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逆行後

二度目20

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「僕は……」

今までままならなかった人生をそうでなくする提案が二つ出されている。

「僕は、オメガ因子を排除する方法を知りたいです。
叶うなら、今発情期があることで困っているオメガに選択肢をあげたい」

それからきちんとノヴァ様を見る。

「でも、願えるなら僕はノヴァ様のつがいになりたい」

卑怯な僕は彼の告白に今まで何も答えてこなかった。
未来の無い自分に彼を巻き込んでしまっていいのかずっと悩んできた。
未来を希えるのなら、願ってしまいたい。


「どちらか選べなくてごめんなさい」


僕がそう言うとノヴァ様は「別にいいんじゃないのか? 選ばなくても」と言った。


「どうせ圧倒的にこっちが有利な話し合いだ。
あっちは種族全体の存亡をかけてるんだから気にしなくていい」

そう言って笑った。

「それに、ユーリが俺を選んでくれて、いまだったらなんだって出来そうな気分なんだ」

いつもより砕けた口調でノヴァ様は言った。
ノヴァ様の赤い瞳が嬉しそうに細められる。

* * *

それからノヴァ様と魔王は長い長い話し合いをした。
お互いにお互いを害さないこと。
魔族はどの範囲からこちらに出てこないか。
ノヴァ様は勇者として啓示を正式に受けないこと、神殿とは協力しないこと。

それからオメガ因子と呼ばれるオメガの発情する原因を抑える方法。

魔族領はノヴァ様と魔王が協力して結界を張って人間たちから隠されることになった。
オメガ因子を抑えるには薬草と魔法を組み合わせればノヴァ様であれば可能らしい。
長期的には研究を重ねてノヴァ様でなくても可能にしていくことが目標だ。

全て決まって魔法で契約書を交わした。
最後に、魔王自身がノヴァ様をアルファにしてくれるらしい。

心臓がどきどきする。
僕の性別が変わる訳ではないのに緊張しているのかもしれない。

魔王が何か人では聞き取れない呪文を長々と唱える。
大きな魔法陣が浮かぶ。

それにどんな意味があるのかは分からないけれど、ノヴァ様はその魔法陣を見て納得したようにうなずいていたから、何か理屈のあるものなのだろう。

それから数十秒だったと思う。
実際はそれよりも短かったのかもしれないし、長かったのかもしれない。
魔法陣が消えると、ぶわりと甘い匂いが強くなった。

「アルファになると感じる香りが変わるんだな」

ノヴァ様がそう言った。

「特に運命ってやつは香りが違うらしいよ」

魔王がそう言った。
運命の番なんて伝説上のものだ。

「女神ってやつが選んだ二人だ。そういうもんにきまってるだろ」

全く世の中ってやつは魔族に不公平にできている。
そう魔王はぶつくさと言った。
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