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第4話 森を出ても地獄

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 死に物狂いで動きを最適化したことで俺は遂に森の脱出に成功した。しかし休む暇は無い。どうせ今死んだらまたテントで目覚めるときから始まるのだから。
 
 さぁ、次はどこから掛かってくる?

「⊕≤<≡≦≦∏∨≪?」

 相変わらず何を言っているのか分からない。と言うかいい加減気づいてくれ、お前の言葉が俺に伝わっていない事を。だからもう話しかけて来ないで欲しい。

 あぁ、怖い。怖い。次はどこから? いつ死ぬんだ? どこだ? どこから襲われる? 頼むから不意打ちだけはやめてくれ……! ゔ!

 ショック死無効、光属性無効、刺突耐性0.2%、食らいつき耐性0.3%、グロ耐性0.1%、恐怖耐性0.1%

  はっと俺は目を覚ます。畜生おおおぉぉ! またテントかよおおおぉ! ショック死無効だからいくら嘆いても死なないのは助かるぜええええ!

 駄目だ。いくら何でもこれでは最適化とは呼べない。弓だ。とにかくこの人から弓を学ぼう。ジェスチャーでとにかく弓の教えを乞うんだ。

「弓を教えてくれ! こう、なんだ? こうして……せい! 俺に教えろ! おねがいしまあああす!」

  人生二度目の土下座! なんとう侮辱! ゔぁ"ぁッ!

 ショック死無効、光属性無効、刺突耐性0.2%、食らいつき耐性0.3%、グロ耐性0.1%、恐怖耐性0.1%、精神的苦痛耐性0.1%

 いや長え! ってか細か! 畜生! もっと誠意を込めて土下座しろってか? 良いだろう! やってやる……!

「よろしくお願いします……! くうぅ!」

  ショック死無効、光属性無効、刺突耐性0.2%、食らいつき耐性0.3%、グロ耐性0.1%、恐怖耐性0.1%、精神的苦痛耐性0.2%

 ジャパニーズ土下座ってなんでこうもキツイんだ? クソが!

 それから俺は精神が麻痺するほどに俺を助けてくれた彼に土下座をし続けた。

◆◇◆◇◆◇

ショック死無効、光属性無効、刺突耐性0.2%、食らいつき耐性0.3%、グロ耐性0.1%、恐怖耐性0.1%、精神的苦痛耐性10%

 これは101回目の土下座だ。ふうううぅ。心を落ち着かせて、土下座をするんだ……。
 俺はここでふと思い出す。どうして一番最初の物乞いの時は品なかったのか。

 あぁ、あのときは本当に死にたくないから全力で土下座したんだっけ。
 そうか、なら誠心誠意をもって土下座するんだ。現に俺は弓の技術が無いとマジで生きていられねぇからな。

 俺は深呼吸する。ゆっくりと膝を突き、頭を地面の近くまで下ろす。全力で弓を教えて欲しいと心の中で思いながら、弓を教えて欲しいと少しだけジェスチャーを挟みながら。

「×・°|・=#々=……」

 暫くしてから俺はゆっくりと頭を上げる。彼は俺の心意が伝わったのか、笑顔で頷いていた。

 彼は徐ろに背中に背負う弓を手に持つと、テントから外へ出ながら俺に手招きしてくれた。

 まず彼が教えてくれたのは、弓の作り方だった。どうやら自分の弓を貸すつもりはないようで、俺がいくら弓を貸してくれと頼み込んでも首を横に振るだけだった。
 弓を作る材料は今いる森で事足りる。

 必要な材料はゆっくり折り曲げても折れない柔らかい木と、引っ張ってもなかなか千切れない獣の毛。
 木を弓とし、毛を弦とするようだ。即席で作った弓といえど、扱いやすさと耐久度はお墨付きで、前世で弓なんて一度たりとも扱ったことが無い俺でも、彼に教えてもらうことですぐに慣れることができた。
 矢はそこそこ太い木の枝を鋭く尖った石で研ぎ、石二つを使って片方の石に穴を空けたら、その穴に研いだ木の枝を差し込み、獣の毛で縛り付ける。

 少々手間の掛かる作り方だが、これを数十本と事前に用意し、狩りに出掛けるのが基本のようだ。
 さらに矢の耐久度もまぁまぁあるので、一発撃った所で壊れたりはしないようだ。

「よっしゃあ! これで獣なんて怖くねえぜ! 何処からでもかかってこいや!」

 実際突然襲い掛かれたら即死するけどな。咄嗟の反応より、恐怖による死亡が俺の体が真っ先に反応するからだ。
 そんな恐怖を完全克服するには、俺自身が精神的に鍛えられるか、計1000回ビビり散らさなくてはならないという。

「€\・〒]<:k」

──────────────────
《特殊条件達成:新たな特殊スキルが解放されました》
言語理解0.1%
──────────────────

 いや要るけど要らねええええええ! なに? 俺が理解不能の言語をずーっと聞いてたから頭がようやく理解し始めたってか? それにしても0.1%ってなんだよ。

 彼は俺に手招きをする。次に教えるべきことでもあるのだろうか。

 そうして俺は彼の後に着いていくと、突然俺の進む先を遮るように片手を伸ばした。
 ちょっとびっくりしたけど、ショック死は幸運なことにマスター済みだ。こんなことでは死なない。

 彼は口に人差し指を当てて、しーっと静かにしろというジェスチャーを俺に見せた。
 そしてその指先を森の奥へ伸ばす。
 その先にはかの因縁の狼がいた。いや今や因縁というレベルではない。俺にとっての天敵とでも言えるだろう。

 そうすると彼は静かにしゃがむと、ゆっくりと矢を構える。
 森には野生動物だと思われる鳥の鳴き声と、風が木々を通り抜ける音だけ聞こえ、自然の音だけが響いていた。

「○・〒:<€\z」

 次の瞬間、彼は矢を放つ。
 矢はかなり重く、一気に重力に引かれながらも、真っ直ぐ風を切り、狼の横腹に勢いよく突き刺さった。

「キャウンッ!」

 だがそれは致命傷ではなかった為、のっそりと狼は体を起こすと、俺らのことを探し始める。

「<〆〒:+\D」

 彼が俺の肩を叩く。まさか弱ってるからチャンスだなんていう訳ないよな?
 いや、練習はしたけど獲物に当てられるとは限らないよ?

 俺は渋々矢を構える。深呼吸をする。目標を大体30m先の狼に捉える。
 もう一度深呼吸。深呼吸。深呼吸。しん……

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……! はあッあ"!」

ショック死無効、光属性無効、刺突耐性0.2%、食らいつき耐性0.3%、グロ耐性0.1%、恐怖耐性0.2%、精神的苦痛耐性10%、言語理解0.1%

 あームリムリ。狼を前にしたら、外したら殺されるかもしれないって恐怖が全く取れなかったわ。
 んーそうだな。次は深呼吸せずにがむしゃらに撃ってみるか。

 俺はテントから目覚めると、彼から教えてもらった弓矢の作り方で弓と矢を作り、さぁ行こうぜと逆に俺が彼を手招く。
 彼は大層驚いた表情で少し戸惑いながら俺の後を着いてきた。

 そりゃそうだろう。彼にとっての記憶では前日まで必死の物乞いで飢えを耐え凌いでいた男が、飯を食ったら弓矢の作り方だけ完璧にこなすんだから。
 彼からしてはそんな技術があるのになんで飢えていたのか絶対不思議に思っているはずだ。なにせ当の本人も理解できていないことなんだから。
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