一から百まで

渡辺 佐倉

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カナタさんの動きはよく見えたし、体も軽かった。

崩れ落ちているカナタさんに手を伸ばす。

上手く力を受け流してバランスを崩す技を掛けられた。
こんなに綺麗にできたことはあまりない。

もう一度今の感覚を確認したいと。今すぐ再戦をと思うがここは道場じゃないし、今はそういう場でもない。

息を吐きだすと、カナタさんが俺の手につかまって体を起こす。

「今見て頂いた様に、重心と体幹は我々の流派でも重視しています。」

これからお見せする演舞も本日はその点を重視したものが中心となります。

演舞と呼んでいるが、二人一組でやる空手の組手の様な型を出し合う稽古だ。

父に武術を教わり始めてから欠かさずやっているそれはもう体が覚えている。
けれど、毎日毎日やればやるほど精度が上がっていくのが分かる。

逆に言うと、昨日までの自分に足りなかったものがあることを突き付けられる稽古だ。

一人が手を伸ばすと、一人がそれを崩す。
一人が足を掛けようとするとそれを絡める様にして重心を崩す。

受け流す、跳ね上げる。押し返す。撃つ。

父ともう一人の大人とそれから俺とカナタさんがで二組が皆の目の前で、リズミカルに型を披露していく。

そのまま、柔道に使うのは無理なものも多いし、そもそも反則になるものもいくつか含まれている。
それに今年の全国大会まで一か月はもうない。

今からなにか新しい技をという意味ではないことを俺たちも、それからこれを見ている柔道部員たちも知っている。

これから。
もっと長い目で見たときに他流の技が何かヒントになる可能性がある。
試合中の発想力になるかもしれないと信じての事なのだろう。


だから、無駄なことは何も考えないで体に集中する。
集中して目の前のカナタさんと向き合う。
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