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「まだ県大会だ。」
静かに、百目鬼が言った。
それはまるで、話を逸らしたみたいに聞えた。
人前だから、というよりも百目鬼本人がその話をしたく無い様だった。
確かに馬鹿な提案はした。
それに周りには他の柔道部員もいる。
けれど、負けた人間がいるから話を変えた風にも見えない。
明らかに百目鬼自身が話したくないのだろう。
は? と思った。
だって百目鬼は、前に俺がその言葉を聞きたくないという雰囲気を察して、あの無茶苦茶な告白をやめてくれただろうか。
そんな俺の思考をぶった切る様に百目鬼は「もうその話はいいから」と言った。
その話は昨日の話のことなのだろう。
無かったことにしたいのだと気が付く。
お前が、告白してきたんだろ! お前が!!
その内容が滅茶苦茶なものだったとしても、なんでも、百目鬼が俺に告白してきたんだろ。
なんで俺が丁寧にお断りされてるみたいな話になってるんだよ。
「はあ?」
思ったより苛立っている声が出た。
彼は県大会で優勝して、お祝いを言うつもりだった。
打ち上げもあるだろうし、同じ部活内の敗者を労わるのだろう。それも理屈では分かっていた。
それなのに出た声はこれだ。
だけど、これは仕方がないだろう。
「今から、ちょっといいか?」
「試合をするって約束は、全国が終わってからのつもりだが。」
「そうじゃない!」
そんなものを今からするつもりはない。
ただ、あの時と似たような苛立ちだという事は確かだった。
俺は今、腹を立てている。
それも、割と猛烈に。
だから、周りの事はあまり見れなくなっていた。
「あのさ、なんで喧嘩になったかは俺らにはよく分からないけど、ちゃんと話合った方がよくね?」
話しかけてきたのは柔道部の人間だった。
ちらりと百目鬼を見て、「打ち上げは別に今日じゃなくてもいいし、ちゃんと悔いの無いように話た方がいい。」と言った。
悔いの意味がよく分からなかった。
だけど今はそれを気にする余裕が無かった。
喜べばいいじゃないか。
あんなに綺麗に勝ったのだから。
百目鬼が何に引っかかって、無かったことにしたいのかが分からなかった。
ただ、自分が何に腹を立てているのかだけは、今度はちゃんと分かっていた。
静かに、百目鬼が言った。
それはまるで、話を逸らしたみたいに聞えた。
人前だから、というよりも百目鬼本人がその話をしたく無い様だった。
確かに馬鹿な提案はした。
それに周りには他の柔道部員もいる。
けれど、負けた人間がいるから話を変えた風にも見えない。
明らかに百目鬼自身が話したくないのだろう。
は? と思った。
だって百目鬼は、前に俺がその言葉を聞きたくないという雰囲気を察して、あの無茶苦茶な告白をやめてくれただろうか。
そんな俺の思考をぶった切る様に百目鬼は「もうその話はいいから」と言った。
その話は昨日の話のことなのだろう。
無かったことにしたいのだと気が付く。
お前が、告白してきたんだろ! お前が!!
その内容が滅茶苦茶なものだったとしても、なんでも、百目鬼が俺に告白してきたんだろ。
なんで俺が丁寧にお断りされてるみたいな話になってるんだよ。
「はあ?」
思ったより苛立っている声が出た。
彼は県大会で優勝して、お祝いを言うつもりだった。
打ち上げもあるだろうし、同じ部活内の敗者を労わるのだろう。それも理屈では分かっていた。
それなのに出た声はこれだ。
だけど、これは仕方がないだろう。
「今から、ちょっといいか?」
「試合をするって約束は、全国が終わってからのつもりだが。」
「そうじゃない!」
そんなものを今からするつもりはない。
ただ、あの時と似たような苛立ちだという事は確かだった。
俺は今、腹を立てている。
それも、割と猛烈に。
だから、周りの事はあまり見れなくなっていた。
「あのさ、なんで喧嘩になったかは俺らにはよく分からないけど、ちゃんと話合った方がよくね?」
話しかけてきたのは柔道部の人間だった。
ちらりと百目鬼を見て、「打ち上げは別に今日じゃなくてもいいし、ちゃんと悔いの無いように話た方がいい。」と言った。
悔いの意味がよく分からなかった。
だけど今はそれを気にする余裕が無かった。
喜べばいいじゃないか。
あんなに綺麗に勝ったのだから。
百目鬼が何に引っかかって、無かったことにしたいのかが分からなかった。
ただ、自分が何に腹を立てているのかだけは、今度はちゃんと分かっていた。
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