死に戻りオメガと紅蓮の勇者

逆行後

二度目8

「それは、違う」

ノヴァ様ははっきりとした口調でそう言った。

オメガの僕では何もできなかったことに対するやさしさで嘘をついてくれたのか、それともあの時の僕の行動に本当に意味があったのかは僕には分からなかった。

「僕みたいなのが婚約者でごめんなさい。
僕がちゃんと女だったら、もっと、きっと――」

ジワリと瞼に涙があふれる。

僕のあの人生での暮らしなんてノヴァ様に何も関係が無いのに、勝手に泣いてしまうなんて、どれだけ迷惑なことだろうか。
でも僕にもっと自由があって勉強ができていたら、ノヴァ様の置かれていた状況をきちんと貴族として知ることが出来ていたら、違う結末が迎えられたのでは？と今更ながら思ってしまった。

「それでも俺がベータなことには変わりがないでしょう？」

ノヴァ様は僕にそう言った。

「ち、違います！」

それは全然違う。
だってノヴァ様は実際すごい人だ。

「俺はベータの平民です。
あなたは貴族令息だ」

本当ならこんな風に会話ができる立場じゃないことは知っています。
ノヴァ様はそう言った。

「男と結婚させられると聞いて驚いたけれど。
あの顔合わせの席でなんてきれいな人なんだろうと思いました」

ノヴァ様はそう言った。
こう言ってはあれだけれど、僕は人並の容姿だと思う。
確かに僕は成長期らしい成長期も無く、あの時の僕は屈強というのとは程遠い存在だっただろう。
けれど、きれいな人だと思われる要素が無い。

「あなたは貴族しか見たことが無いからきっと分からないのでしょう」

だからこそ俺は悩んでいます。
ノヴァ様は僕を見つめてそう言った。

彼の悩みとは何だろうと僕は思った。