58 / 61
昔馴染み2
しおりを挟む
どこかで飲もうかという話になった。
目の前の男がどの程度酒をたしなんでいたかさえ覚えていない。
その程度の間柄だった。
けれど、それでも二人にとっての心配は取り除かねばならない、レオニードはそう考えた。
別に自分は正義の味方なんておキレイな存在じゃないことはよくわかっていた。
唯一の従者さえ捨ててきた男だ。
雑貨屋を出て路地裏に出たところでレオニードは相手のすねに蹴りを入れつつ、その人間の首に手刀を叩き込もうとしていた時だった。
驚いてこちらを見るかつての同僚の瞳がレオニードの目に映った。
劉祜と暴虐王がつながってしまうことだけは避けなければならない。
この男はレオニードが軍を辞めたことすら知らない様子だったが、別の人間に聞いてレオニードが王族となったと知ってしまうかもしれない。
なるべく元のつながりの無い街へ来てはいた。
交易の拠点でどんな人間がいても流れ者として怪しまれない場所を選んだ。
けれどだからと言って絶対に安全ではないことはレオニードはよく知っていた。
暴虐王であり続けた人に、自分だけはかつての知人を殺したくはないと言えるはずが無かった。
なら、一人ですべてを終わらせよう。
レオニードがまさにそう思って行動を起こした瞬間だった。
打ち込もうとした手刀はレオニードよりも太い腕につかまれて阻まれてしまった。
思わずレオニードが後ろを向くとそこには驚いた様子の劉祜がいた。
レオニードは明確な意思をもって劉祜がレオニードの行動を阻止したことに気が付いていた。
「俺が信頼できないですか?」
本当に聞きたかったことはそれでは無かったが思わず最初に聞いてしまった。
すねを蹴られて地面にひっくり返っている、かつての同僚はようやく、レオニードが殺意をもって自分に向かったことに気が付いたらしく、「は? わっ!?」と言葉にならない声を上げた後じわじわと涙を浮かべた。
その顔には何故? と書いてあるようだった。
「その姿。おそらく同郷だろう?」
劉祜は静かに言った。
「元同僚です。ここで終わらせなければどこで何を言われるかわからないでしょう?」
舌打ちののちレオニードは劉祜の手を振り払う。
「言うって、何を!? 俺何も言わないから! 神に誓ったっていい」
涙でぐちゃぐちゃになった顔でそう言われて、レオニードの心は痛む。
別に人殺しが楽しいから軍隊にいた訳ではないし、そもそもそこでよく殺していたのは魔獣だ。
「やめろ。その必要はない」
「は?」
やや、怒りに満ちた声色で劉祜の言葉にレオニードは返した。
目の前の男がどの程度酒をたしなんでいたかさえ覚えていない。
その程度の間柄だった。
けれど、それでも二人にとっての心配は取り除かねばならない、レオニードはそう考えた。
別に自分は正義の味方なんておキレイな存在じゃないことはよくわかっていた。
唯一の従者さえ捨ててきた男だ。
雑貨屋を出て路地裏に出たところでレオニードは相手のすねに蹴りを入れつつ、その人間の首に手刀を叩き込もうとしていた時だった。
驚いてこちらを見るかつての同僚の瞳がレオニードの目に映った。
劉祜と暴虐王がつながってしまうことだけは避けなければならない。
この男はレオニードが軍を辞めたことすら知らない様子だったが、別の人間に聞いてレオニードが王族となったと知ってしまうかもしれない。
なるべく元のつながりの無い街へ来てはいた。
交易の拠点でどんな人間がいても流れ者として怪しまれない場所を選んだ。
けれどだからと言って絶対に安全ではないことはレオニードはよく知っていた。
暴虐王であり続けた人に、自分だけはかつての知人を殺したくはないと言えるはずが無かった。
なら、一人ですべてを終わらせよう。
レオニードがまさにそう思って行動を起こした瞬間だった。
打ち込もうとした手刀はレオニードよりも太い腕につかまれて阻まれてしまった。
思わずレオニードが後ろを向くとそこには驚いた様子の劉祜がいた。
レオニードは明確な意思をもって劉祜がレオニードの行動を阻止したことに気が付いていた。
「俺が信頼できないですか?」
本当に聞きたかったことはそれでは無かったが思わず最初に聞いてしまった。
すねを蹴られて地面にひっくり返っている、かつての同僚はようやく、レオニードが殺意をもって自分に向かったことに気が付いたらしく、「は? わっ!?」と言葉にならない声を上げた後じわじわと涙を浮かべた。
その顔には何故? と書いてあるようだった。
「その姿。おそらく同郷だろう?」
劉祜は静かに言った。
「元同僚です。ここで終わらせなければどこで何を言われるかわからないでしょう?」
舌打ちののちレオニードは劉祜の手を振り払う。
「言うって、何を!? 俺何も言わないから! 神に誓ったっていい」
涙でぐちゃぐちゃになった顔でそう言われて、レオニードの心は痛む。
別に人殺しが楽しいから軍隊にいた訳ではないし、そもそもそこでよく殺していたのは魔獣だ。
「やめろ。その必要はない」
「は?」
やや、怒りに満ちた声色で劉祜の言葉にレオニードは返した。
24
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説


美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!
小池 月
BL
男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。
それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。
ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。
ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。
★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★
性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪
11月27日完結しました✨✨
ありがとうございました☆

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

有能官吏、料理人になる。〜有能で、皇帝陛下に寵愛されている自分ですが、このたび料理人になりました〜
𦚰阪 リナ
BL
琳国の有能官吏、李 月英は官吏だが食欲のない皇帝、凛秀のため、何かしなくてはならないが、何をしたらいいかさっぱるわからない。
だがある日、美味しい料理を作くれば、少しは気が紛れるのではないかと考え、厨房を見学するという名目で、厨房に来た。
そこで出逢った簫 完陽という料理人に料理を教えてもらうことに。
そのことがきっかけで月英は、料理の腕に目覚めて…?!
料理×BL×官吏のごちゃまぜ中華風お料理物語、ここに開幕!
※、のところはご注意を。

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!
かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。
その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。
両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。
自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。
自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。
相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと…
のんびり新連載。
気まぐれ更新です。
BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意!
人外CPにはなりません
ストックなくなるまでは07:10に公開
3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる