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逆行後

二度目1

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◆ ◆ ◆

目を覚まして、その勢いで起き上がる。
その時に自分の体が随分と軽いことに気がつく。

オメガとして初めての発情期がきて以降いつでも体が重い様な気がしていた。
それが全くないことを不思議に思う。

部屋に誰かが入ってくる。
そんなことはもうほとんど無かった。
オメガとの事故を恐れて誰も僕の部屋にはあまり近寄らなかったから。

入ってきた人間が自分の兄だとすぐに気が付いた。
けれどおかしい、その兄の姿は記憶にある限り十年ほど前の兄の姿だ。

まだ、少年という雰囲気を残した兄は「おい、早く起きないと家庭教師の先生がきてしまうぞ」と言って笑った。

家庭教師はオメガと判定されて以降不要となっていた。
あわてて自分の手をまじまじと見る。

細い幼い手で驚く。

これはどういう事だろう。
それよりもノヴァ様はどうなってしまったのだろう。

僕は飛び起きると鏡に向かった。

そこには見覚えのある自分の顔が映っていた。
けれど、それは兄と一緒で十年前の記憶にある自分の顔だ。

慌てて顔を洗って着替えて朝食をかきこんで、それから兄と家庭教師の先生の元へ向かった。

長らく入室を許されていなかったサンルームには僕と兄のために机が準備されている。

先生は記憶の通り優し気にこちらを見ていた。

何もかも記憶の通りだった。
これは死ぬ前に見る夢というやつなのだろうか。

それならば、オメガと判定される前の日までで終わって欲しい。

けれど、夢だとしても、あの優しかった人に一言この先自分の身を守れるようにと伝えたいと思った。
彼は平民出身で寒村で暮らしていたと言っていた。

彼をもう一目見て、彼に自由に生きて欲しいと願う事くらい許されるだろうか。
ここが夢の世界なら可能ではないか。

僕がそんなことを考えていると、先生に集中してないことを注意されてしまった。
慌てて、開いている本に視線を向けた。
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