一から百まで

渡辺 佐倉

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普通に考えたら引く様な話なのかもしれない。
だけど嬉しかった。

「好きになってくれてありがとうな。」

顔も見ないでそう言うと、横で百目鬼に「不意打ちでそれは、破壊力強すぎるだろ。」と言われた。
別にいいじゃないか、恋人に好きだって言うくらい。
それに一々言葉選びがわざとらしいところも相変わらずだ。


真面目な顔をして壇上で、校長からの絶賛を受ける百目鬼を見て今朝の照れた顔とのギャップに内心ほくそ笑む。
あの顔を知ってるのは多分俺だけだと思うと優越感に浸れる。

『お兄ちゃん、驚くよ。』

と言っていた妹の話は今日の話だったのかと思いいたる。
別に驚きはしなかった。

ただ嬉しかっただけになってしまう位、百目鬼の事を好きになっていた。
だからそんなものかと思う。

俺だって、あっさりと負けられて百目鬼を強く意識したのだ。
百目鬼の好みは全くよく分からないけれど、そんなものなのだろう。


校長のありがたいお話を聞いて、百目鬼はクラスの列に戻っていた。

「一之瀬ってあの、百目鬼に勝ったんだよな。」

クラスメイトが小声で話しかける。

「手を抜いたに決まってるだろ?」

クラスメイトがあの場所に居たかどうかは知らない。相変わらずあまりそういう事に興味は出ない。

だけど、それはどっちでもいい。
夏休みの勝負は二人だけのものだから、誰にも言うつもりは無い。

軽く言うと「だよなあ。」と返される。
でも、もう別に腹は立たなかった。

勝負は俺と百目鬼の二人だけの間の宝物だから、それでいい。

始業式が終わって廊下で百目鬼と目があう。

「また、昼休みに。」

ちゃんとした言葉で言われて頷く。

嫌々でも、自分でも理解できない執着でも無い。
お互いに一緒にいたいからという約束が嬉しい。

誰かに触れてまわるつもりはないけれど、確かに恋人同士だという証のようで、くすぐったくて嬉しかった。
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