一から百まで

渡辺 佐倉

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放課後、柔道場に向かう。
さすがに制服でという訳にもいかないのでジャージを着た。
えりがないと組みあえないだろうなと思うけど、柔道部の友達もいないし、百目鬼に貸してと言うのもなんとなく嫌だった。

柔道場に着くと、若干の人がいた。
騒いでいる野次馬達を縫うようにして、小柄な女子生徒がこちらへ来る。

それが自分の妹だとすぐに気が付く。
もしかして、妹まで何か言われてるのではと心配になる。

「お兄ちゃん、大丈夫なの?」

俺の元まで来た妹、春香に言われて「まあ、何とかする。」と答える。

「足は?」
「だから、足はとっくの昔に治ってるから。」

無理しないでね。と言われて頷く。

「春香はなんか嫌な事言われてないか?」
「別に大丈夫だよ。」

ふわりと笑った妹は可愛い。

「どちらにせよ、春香に迷惑かける前に終わらせるべきだな。」
「ちょっ、もしかして本気でやるつもり?」

春香が慌てて聞く。

「相手は柔道の全国大会の出場者だぞ。」
「お父さんの許可とって無いのに!」

柔道着を着ている百目鬼をチラリと見る。

「そこは後でちゃんと謝るよ。」
「なんで謝る前提なの!」

春香に言われるが、今例えば携帯で聞いたとしてもいいと言ってくれる筈がないのだならば、事後承諾にするしかない。

「百目鬼先輩に怪我をさせない様にね。」
「善処します。」

これだけ大掛かりになっているのだ。罰ゲームだとしてもこれでお終いだろう。
ならば、こんなアホみたいな時間をかけさせた落とし前は付けて欲しい。

ただそれだけだった。
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