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逆行後
二度目10
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「そうですね……。
旅、がしてみたかったかもしれません」
突然言われても思い浮かんだものはそれしかなかった。
あの閉じ込められた離れから出てみたい。そんな気持ちが多い。
「旅か……」
ノヴァ様はそう言った。
彼に返された言葉を聞いて一つの事実に思い当たる。
彼にとって旅というのは魔王討伐のそれではなかったのかと。
「魔王討伐の旅は辛かったですか」
僕が聞くと、ノヴァ様は少し驚いた様に目を見開いて、それからくしゃくしゃな顔をして笑った。
「辛くなかったと言えば嘘になるけど、楽しい瞬間も確かにありましたよ」
ノヴァ様はそう言った。
「また、魔王討伐の旅に行くんですか?」
世界が巻き戻ってしまったという事はまた魔王が出現して人間たちと争いになるのだろう。
「俺の魔法の力は逆行前と変わってないんだよ。
だから、今回は前みたいに険しい旅ではなさそうです」
ノヴァ様はそう言った。
彼はまた魔王を倒しに行くのだ。
そういう使命を負った人なのだ。
「今のうちに勇者だと名乗り出て、婚約者をお決めください」
前回、彼が不幸だったのはそれだ。
僕しか相手がおらず、その上ギリギリになってベータだとわかった。
「ベータだと告げて、もっといい奥さんをもらった方がいいです」
今なら良家の子女がまだ婚約していない場合も多い。
ノヴァ様は僕がそう言うと今までで一番大きなため息をついた。
「あなたの価値観と俺の価値感が違うとは思っていましたがここまで頑固だとは……」
ノヴァ様を何かにあきれさせてしまったことだけは僕にもわかった。
旅、がしてみたかったかもしれません」
突然言われても思い浮かんだものはそれしかなかった。
あの閉じ込められた離れから出てみたい。そんな気持ちが多い。
「旅か……」
ノヴァ様はそう言った。
彼に返された言葉を聞いて一つの事実に思い当たる。
彼にとって旅というのは魔王討伐のそれではなかったのかと。
「魔王討伐の旅は辛かったですか」
僕が聞くと、ノヴァ様は少し驚いた様に目を見開いて、それからくしゃくしゃな顔をして笑った。
「辛くなかったと言えば嘘になるけど、楽しい瞬間も確かにありましたよ」
ノヴァ様はそう言った。
「また、魔王討伐の旅に行くんですか?」
世界が巻き戻ってしまったという事はまた魔王が出現して人間たちと争いになるのだろう。
「俺の魔法の力は逆行前と変わってないんだよ。
だから、今回は前みたいに険しい旅ではなさそうです」
ノヴァ様はそう言った。
彼はまた魔王を倒しに行くのだ。
そういう使命を負った人なのだ。
「今のうちに勇者だと名乗り出て、婚約者をお決めください」
前回、彼が不幸だったのはそれだ。
僕しか相手がおらず、その上ギリギリになってベータだとわかった。
「ベータだと告げて、もっといい奥さんをもらった方がいいです」
今なら良家の子女がまだ婚約していない場合も多い。
ノヴァ様は僕がそう言うと今までで一番大きなため息をついた。
「あなたの価値観と俺の価値感が違うとは思っていましたがここまで頑固だとは……」
ノヴァ様を何かにあきれさせてしまったことだけは僕にもわかった。
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