21 / 34
逆行後
二度目13
しおりを挟む
* * *
その日は月の無い真っ暗な日だった。
性別判定の儀式のために神殿の外は明々と松明が燃えている。
まばゆいほどに燃え上がる松明が点々と置かれている中僕と同じ年ごろの貴族たちが一家族ずつ神殿の奥に進んでいく。
中は大きなホールになっておりその中心に一抱えもありそうな宝玉が置かれている。
そこに手をかざすと自分がアルファなのかベータなのかオメガなのか分かる。
ベータだと何も反応せず、アルファであれば宝玉は金色に光るらしい。
時々、金色に光ったのであろう、その貴族と派閥の者たちがわっと歓声ををあげるのが聞こえる。
初めての夜。僕はこうやって並びながらドキドキしていた。
自分の人生がこの先どんなものになるのか期待を膨らませていた。
なんなら、もしかしたらアルファかもしれないなんて思ってさえいた。
今はもう未来をちゃんと知っている。
静かに順番を待つ僕に両親は、緊張しているのだろうと勘違いしているようだった。
その心配する仕草ももう少しで見れなくなることを知っている。
彼は今日迎えに来てくれると言っていた。
必ず彼は来てくれるという確信があった。
少しだけしか話したことは無いけれど、彼はあらゆる手段を使って約束を守ってくれるだろう。
持ち出す荷物については昨日までに考えていた。
けれど、結局必要なものはあまり思い浮かばず、換金するための宝石や金をいくつかポケットに忍ばせるだけにした。
僕が直接雇用している使用人はいない。
これで僕が消えてもきっと何も変わらない日々が続くのだろう。
儀式は次々と進んでいよいよ僕の番になった。
宝玉に手をかざす僕を両親が並んでみている。
結果はもう知っている。
宝玉は白く光った。
オメガである証の色だった。
両親の悲鳴が聞こえるのとほぼ同時だったように思う。
最初、鳥が沢山羽ばたいているのだと思った。
けれど、その一つ一つが魔法で作られた宝石でできた蝶なのだと気が付いた。
それが僕を取り囲む。
宝石の蝶はまばゆく光っていた。
ああ、彼が迎えに来てくれたのだと思った。
「約束を守ってくださってありがとうございます」
姿の見えない彼に言うと、宝石の蝶は一際まばゆく輝いた。
目を開いているのも辛い明るさで思わず目を閉じる。
しばらくすると光は穏やかになった様だった。
目を開くとそこはもう神殿ではなかった。
その日は月の無い真っ暗な日だった。
性別判定の儀式のために神殿の外は明々と松明が燃えている。
まばゆいほどに燃え上がる松明が点々と置かれている中僕と同じ年ごろの貴族たちが一家族ずつ神殿の奥に進んでいく。
中は大きなホールになっておりその中心に一抱えもありそうな宝玉が置かれている。
そこに手をかざすと自分がアルファなのかベータなのかオメガなのか分かる。
ベータだと何も反応せず、アルファであれば宝玉は金色に光るらしい。
時々、金色に光ったのであろう、その貴族と派閥の者たちがわっと歓声ををあげるのが聞こえる。
初めての夜。僕はこうやって並びながらドキドキしていた。
自分の人生がこの先どんなものになるのか期待を膨らませていた。
なんなら、もしかしたらアルファかもしれないなんて思ってさえいた。
今はもう未来をちゃんと知っている。
静かに順番を待つ僕に両親は、緊張しているのだろうと勘違いしているようだった。
その心配する仕草ももう少しで見れなくなることを知っている。
彼は今日迎えに来てくれると言っていた。
必ず彼は来てくれるという確信があった。
少しだけしか話したことは無いけれど、彼はあらゆる手段を使って約束を守ってくれるだろう。
持ち出す荷物については昨日までに考えていた。
けれど、結局必要なものはあまり思い浮かばず、換金するための宝石や金をいくつかポケットに忍ばせるだけにした。
僕が直接雇用している使用人はいない。
これで僕が消えてもきっと何も変わらない日々が続くのだろう。
儀式は次々と進んでいよいよ僕の番になった。
宝玉に手をかざす僕を両親が並んでみている。
結果はもう知っている。
宝玉は白く光った。
オメガである証の色だった。
両親の悲鳴が聞こえるのとほぼ同時だったように思う。
最初、鳥が沢山羽ばたいているのだと思った。
けれど、その一つ一つが魔法で作られた宝石でできた蝶なのだと気が付いた。
それが僕を取り囲む。
宝石の蝶はまばゆく光っていた。
ああ、彼が迎えに来てくれたのだと思った。
「約束を守ってくださってありがとうございます」
姿の見えない彼に言うと、宝石の蝶は一際まばゆく輝いた。
目を開いているのも辛い明るさで思わず目を閉じる。
しばらくすると光は穏やかになった様だった。
目を開くとそこはもう神殿ではなかった。
73
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。
N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ
※オメガバース設定をお借りしています。
※素人作品です。温かな目でご覧ください。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
オメガバース 悲しい運命なら僕はいらない
潮 雨花
BL
魂の番に捨てられたオメガの氷見華月は、魂の番と死別した幼馴染でアルファの如月帝一と共に暮らしている。
いずれはこの人の番になるのだろう……華月はそう思っていた。
そんなある日、帝一の弟であり華月を捨てたアルファ・如月皇司の婚約が知らされる。
一度は想い合っていた皇司の婚約に、華月は――。
たとえ想い合っていても、魂の番であったとしても、それは悲しい運命の始まりかもしれない。
アルファで茶道の家元の次期当主と、オメガで華道の家元で蔑まれてきた青年の、切ないブルジョア・ラブ・ストーリー
愛しているかもしれない 傷心富豪アルファ×ずぶ濡れ家出オメガ ~君の心に降る雨も、いつかは必ず上がる~
大波小波
BL
第二性がアルファの平 雅貴(たいら まさき)は、30代の若さで名門・平家の当主だ。
ある日、車で移動中に、雨の中ずぶ濡れでうずくまっている少年を拾う。
白沢 藍(しらさわ あい)と名乗るオメガの少年は、やつれてみすぼらしい。
雅貴は藍を屋敷に招き、健康を取り戻すまで滞在するよう勧める。
藍は雅貴をミステリアスと感じ、雅貴は藍を訳ありと思う。
心に深い傷を負った雅貴と、悲惨な身の上の藍。
少しずつ距離を縮めていく、二人の生活が始まる……。

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる