死に戻りオメガと紅蓮の勇者

渡辺 佐倉

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逆行後

二度目12

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もしも僕がオメガでなければ。
色々なものが見てみたいと思った。

世の中にあるきれいなもの、いい匂いのするもの、美味しいもの、それから目を奪われるような景色を見てみたい。

そんなこと最初の人生でだって考えてもみなかった。
貴族の義務を果たしたい、じゃないところが僕らしいのかもしれない。



そう正直に伝えたらノヴァ様は笑顔を浮かべた。
もしかしたら世の中にある一番きれいなものは目の前の彼の瞳じゃないかとすら思う。



「オメガじゃなくなる方法を探そう。
……オメガと判定される日は?
方法が見つからなかったらその日君を迎えにいくよ」

あの日のことを忘れたことは無い。
判定をする魔道具の前で絶望したあの日のことを今も何度も思い出す。

貴族が判定をするのは基本的に決まった日だ。
それが変わるようなことは直前に王族が亡くなるなどが無ければあり得ない。

世間の流れが最初と違っているようには思えないので多分今回も同じ日なのだろう。

「芒種の月、朔の日に大神殿で行われます」

僕がそう言うと、ノヴァ様は一回だけ頷いて「必ず迎えに行くから」と言った。
オメガをベータにする方法は聞いたことが無かった。

知っていたらきっとそれにすがって生きていたかもしれない。
けれど、そんな方法はない。

どちらにせよ、発情期が来れば人里を離れ一人で過ごさねばならないのだから意味が無いのかもしれない。
それでも、その日が最後の日から少しだけ楽しみな日に変わったのは事実だった。

束の間の自由であったとしても、それでもこの優しい人と過ごしてみたいと思った。
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