一から百まで

渡辺 佐倉

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「今、何時だ?」

体を動かすのが億劫だ。
百目鬼はタオルを手に持ちながら洗面所の場所を聞くので教えてやる。

二十一時半。確認した時刻は思ったより遅かった。

両親と妹は母方の祖父母の家に出かけているがもうすぐ家についてしまうかもしれない。
百目鬼が濡らしたタオルを持って戻ってくる。
下だけ着なおして上半身裸の百目鬼は顔も洗ったらしく前髪が少し濡れている。

ホカホカの濡れタオルで体を丁寧に拭かれ、着ていた服を丁寧に着させられる。
お互い性行為の後の甘だるい余韻が残っていて、何もしゃべらない。

腰が変なのもまあ、起き上がれない事もないという感じでベッドの淵に座って、手で髪の毛を整える百目鬼に好きにさせる。

「もうすぐ両親帰ってくるけど泊まってくか?」
「いや。」

百目鬼は髪の毛を撫でながら薄く笑ってそう言う。

「じゃあ、送っていく。」

少しの時間で腰のあたりは大分いい気がする。
それに、やっぱり少し離れがたい。

甘ったるい感覚にもう少しだけ浸っていたいのだ。

ちゅう。と音を立ててキスをされる。

「体大丈夫なのか?」
「鍛え方が違うので」

ニヤリと笑うと、百目鬼はまたため息をついた。

「それ、やめねえ?」
「それ?」
「ため息。」

俺が言うと百目鬼は困った様な顔をする。

「今すぐ犯したい位可愛いっていちいち口に出さない方がいいだろ。」

百目鬼は相変わらずらしい。

「まあ、人目のないところだけだなあ。」

それだけ言って立ち上がる。
尻のあたりがまだ変な気もするけどまあ大丈夫だろう。
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