英雄の条件

渡辺 佐倉

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王の条件、英雄の条件3

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元々、晃の謀反について話をする場だったため、あの部屋の外にいた人間も劉祜にごく近しい人間ばかりだった。

悪い暴虐王とその伴侶はこの世から消し去られる。

それだけの事だった。

劉祜は慌ただしくあの地下室の少女の術を管理している人間達を呼び寄せ今後について打ち合わせているらしい。

レオニードは、真の意味で彼のただ一人あるユーリィを目の前にしてなんと切り出そうか悩んでいた。
それこそ、初めて戦場で敵を目の前にした時の様だと思う。

ユーリィは何故自分が呼ばれたのか分かっておらず首をかしげる。

彼はレオニードのために故郷を離れさせてしまったのだ。

その彼を置いていかなければならない事実は、腹のあたりがじくじくと痛む様だ。
けれど彼を連れて行く訳にもいかない。
晃は「殺すのが上のもんの務めやなあ。」と言ったけれど、それだけはしてはならない事位レオニードでも分かる。

自分たちが去った後殺させることも絶対にあってはならない。

穏やかに彼が暮らせる方法。

他の全てを投げだすレオニードの唯一の気がかりだった。

「まず、今日ここで話す全ては一生他言無用で頼む。」

きょとんとしていたユーリィの表情が曇る。
話せることと、話せない事がある。

処刑されたことにすればいいと言った言葉通り、二人は処刑されたことになるらしい。
他の提案はかなりの部分に訂正が入ったそうだが、処刑された事にするという部分についてはそのまま採用された。

けれどその話をユーリィにそのままする訳にはいかない。

彼にとって、レオニードと劉祜はもうすぐ死ぬ人間なのだ。

だからその後の身のふり方を、話さねばならない。

「ユーリィは、俺では無くて別のひとの世話して欲しいんだ。」

へ? とユーリィは素っ頓狂な声を上げる。

「何故? とお聞きしてよろしいでしょうか?」

ユーリィは静かに言う。

レオニードは「答えられない。」と伝えた。
嘘は付きたくないというのは偽善だろうか。

「ユーリィには呪いをかけられていた少女の従者になって欲しいんだ。」

地下にいた少女には話を付けた。
面白そうに笑って、彼女は「私の命のある限り、その子の事はお任せください。」と言った。

レオニードの曖昧な言葉にユーリィはこちらを黙って見返す。

「それで、あなたはどうするんですか。」

人質として一人これからどうするんですか? と聞いていることはレオニードにも分かっている。

「頼む……。」

ユーリィからの問いかけに説明を返すことはできなかった。
頭を下げたレオニードに、ユーリィは「や、やめてくださいっ!」と叫ぶ様に言った。

「――分かりました。」

レオニード様が望むのであれば、それに従います。
ユーリィは静かにそう言った。

思い残すことはもうなかった。
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