死に戻りオメガと紅蓮の勇者

逆行後

二度目１９

「二人で話がしたい」

ノヴァ様がそう言うと、僕たち二人以外が色を失ったようになった。


「少し空間をずらす魔法を使っただけだから大丈夫です」

ノヴァ様は僕にそう言った。

「ユーリはどうしたいですか？」


まるで、僕の幸せは何かと尋ねたときの様な真摯で優しい声だった。

「俺を殺そうとしてあなたを殺した世界のことは気にしなくていい」

魔王と戦ったところで待っているのはあの未来だとでもいう様にノヴァ様は言った。
ノヴァ様はあの未来にだけは絶対にしたく無い様だった。

僕はどうしたいか……。

ノヴァ様がアルファになって僕と番になれば僕は発情期に悩まされることは無くなる。
他の誰も僕の匂いには反応しなくなるので普通の生活が送れるだろう。

僕がオメガではなくなれば僕はこうやって人里離れた場所でいつか来るであろう発情期に怯えて過ごさなくていいだろう。
平民はいちいちアルファだのオメガだのと気にしないらしい。
ベータに溶け込んで暮らしていけばいい。
ノヴァ様のことはベータ同士だったと考えてこれからについて考えればいい。

どちらもいい話の様に思える。
アルファは優れていると聞く。
ノヴァ様がアルファになった方がノヴァ様は生きやすくなるのではないだろうか。

死に戻る前の貴族たちの糾弾を思い出してしまう。

「あなたの望む形が俺はいい」

僕の考えを見通したみたいにノヴァ様は言った。
深呼吸をする。

僕の望み。僕の願い。

自分のオメガという性をなくすために調べた様々な知識。
オメガの実情。
それが頭の中を駆け巡っていく。

ああ、本当に僕は欲深い人間なのかもしれない。