸を押す。だが、体格の違う柳瀬の身体は僅かも動かず、拒絶の声も甘い口づけに消される。
「やぁ……ッあ」
「大丈夫です、無理に指入れたりしませんから」
そう言うと、柳瀬はくるりと俺の身体をうつ伏せにすると、発情した猫のように尻だけを高く掲げるような格好にした。
「なっ……やだッ、こんな格好……ッ」
あられもない恰好をしているであろう自分の姿を想像して、慌てて服を引っ張るが薄いシャツでは何も隠すこともできない。先ほどまでの快楽がまだ残っているせいか、声は上擦り甘く蕩けきっていた。
「すみません」
柳瀬の手が双丘を割り開き、ヒクつく後孔を露わにする。熱い空気が窄まりにあたったかと思うと、ぴちゃりと濡れたものが触れた。
「ひっあッ、そこ、汚ッ……から……!」
「痛いことはしたくないので」
柳瀬はそう言うと、さらに舌を奥に進ませる。柔らかな感触が後孔の内側を縦横無尽に這いまわるのを感じて、ぞわぞわと腰が粟立つ。
「や、めッ……いや、ァ……ッ」
内側を生暖かい舌が蠢き、唾液を塗り広げる感覚にむせび泣いていると、不意に舌が抜かれた。それにホッとする間もなく、今度はゆっくりと柳瀬の指が侵入してくる。じっくりと舐められた中を探るように動かされる。
「指、増やしますね」
2本の指が突き入れられ、後孔を左右に広げられる。時折、慰めるように柳瀬の舌で入り口を舐めあげられると、そこだけが燃えるように熱く感じる。
「ふっ……ッ、んッ……あぁ……!」
違和感しかなかったそこが段々と快楽へと変わっていく。それと同時に、達してから一度も触っていなかった性器が、ゆっくりと勃ち上がりシーツを濡らしていた。
じっくりと丁寧に広げられる感覚に気が狂いそうになる。じわりと染み出した快感は、さらなる快楽を求めるように柳瀬の指を甘く締め付ける。だが、柳瀬は何かを探すかのように粘膜を指の腹で押すばかりで、気づいてはくれない。

(もっと……もっと、欲しい)
指だけではなく、確かな快感をくれるものが。
目の前の男の身体が欲しいと、全身が求めていた。
「やな、せ……、もう……」
年上の矜持や自尊心は消え去っていた。ただ、柳瀬が欲しくて、たまらなかった。

「星川さん……ッ!」
手を伸ばしベルトを外すと、頭上で息を詰める音が聞こえる。驚きで指が一斉にずるりと抜けると、俺は柳瀬の胸を押しベッドに沈めた。ぽっかりと抜けた後孔に寂しさを覚えながら窮屈そうに収まっていた柳瀬の陰茎を取り出すと、勢いよく飛び出してくる。腹に着きそうなほど反り返った性器は、今にも爆発しそうなほどに熱い。もわりと雄の臭いを纏う塊に脳奥が痺れながら、俺は性器を口に含んだ。
「んはっ、……んッ」
「……ぐッ!」
顎が外れるほどに太く勃ち上がったそれを口いっぱいに頬張ると、頭上から小さく声が聞こえる。その声に気を良くしながら、浮き出た血管をなぞるように舌を這わせると、ビクリと陰茎が震えカウパーが溢れてくる。ゆっくりと喉奥まで収めると、咥内が柳瀬でいっぱいになる。そのままずるりと上下に舐っていると、柳瀬の手が俺の髪を通り、頬をするりと撫で上げた。
「ぅあッ……はっ、気持ちいい……」
甘える猫の喉を撫でるように咥えた喉を指の腹で擦られると、快感を与えている側なのに溶けるように気持ちがいい。口の端から零れる液体に構わず咥内で締め上げていると、今まで以上に質量が大きくなりずるりと口から性器を抜かれた。
「あッ……」
「すみません、もうッ……」
柳瀬はそう言うと、腰を掴み猫のように尻を高く向かせて、期待でヒクつく窄まりにぴたりと熱い塊を押し付けた。
「あッ……あ……っあぁああッ!」
ずるり、と潜り込んでくる柳瀬の熱さにぐしゃぐしゃになったシーツを掴みながら悲鳴を上げる。雁首の太いところが内側に入ると、そのまま内壁を拡げながら奥まで突き進んでくる。ぴたりと尻に触れる皮膚の感触に、柳瀬の物が全部収まったことが分かる。先ほどとは比べ物にならないほどの圧倒的な質量感に、躰が喜び震える。立っていられなくなり、膝ががくりと力を失うと、柳瀬が上に覆いかぶさる。
「……はッ」
首元にかかる熱い吐息と髪が触れる感触さえ快感に変わり、中が蠢くのが分かる。柳瀬はしばらく馴染むのを待つかのように動かなかった。だが、中途半端に快感を与えられた俺にとっては、その時間は永遠化と思うほどに長く感じた。
「やなせ、……うごいて、えッ……あぁ!」
「ッ……あなたって人、はッ……!」
俺の言葉にぷつりと切れた音が聞こえたかと思うと、柳瀬は俺の腰を掴み一気に雁首まで引き抜いた。突然の大きな快感に声を失っていると、今度はねじ込むように根元まで突き立てられる。激しい律動に脳が揺れ、先端から溢れるように先走りが止まらなくなる。   
前後に大きく抜き差しされる度に、結合部からぶちゅぶちゅと卑猥な音が部屋に響き渡る。
「っはぁ……ッ、気持ち、いいッ……!」
「はッ……星川、さん……!」
切迫したような柳瀬の声と自分の嬌声が、さらに感度を高める。年下の男になすすべなく躰をあけ渡してしまったことは、もう意識の端にもなかった。ただ、目の前の男が欲しい、ただそれだけが意識を支配していた。
「ッ、あ、あぁッ……やなせ、ッ」
「……ッ、好きです、あなたの事が……ッ」
遠くの方で聞こえる柳瀬の声は、与えられる快楽によって霞がかかって聞こえない。奥まで性器がねじ込まれると、内壁はきつく窄まり、まるで柳瀬を離すまいとしているかのようだ。そして打ちこまれた柳瀬のかたちを強く意識させられる。
「星川さんッ、すみませんっもう……ッ」
「あ、んッ、……ッあ……!」
中でさらに質量を増した性器を性急に抜き差ししながら、柳瀬が余裕がなさそうに耳元で呻く。シーツに擦れる俺の陰茎も限界が近かった。ぐちゃぐちゃと後孔から聞こえる水音が響いて止まらない。
ポタポタと落ちてくる汗を頬に感じながら、快感に結合部を締め上げると、不意に柳瀬が息を詰めた。

そして、その瞬間。
目の前が一気に真っ白になった。
「ッあ、ああああッあっ……!」
最奥を先端で捩り込まれたかと思うと、火照った粘膜に熱い精液が盛大に叩きつけられる。その熱さに連動するかのように、自身の鈴口から精液が溢れ出した。止まらない射精と絶頂の快感に後孔が蠢くと、その痙攣を味わうかのように、最後の一滴まで内壁に塗り込むようにゆるゆると律動を繰り返した。
中の熱さと収まらない快感に体を震わせていると、ようやく後孔から性器が引き抜かれた。途端、ごぷりとこぼれ出る精液の感覚にぞわりとしていると、柳瀬は俺の肩を掴み仰向けにして目を見合わせるように正面を向かせた。
「あッ……な、に……?」
「まだ、終わってませんよ」
力の抜けた足を掴み左右に開くと、白濁の零れる後孔に熱の収まらない先端を押し付けてくる。濡れた入り口はまるで待ち望んでいたかのように、貪欲に熱を迎えようと簡単に口を開いていく。
「あッ、……んんっあ!」
一度割り開かれた中は簡単に柳瀬を飲み込んでいく。今度は馴染む暇も与えられず、最奥を一気に突かれる。このままでは2度までも柳瀬に主導権を渡してしまう。
「おれ、だってッ……あッん!」
「星川さん……ぐッ……!」
繋がったまま柳瀬の上に乗り上げると、ゆっくりと腰を落とす。自分の体重でさっきよりもっと奥に柳瀬を感じ、腰を振りながら段々と脳が痺れていく感覚に酔いしれる。目の前の柳瀬に腕を回しながら見せつけるかのように出し入れしていると、驚きで固まっていた柳瀬がゆるゆると腰を動かし始めた。
「んッ、ああっ……やめろ、ってぇ……ぅんッ」
「こんなの見せられて動かない方が無理です、よッ」
「ああぁッ!」
両手を捕まれ、下から柳瀬にずんっと突き上げられる。加減のない律動に、目の前が星で瞬く。快感で両足から力が抜け、たれかかるように倒れると、容赦のない突き上げと一緒にキスの雨が降り注いだ。
「あぅ……あっ、……んあァ」
「くッ……!」
ひと際大きい突き上げの後、胎内がじんわりと熱くなる。目の前の男がぐっと眉間に皴を寄せながら、自身の腹に射精するのを見ながらこの上ない優越感に浸っていると、柳瀬が拗ねた様に俺を見る。
「なんで、笑ってるんですか」
「いや、お前に抱かれたいと思っている女はいくらでもいるのに、俺が2回もその機会を奪ってしまったなと思ってな。さすがに気の毒に思えてき、て……ッあ」
「気の毒?そんな事思う必要ないですよ」
腹の中でむくむくと質量が増していく様子に信じられない思いで柳瀬を見つめると、柳瀬は俺をベッドに押し倒した。
「っ、嘘ッ……あっ」
「これからは、そんなこと思う暇なんてないほどに抱き潰しますから」
「そん、なッ……アんッ」
「それにまだ、星川さんに選んでもらってないので」
柳瀬はシーツに沈む俺を見下ろして凶悪に微笑むと、キスを一つ落とした。
「選んでもらえるまで頑張りますね?」
「なッ……ああッ!」
言い終える前に勃ちあがった塊が律動を始め、収まり始めていた快感に再び火が灯るのを感じながら、俺は目の前の男を睨みつけた。

どうしてこうなってしまったのか。
目の前の男は年下で、ノンケで、仕事相手。ただ一夜、誤って躰を許してしまっただけのそんな関係。
なのに、いつの間にか躰だけではなく、心も奪われていた。

認めよう。今日みたいな日ぐらい、素直になっても罰は当たらないだろう。
「ああッ……んぁッ」
「星川さんッ……!」
俺もお前が好きだ。
体内を満たしていく熱と快感に溺れながら、俺は柳瀬にそっとキスをした。
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