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3.悪魔
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(あ……あ! うああああああ!! 悪魔! 今すぐ僕の身体から出て行けええええ!)
『少し黙れクソガキ』
最上は片手でくるりと剣を回すと、切っ先を兄の方へ向ける。
「次はお前だ裏切り者……知ってるんだぜぇ? お兄様?」
「フロイ!! 何を、何をしているのだフロイ!」
「僕を殺し裏切った者を殺しただけだ。なにか間違いでもしたかなぁ? ま、裏切り者なんて昨日の今日で分かる訳ねぇよなぁ? でも、このフロイの体に眠る悪魔はなんでも知ってんだよぉ!」
「あ、悪魔だと……?」
父にはフロイの姿が本当のフロイだとは思えなかった。自らを悪魔と称し、なんの躊躇いもなく弟の首を斬り落とした。
当然、どう考えても目の前に立っている息子はフロイでは無い。まるで本当に悪魔が憑ってしまったかのように見えた。
そして剣の切っ先を向けられるフロイの兄であり、長男。リグルは、ただただ恐怖で震えていた。
「待て、何を言っているんだ……俺が裏切り者?」
「弟を殺されても吐かねえとはすげえ肝据わってんなぁ? それとも怖くて正直に言えねえとか?」
「知らない……やめてくれ……け、剣を下ろしてくれ……」
そこで父は大声で叫ぶ。
「フロイッ!! 今すぐやめなさい!!」
「クソジジイは黙ってろ」
最上は声のトーン深く落として、父を睨みつけながら言う。これに父はまるで悪魔の目に睨まれたかのような表情で、固まってしまう。
「は……?」
「はーやーくー吐かないと。殺すぞ? 吐かなくても殺すけど……」
「だから何なんだよ! 裏切り者? 話が見えねぇ!! まさか俺がフロイを殺した実行犯だってのッ………」
最上は兄に向けて剣を振り下ろした。ごとりと重いものが落ちる音がする。
そうすれば、耳を穿りながら首を無くした兄の身体を蹴る。
「はいタイムアップ~。才能のある人間に嫉妬して殺したくなるのは、殺られた本人の近い者か、その兄弟に当たる人間だと相場が決まってんだよ。
あー汚ねぇなぁ。おいそこのメイド! さっさと掃除しろよ。
無駄に時間食ったせいで2人も死んじまったぞ……」
そんなフロイの姿に父は顔を手で覆い、頭を垂れる。
「ああああぁぁ……お願いだ……戻ってきてくれフロイ」
その父の言葉に反応するように最上は人格をフロイへと切り替えた。
しかしフロイの目は虚ろとなり、何も言葉を発することが出来なかった。静かに膝を付き、床を見つめることしか出来なかった。
(悪魔よ、僕はなんてことをしてしまったんだ。一瞬でも悪魔に耳を貸したのが運の尽きだったんだろうか。もっと抗っていれば……)
『いや~朝の運動は気持ちいねぇ? なぁフロイ。周りにいる奴らは何をいつまで黙ってんだ? 奇跡的に命を吹きかけした子供がいて、精霊様だっけ? お祝いとか無い訳? 腹減ったんだど~フロイぃ。早く身体動かせよー』
最上に罪悪感は一欠片も無い。ましてや人を殺すことを軽い運動だと言う。今の最上に殺人という記憶すらもう無いのだ。
(何がお祝いだ……こんなの死んだ方がマシだ……どうして僕は生き返ったんだ)
『死にはさせねえよ? お前が死のうとするんなら俺は全力で人格奪うから。飯食わねえなら俺身体動かしていい?』
(好きにしろ……)
『少し黙れクソガキ』
最上は片手でくるりと剣を回すと、切っ先を兄の方へ向ける。
「次はお前だ裏切り者……知ってるんだぜぇ? お兄様?」
「フロイ!! 何を、何をしているのだフロイ!」
「僕を殺し裏切った者を殺しただけだ。なにか間違いでもしたかなぁ? ま、裏切り者なんて昨日の今日で分かる訳ねぇよなぁ? でも、このフロイの体に眠る悪魔はなんでも知ってんだよぉ!」
「あ、悪魔だと……?」
父にはフロイの姿が本当のフロイだとは思えなかった。自らを悪魔と称し、なんの躊躇いもなく弟の首を斬り落とした。
当然、どう考えても目の前に立っている息子はフロイでは無い。まるで本当に悪魔が憑ってしまったかのように見えた。
そして剣の切っ先を向けられるフロイの兄であり、長男。リグルは、ただただ恐怖で震えていた。
「待て、何を言っているんだ……俺が裏切り者?」
「弟を殺されても吐かねえとはすげえ肝据わってんなぁ? それとも怖くて正直に言えねえとか?」
「知らない……やめてくれ……け、剣を下ろしてくれ……」
そこで父は大声で叫ぶ。
「フロイッ!! 今すぐやめなさい!!」
「クソジジイは黙ってろ」
最上は声のトーン深く落として、父を睨みつけながら言う。これに父はまるで悪魔の目に睨まれたかのような表情で、固まってしまう。
「は……?」
「はーやーくー吐かないと。殺すぞ? 吐かなくても殺すけど……」
「だから何なんだよ! 裏切り者? 話が見えねぇ!! まさか俺がフロイを殺した実行犯だってのッ………」
最上は兄に向けて剣を振り下ろした。ごとりと重いものが落ちる音がする。
そうすれば、耳を穿りながら首を無くした兄の身体を蹴る。
「はいタイムアップ~。才能のある人間に嫉妬して殺したくなるのは、殺られた本人の近い者か、その兄弟に当たる人間だと相場が決まってんだよ。
あー汚ねぇなぁ。おいそこのメイド! さっさと掃除しろよ。
無駄に時間食ったせいで2人も死んじまったぞ……」
そんなフロイの姿に父は顔を手で覆い、頭を垂れる。
「ああああぁぁ……お願いだ……戻ってきてくれフロイ」
その父の言葉に反応するように最上は人格をフロイへと切り替えた。
しかしフロイの目は虚ろとなり、何も言葉を発することが出来なかった。静かに膝を付き、床を見つめることしか出来なかった。
(悪魔よ、僕はなんてことをしてしまったんだ。一瞬でも悪魔に耳を貸したのが運の尽きだったんだろうか。もっと抗っていれば……)
『いや~朝の運動は気持ちいねぇ? なぁフロイ。周りにいる奴らは何をいつまで黙ってんだ? 奇跡的に命を吹きかけした子供がいて、精霊様だっけ? お祝いとか無い訳? 腹減ったんだど~フロイぃ。早く身体動かせよー』
最上に罪悪感は一欠片も無い。ましてや人を殺すことを軽い運動だと言う。今の最上に殺人という記憶すらもう無いのだ。
(何がお祝いだ……こんなの死んだ方がマシだ……どうして僕は生き返ったんだ)
『死にはさせねえよ? お前が死のうとするんなら俺は全力で人格奪うから。飯食わねえなら俺身体動かしていい?』
(好きにしろ……)
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