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許し6
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「彼女を助け出す手立てが見つかったか?」
レオニードが静かに聞く。
「……奇跡が。」
最初晃が何を言っているのか聞き取りにくかった。晃はもう一度同じ言葉を口にする。
「奇跡?」
レオニードが晃の言った事を繰り返した。
次の瞬間、晃がレオニードに掴みかかろうとする。
怪我をしているとはいえ、今回はレオニードは晃から綺麗に避けた。
「あんさんのそれは奇跡やろ。」
奇跡、奇跡が必要なんだ。うわ言の様に晃が言った。
それが、劉祜の身代わりになったことを指していることはすぐに分かった。
「なんだって、そんなものが必要なんだ?」
「彼女の代わりにするんだ。」
奇跡の遺物があれば、彼女の代わりになる。
「それで、その後はどうするつもりだ?
じゃあ、なんで劉祜を殺そうとした。」
友だったのだろう。
少なくとも劉祜はそう思っていた筈だ。
「魔獣の王の居場所の見当はおおよそついてるんや。
この国を俺が乗っ取ってでも魔獣の王を倒して彼女を救い出す。」
それ以外の選択肢はあるか?
晃は歪な笑顔を浮かべる。
「劉祜。」
レオニードは名を呼ぶ。
レオニードの愛する人と目の前の男は友人同士なだけあって、少しだけ似ているのかもしれない。
「魔獣を操っている人間がどこにいるのかの、目星がついたことは確かだ。」
劉祜の言葉で、晃が何を焦っているのかが分かった。
「分かっているのに、何故そこに向わない。俺を向かわせない!」
妙に癖のある公用語を取り払って晃が叫ぶ
政《まつりごと》をして現状維持をすることに劉祜がしがみついているとでも言いたげに見える。
けれど、今のレオニードにはいたずらに兵力をそちらに割けないこの国の事情も分かっている。
そんなものがいると知らされていない魔獣を操っている人間のために簡単に挙兵できないこと位考えれば分かる筈だ。
討ち滅ぼさねばならぬ敵と世界よりも大切な少女。
その二つの命題の解決の糸口が目の前にぶら下がっていたのだ。
だから、とはレオニードには思えなかった。
けれどこの人が許すと決めたのだ。
レオニードが静かに聞く。
「……奇跡が。」
最初晃が何を言っているのか聞き取りにくかった。晃はもう一度同じ言葉を口にする。
「奇跡?」
レオニードが晃の言った事を繰り返した。
次の瞬間、晃がレオニードに掴みかかろうとする。
怪我をしているとはいえ、今回はレオニードは晃から綺麗に避けた。
「あんさんのそれは奇跡やろ。」
奇跡、奇跡が必要なんだ。うわ言の様に晃が言った。
それが、劉祜の身代わりになったことを指していることはすぐに分かった。
「なんだって、そんなものが必要なんだ?」
「彼女の代わりにするんだ。」
奇跡の遺物があれば、彼女の代わりになる。
「それで、その後はどうするつもりだ?
じゃあ、なんで劉祜を殺そうとした。」
友だったのだろう。
少なくとも劉祜はそう思っていた筈だ。
「魔獣の王の居場所の見当はおおよそついてるんや。
この国を俺が乗っ取ってでも魔獣の王を倒して彼女を救い出す。」
それ以外の選択肢はあるか?
晃は歪な笑顔を浮かべる。
「劉祜。」
レオニードは名を呼ぶ。
レオニードの愛する人と目の前の男は友人同士なだけあって、少しだけ似ているのかもしれない。
「魔獣を操っている人間がどこにいるのかの、目星がついたことは確かだ。」
劉祜の言葉で、晃が何を焦っているのかが分かった。
「分かっているのに、何故そこに向わない。俺を向かわせない!」
妙に癖のある公用語を取り払って晃が叫ぶ
政《まつりごと》をして現状維持をすることに劉祜がしがみついているとでも言いたげに見える。
けれど、今のレオニードにはいたずらに兵力をそちらに割けないこの国の事情も分かっている。
そんなものがいると知らされていない魔獣を操っている人間のために簡単に挙兵できないこと位考えれば分かる筈だ。
討ち滅ぼさねばならぬ敵と世界よりも大切な少女。
その二つの命題の解決の糸口が目の前にぶら下がっていたのだ。
だから、とはレオニードには思えなかった。
けれどこの人が許すと決めたのだ。
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