英雄の条件

渡辺 佐倉

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暴虐王の過去7

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魔獣が普通の獣になったら、人間は随分暮らしやすくなると思わないか?

言われた言葉に思わずレオニードは頷く。
全てを殺すなんて無理で、けれど、魔獣が猪や鹿や熊の様になれば人間は随分暮らしやすくなるだろう。
勿論、今だって熊に襲われたなんて話は山へ行けばよく聞く。

けれど、そんなものと比較にならない位、魔獣の被害は多いのだ。
自分でそう考えた時点でようやくレオニードは魔獣だけが突出して人里に出ていることに気が付く。

魔獣を調教しているところも、魔獣と共にある人間もレオニードは見たことが無かった。おそらくとても狡猾な者が行っているのだろう。

人が安心して暮らせれば、災害があっても人柱をたてる必要は無いだろう。

「お姫様が生きているっていうのは本当なのか?」

晃の話しで一つ引っかかっていたことがある。
お姫様と言われていた少女だ。

別にレオニード自身自分が姫とか妃とかそんな柄ではないこと位分かっていたし、そんなものになりたいと願った事も無い。
しかし、あそこまで露骨な態度が不思議だったのだ。

「案内しよう。」

目を細めて劉祜は言った。


劉祜の足取りは重い。
一歩一歩踏みしめる様に歩いて行った先にあったのは、所謂玉座の間というやつだ。

室内着の上に一枚羽織っただけのレオニードは場違いに思える。

「こっちだ。」

一番奥で、劉祜が降り返る。
地下にお姫様がいるという話だった。

実際、地下に向って階段が降りていっていることに気が付いた。

階段の向こうは暗くてよく見えない。
劉祜、手に持っていた行燈の光を頼りに地下に降りる。

薄暗い階段はレオニードが思っていたより長い。

下に下にと進んでいくと、地下室というよりも牢に近い様な場所についた。

物音は何もしないが、気配がある。
それはレオニードが軍人だったからこそ感じ取れたものなのかもしれない。

「あら、誰かお客様かしら。」

鈴の音の様な可愛らしい声がした。
こちらかはその声の主は見えない。

劉祜が緊張したのが分かる。

「何を見ても悲鳴を上げるな。」

今更な言葉を言うと劉祜は声のした方に一歩一歩進んでいった。
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