英雄の条件

渡辺 佐倉

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許し5

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別に怪我をするようなものじゃない。
むしろ傷が治り切っていないレオニードの方が顔をしかめた。

「あんさん、なにするんや。」

晃が言った。

劉祜が間に入ろうとする。

本来自分に許された行為でない事はレオニードでも知っている。
けれど、これはけじめだった。

レオニードなりのけじめだ。
劉祜の命を狙ったのだ。

滅茶苦茶にしてやりたいという気持ちはある。

けれど、それも含めて彼を許すためのレオニードなりの儀式だ。

「べつに? アンタだって大事な人を傷つけられれば怒るだろ。」

レオニードがそういうと、晃の肩が揺れた。

「普通のことだろ。」

普通の事だ。ただそれだけの事だ。
彼はただ今までの状況に憤ってただけなのだろう。

だから、無駄にレオニードに突っかかってきていた。
……とレオニードも目覚める前までは思っていた。

「劉祜が暴虐王じゃない事を知っている人間は他にもいたし、俺が王族としてふさわしくない事も知っていた。」

だから、適当なところで俺を国に返そうと話をしていたのだ。

最初から、レオニードの事はきちんと調べられていた。
教養がない事も、姫君として扱われるのがふさわしくない人間だということも知られてこの国に来ていた。

多分その事を晃も知っていた。

知っていて放置していた。この国とってどうでもいい人質だったからだということは最初からレオニードは分かっている。

「なんであんなに俺にこだわった。」

同性間の婚姻が形だけでも成立した、とはいえ世の中は異性間で結婚をする人間が多いのだ。

戯れだとしても、八つ当たりだとしても晃がレオニードを襲う理由としては軽すぎる。
少なくとも劉祜を殺そうとする位追い詰められている人間が何故そんなことをしたのだろうか。

晃は少しずつ壊れてしまったのかもしれないと思った。

けれどレオニードは彼と実際に対面して、晃が思いのほかきちんとしていることに気が付いたのだ。
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