一から百まで

渡辺 佐倉

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百目鬼との電話の後、家族で夕食をとっている際「明後日時間あるか?」と聞かれた。

夏休み中なので道場が無い時間は基本は暇だ。

特にこれから一週間は。

「別に暇だけど。」

俺が答えると、道場の仕事を手伝ってほしいと父が言う。

「この辺の高校の柔道部が合同合宿をしていて、そこで他流を指導の一環として見せたいって話でな。」

年が近い方がお互いいい刺激になるだろう、と父が言う。

うちの流派はどちらかというと合気道や空手に近い。
どの位役に立つのかは分からないが、それよりも今は気になることがある。

「それってうちの高校も参加していますか?」

父に向けてのしゃべり方から、師匠に向けての話し方に変えて聞く。

「友達に見られるのは嫌か?」

父に言われるが、そういう事ではない。

「絶対に行きたい。」

百目鬼に会える。
別に話す時間が取れなくてもいい。

一目会いたいなんて思う日が来るとは自分でも驚く。

「演舞ですか? それとも実践形式ですか?」

俺が聞くと父は「両方だ。」と答えた。

「もう一人、カナタ君にも来てもらう予定だから。」

父が言う。

「……それから、この前勝手に試合をしたお友達を、きちんと紹介しなさい。」

その言葉にギクリと固まる。
“お友達”ではないのできちんと紹介はできないかもしれない。

けれど百目鬼とはもう一度どうしても仕合がしたい。
そのためにはこの人の許可が必要だ。

「わかりました。」

嘘を見抜くのが上手い人だ。
武道家としてのものなのだろうか、よく人を見ていると思う。

本当のことを言うべきなのか。
明後日のギリギリまで悩まなければいけない事なのかもしれない。
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