死に戻りオメガと紅蓮の勇者

最初の人生

一度目４

僕がノヴァ様に下賜される日が来た。
結婚式はしない。パーティも無い。

国王陛下から僕を褒章として渡して婚姻が成立する。
両親に準備された服は無駄に贅がこらされていて、青っ白い自分には不釣り合いな気がした。

僕に求められていることは何もないことは知っている。
だから、今日はただ静かにしていればいいと思っていた。

番になるのだから、うなじを噛まれる時だけのはずだ。僕が必要なのはそれだけだった。

婚姻としての契約の儀式としてうなじを噛むとアルファとオメガは番になる。
それはとても幸せな気持ちになると読んだ本には書いてあった。

実際どんな気持ちになるのかは想像もつかない。

◆　◆　◆

「なに？　もう一度申してみよ」

儀式に参加している貴族たちがざわめいたのが分かった。
玉座にいる国王陛下が訝し気に聞く。


「私は、アルファではありません」

はっきりとノヴァ様は言った。

彼に爵位を渡すための会は和やかに進み、僕との婚姻のための儀式に移っていた。

うなじを噛む段になって、ノヴァ様は戸惑っていた。
僕は首に巻いたチョーカーを外してノヴァ様の前にうなじを差し出した。

これで彼が噛めば番の儀式は終了だ。

戸惑ったままのノヴァ様は、それでもはっきりとした声で「私はアルファではありませんのでこのような儀式は不要です」と言った。

この国ではアルファこそ能力が高く力があり、だからこそ国を治めることが出来ると考えられている。
力があるものは当然アルファなのだろう。
僕も含めて誰もが思っていた。

だから、魔王を倒したノヴァ様もアルファなのだろうと誰もが疑っていなかった。
誰もノヴァ様に性別を聞かなかったし、アルファだと思ったからこそ僕を与えようとした。

「あり得ない……」

誰かがそう言ったのが聞こえた。

この国ではあってはならないことがおきてしまった。
それだけは僕にもわかった。