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誓い2
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「なあ――」
謝りたかったのかもしれない。それとも違ったのかもしれない。
その後の言葉は紡げなかった。
「危ないっ!!」
突然の殺気に劉祜もろとも横に倒れる様に避ける。
警護の者がいたはずだ。それなのにそれをかいくぐって近くまで来ているのであろう刺客の放った矢が、先ほどまで劉祜がいたであろう位置に刺さっている。
「警護っ!」
怒鳴る様に叫ぶと、湖の先にある茂みがごそごそと揺れる。
帯刀を頼めばよかった。
せめて、弓があれば違ったのかも知れない等と思ってしまう。
かばい続けられるだろうか。
敵は何人だろうか。
幸い湖は見晴らしがよい。茂み以外に隠れられる様な場所は無い。
「妃に庇われるのは醜聞がよくないかな?」
劉祜は場にそぐわない言葉を言う。
「そんなもの広める様な男じゃないだろ、アンタは!」
身を挺して守ることにどれだけの価値があるかは分からない。
実際劉祜は強いのだ。レオニードに守られる必要はそれほどない。
けれど、万が一の事があった時レオニードと影響が違いすぎること位、レオニードにも分かっている。
警護の者が一人こちらへ駆けつける。
「賊を発見。対処いたしました。」
静かに告げる。
「他は?」
レオニードの口から出た声は酷く硬いものだった。
「いえ、探索しておりますが問題ないかと。」
返す言葉にレオニードは少しほっとした。
「城にひきかえすか?」
レオニードは劉祜に聞く。
「まさか。命を狙われたからで予定を変更していたら一生何もできなくなる。」
酷く不遜な態度で劉祜は言った。
暴虐王として、それが日常なのだと宣言する様だった。
何が嫌だったかは自分でもよく分かっている。
こんな生活が普通だと思っている劉祜が嫌だった。
自分も元軍人で殺したり殺されたりする生活だったが、それは非日常だと分かっていた。
日常が別にあるからこそレオニードは軍人をしていられた。
劉祜はこちらが日常なのだ。
初めて彼にあった時の、寂しい背中を唐突に思い出した。
「愛してる。」
守ってやりたい。大丈夫なんてこと無いのだと吐露させてやりたい。
つかめる藁にさえなれないのにそんなことを思ってしまう。
何を伝えていいのか分からなかった。
先に言わなきゃいけない事も、作らなければならない信頼もあることは分かっていたのにレオニードの口から出たのは自分の気持ちの吐露だった。
しかも他に人のいる前だ。
それなのに馬鹿かと思った時にはもう遅い。
「は、ハハッ……。」
それなのに目の前の暴虐王様はらしさを捨てて嬉しそうに笑っている。
ぎょっとした顔で見られているのも気にせず、劉祜はひとしきり笑うとそれから「離宮へ急ごうか。」とだけ言った。
レオニードの伝えた言葉には何も返事は無かった。
別にそれでいいとレオニードは思う。
離宮へ急ぐならその方がいい。
他の刺客が潜んでいるかもしれないのだから。
「護衛から予備の弓を借りてもいいでしょうか?」
レオニードが声をかけると劉祜は頷く。
すぐに用意された弓と幾ばくかの矢を担ぐとレオニードは馬に乗った。
謝りたかったのかもしれない。それとも違ったのかもしれない。
その後の言葉は紡げなかった。
「危ないっ!!」
突然の殺気に劉祜もろとも横に倒れる様に避ける。
警護の者がいたはずだ。それなのにそれをかいくぐって近くまで来ているのであろう刺客の放った矢が、先ほどまで劉祜がいたであろう位置に刺さっている。
「警護っ!」
怒鳴る様に叫ぶと、湖の先にある茂みがごそごそと揺れる。
帯刀を頼めばよかった。
せめて、弓があれば違ったのかも知れない等と思ってしまう。
かばい続けられるだろうか。
敵は何人だろうか。
幸い湖は見晴らしがよい。茂み以外に隠れられる様な場所は無い。
「妃に庇われるのは醜聞がよくないかな?」
劉祜は場にそぐわない言葉を言う。
「そんなもの広める様な男じゃないだろ、アンタは!」
身を挺して守ることにどれだけの価値があるかは分からない。
実際劉祜は強いのだ。レオニードに守られる必要はそれほどない。
けれど、万が一の事があった時レオニードと影響が違いすぎること位、レオニードにも分かっている。
警護の者が一人こちらへ駆けつける。
「賊を発見。対処いたしました。」
静かに告げる。
「他は?」
レオニードの口から出た声は酷く硬いものだった。
「いえ、探索しておりますが問題ないかと。」
返す言葉にレオニードは少しほっとした。
「城にひきかえすか?」
レオニードは劉祜に聞く。
「まさか。命を狙われたからで予定を変更していたら一生何もできなくなる。」
酷く不遜な態度で劉祜は言った。
暴虐王として、それが日常なのだと宣言する様だった。
何が嫌だったかは自分でもよく分かっている。
こんな生活が普通だと思っている劉祜が嫌だった。
自分も元軍人で殺したり殺されたりする生活だったが、それは非日常だと分かっていた。
日常が別にあるからこそレオニードは軍人をしていられた。
劉祜はこちらが日常なのだ。
初めて彼にあった時の、寂しい背中を唐突に思い出した。
「愛してる。」
守ってやりたい。大丈夫なんてこと無いのだと吐露させてやりたい。
つかめる藁にさえなれないのにそんなことを思ってしまう。
何を伝えていいのか分からなかった。
先に言わなきゃいけない事も、作らなければならない信頼もあることは分かっていたのにレオニードの口から出たのは自分の気持ちの吐露だった。
しかも他に人のいる前だ。
それなのに馬鹿かと思った時にはもう遅い。
「は、ハハッ……。」
それなのに目の前の暴虐王様はらしさを捨てて嬉しそうに笑っている。
ぎょっとした顔で見られているのも気にせず、劉祜はひとしきり笑うとそれから「離宮へ急ごうか。」とだけ言った。
レオニードの伝えた言葉には何も返事は無かった。
別にそれでいいとレオニードは思う。
離宮へ急ぐならその方がいい。
他の刺客が潜んでいるかもしれないのだから。
「護衛から予備の弓を借りてもいいでしょうか?」
レオニードが声をかけると劉祜は頷く。
すぐに用意された弓と幾ばくかの矢を担ぐとレオニードは馬に乗った。
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