死に戻りオメガと紅蓮の勇者

渡辺 佐倉

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逆行後

二度目4

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彼も、時を遡ってしまったのだと気が付く。

「何故!?
……もしかしてあの場を切り抜けられなかったのですか?」

僕がもっと上手くやればノヴァ様はあの場から逃げられたのだろうか。

「いや……。
あの場で俺よりも強い人間は誰もいなかったろう?」

ノヴァ様が言う。
では何故……。

「あの後、ノヴァ様はちゃんと幸せになれましたか?」

彼はあの時護国の英雄だった。
彼こそ、一番幸せにならねばならぬ人だった。

だから僕は一番気になっていたことを聞いた。

ノヴァ様はじっとこちらを見た。

それから「君にとっての幸せって何ですか?」と聞いた。

そんなものもう忘れた。
それが偽らざる答えなのだけれど、答えるのに躊躇した。

オメガだと判定されてからそんなものについて考えるのはやめてしまった。
だけど、僕がノヴァ様に求めていたこと、それは一つだけだ。

「……報われて欲しい」

彼がこの国を救ったのだから、彼には報われて欲しい。
僕はあの時多分そういう気持ちだったのだろう。

ノヴァ様は困ったように笑った。

「そうですね――」

そう言った後、少し感がる様に瞳を閉じる。
それから「それじゃあ、この人生は俺が報われるように生きます」と言った。

やはり、あの後彼は報われない人生だったのだろうか。
ノヴァ様はどの段階で過去に戻ってしまったのだろう。

僕がそれを聞こうとしたとき、ノヴァ様は人差し指をたてに唇にあてた。

「時間切れみたいです。
また来ます」

そう言った次の瞬間ふわりと風が吹いた。
次の瞬間ノヴァ様は闇夜に消えてしまった。

何も分からなかった。
けれど、今少なくともノヴァ様が生きているそれが分かった。

僕にとってはそれで充分すぎた。

彼があの後幸せに過ごせたのかは分からないけれど、それでも今度こそあの人が幸せになって欲しい。

そこまで考えたところで僕は、彼に、ノヴァ様にきちんと謝れていないことに気が付いた。
僕は彼を勝手にアルファと勘違いして番になる前提で話をしてしまっていたことを謝るべきだったのに、それが何もできなかった。
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