英雄の条件

渡辺 佐倉

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朝食の誘い2

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当たり前なのだろうと思えるのは、それを観察できるだけの心の余裕があるからだろうか。

侍従と思われる人間もいるのだから、暴虐王として振舞わなければならない事は分かっている。
国力を上げるためであれば、目の前の男は喜んで暴虐王と呼ばれることを、もうレオニードは知っている。

それが彼の目的のためだとレオニードは知っているのに、何故朝から呼び出したのかが分からなかった。
こんな状況でまともに話ができる訳がないし、暴虐王であることを見せて何が目的なのか分からないまま、黙々と食事をつづけた。

「馬には乗れるか?」

そのまま朝食の時間が終わるものなのだろうとレオニードが思い始めた時、劉祜は突然そう言った。
軍歴をある程度調べていると言っていた。
当然劉祜はレオニードが馬に乗れること位知っている筈だった。

そもそも、この国では貴族の嗜みの一つだということをレオニードはすでに学んでいる。

「のれますよ。」

けれど、今は馬を所有していない。
何故そんなことを言うのか分からなかった。

「では、遠乗りにいくぞ。」

レオニードにたずねる言い方ではない。もう決まっていることとして劉祜は言った。


この為に朝食に誘ったのだろうか。

別に断るという選択肢すらないのだから、態々こんなところで誘う理由がない。

「これ、美味いだろう?」

一瞬いつもの劉祜の様に見えた。
けれど、表情は崩れてはいない。

レオニードは劉祜が言ったス―プの様なものが入った器を取って口につける。
ほのかな甘みがあり、それはデザートの一種の様だった。

思わず器を見ていた顔をあげ劉祜を見る。
目が合った劉祜は一瞬目じりを下げた、気がした。それはレオニードだけにそう見えたのかもしれない。

けれど、一瞬優し気な表情をしたように見えたのだ。

ただ一緒に美味しいものを食べたかっただけなのかもしれない。
そこまで考えて、それはまるで大切な人に対してすることだと思い至る。

レオニードは劉祜の伴侶だ。
人質として最低限必要な人間なのかもしれない。

けれど、何故大切な人を連想してしまったのか。
レオニードは自分自身の思考の飛躍に内心戸惑う。

「馬を一頭贈ろう。」

そう劉祜が言う。

「ありがとうございます。」

レオニードは頭をさげながら、もし劉祜に大切にされているのなら、それを嬉しい事として受け止めている自分に戸惑っていた。
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