ノンケの俺が年上ツンデレ調香師と一夜を共にしました！？

７章

通じ合った想い

俺の言葉に、目の前の滝沢が膝から崩れ落ちる。
「悠貴、お前は」
「お前は、俺といて苦痛だったのか？」
「……ああ。逃げ出したいと思うほど、辛かったよ」
「ッ！だけど、俺たちはいいコンビだっただろ！たしかに、感情に任せて殴ったりしたのは悪かったかもしれないが、お前もそれを享受していただろ」
「お前には俺が必要だ。だろ？だからッ」
「お前っ！」
「柳瀬、待ってくれ」
星川さんは掴みかかろうとする俺を制すと、滝沢を見下ろした。
「はっ！やっぱりわかってくれたか、なら俺と

「すまない」

……え」
「俺は、お前とは帰らない」
「なに、を」
「俺は……俺を大切にしてくれる奴の傍で頑張りたい」
「だから、お前とは戻らないし二度と会わない」
「星川さん……」
「……チッ、ああそうかよ。そう言う事かよ！」
星川さんの言葉を聞いた滝沢は舌打ちをすると、星川さんを睨みつけた。
「結局俺は過去の男だってことか。なら、精々そいつに捨てられないように、その身体使って頑張ることだな」
「なっ⁉」
「いいんだ柳瀬、言わせてやれ」
「……二度とフランスに足を踏み入れるな」
滝沢は苦々しく言い放つと、足音荒く部屋を出ていった。

「柳瀬、大丈夫か……？」
「ええ、血も止まりましたし、見た目より痛くないんで大丈夫です」
「よかった……」
安心さ焦るよに微笑むと、星川さんは力が抜けたのかへなへなとその場に座り込む。
そんな星川さんの前に膝をつくと、俺は腕を伸ばし星川さんを抱きしめた。
「や、柳瀬⁉何をッ」
「さっきの言葉、本当ですか？」
「さっきの言葉……？」

《俺は……俺を大切にしてくれる奴の傍で頑張りたい》

「あっ、あれは……！」
俺の言葉に思い出したのか、慌てて逃げようとする星川さんを逃げられないように抱きしめる。
「あれって俺の事ですよね？あいつより俺の事を選んでくれたってことでいいんですよね？」
「あれは勢いというか、なんと言うか……」
「勢いで本音が出たってことですか？」
「それはっ」
「じゃあ俺の事大切じゃないってことですね…？」
「それは！ちがわない……、けど」
俺が大げさに落ち込むと、腕の中の星川さんは途端に慌てだす。
「あれはあいつから離れるためで、お前を選んだわけじゃ、ない」
言いながら星川さんはぷいと明後日の方向を見る。だが、耳の先まで赤くなっているのを見れば、その言葉が反対の意味であることは目に見えて明らかだ。
（本当に、肝心なところは素直じゃないんだよな）
そんなところも愛おしいと思うのは、惚れた弱みだろうか。
「だったら」
ドサッ
「え？」
「今からでも選んでもらえるように頑張るしかないですね」
床に落ちた破片がジャリッと音を鳴らす。
驚いた顔でこちらを見る星川さんに顔を近づけながら、俺は星川さんの唇を奪った。