一から百まで

渡辺 佐倉

文字の大きさ
上 下
20 / 101

20

しおりを挟む
父から道場への立ち入りを再び許可されたのはその日の事だった。

何故今日なのかは俺自身よく分からない。

妹に「よかったね。お兄ちゃん。」と言われて思わず笑顔を浮かべる。

「柔道部入るの?」

彼女の友達が柔道部のマネージャーだかをしていた気がする。
だから妹も知っているのだろう。

「入らないよ。」
「なーんだ。」

見学に行ったって言われたから。と妹が言う。

「百目鬼先輩のことはもう怒ってないの?」

元々怒っていたのだろうか。変な告白に腹は立っていたが別に罰ゲームでは無かった様だからどう整理をつけたらいいのかは自分でも分からない。

「そう言えば、なんかみんながニヤニヤしてたけど。」

お前友達になんか聞いてるか?
そう妹聞くと、今度は妹がニッコリと笑った。

「柔道部の子はみんな百目鬼先輩の恋を応援してるから。」
「は?」

男同士が物珍しいって事なのか何なのか。

「だって、あの先輩すっごいいい人だから。」

だからあの人の知り合いは大体応援してるよ。

「さっきの笑顔、百目鬼先輩に見せてあげればいいのに。」

きっと先輩喜ぶよ。
そう妹にいわれてなんとも言えない気持ちになる。

「男同士だぞ。そんななこと言われてもなあ。」
「今日日そんな事、少なくとも私は気にしないけどね。」
「はあ?」

まあそういうものなのか。

「でも、あれだぞ。」
「先輩。お兄ちゃんの前でだけちょっと残念だよね。」

残念という話なのだろうか。
そういう問題じゃない気がすることばかり妹は言うけれど、あまり気にならなかった。

「まあいいや。」

そんな事よりも道場で体を動かせることが楽しみだった。

「ふーん。もっとお兄ちゃん嫌がったりするかと思った。」

それには上手く返せる言葉が見つからなかった。

「先輩の事、私が後押ししちゃったみたいなものだから安心した。」

柔道部の事情に詳しいとは思っていたが、あの日の妹の様子と照らし合わせてようやく合点がいく。

「あいつと知り合いだったんだな。」
「……ごめんなさい。」

別にその辺はもうどうでもいい。

「気にするな。」

別に俺の事を何か話してしまってるとしても、それほど気にならない。

それに今日から元通りなのだ。

元通りにならないのは、あいつとそれから俺の感情だけなのかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男の子たちの変態的な日常

M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。 ※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

部活でのイジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全三話 毎週日曜日正午にUPされます。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

貞操観念が逆転した世界に転生した俺が全部活の共有マネージャーになるようです

卯ノ花
恋愛
少子化により男女比が変わって貞操概念が逆転した世界で俺「佐川幸太郎」は通っている高校、東昴女子高等学校で部活共有のマネージャーをする話

姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛
青春
 俺には二人の容姿端麗な姉がいる。 自慢そうに聞こえただろうか?  それは少しばかり誤解だ。 この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ…… 次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。 外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん…… 「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」 「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」 ▼物語概要 【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】 47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在) 【※不健全ラブコメの注意事項】  この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。  それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。  全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。  また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。 【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】 【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】 【2017年4月、本幕が完結しました】 序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。 【2018年1月、真幕を開始しました】 ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)

処理中です...