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最初の人生
一度目2
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婚約式も結婚式もしないと聞いた。
予想通り、僕は子供を産むために彼の元へ行くのだと思った。
アルファの子はできにくい。
アルファこそ選ばれし優秀な者と考える人々にとってアルファの血が次世代に受け継がれるのはとても大切なことだった。
オメガはアルファの子をよく孕む。
しかも生まれてくる子は極端にアルファかオメガの場合が多い。
優秀な勇者の血を次に残すためにオメガである自分が選ばれたことは明白だった。
爵位の継承だって、アルファの長子と決まっている位なのだ。優秀な者が優秀な者に跡を取らせることが義務だ。
勇者様もきっとそう説明を受けたのだろう。
けれど、宮廷の一角で顔合わせをすると伝えられて向かった先で彼は僕を見るなり酷く驚いた顔をしていた。
その顔をみて、ああ、この人は結婚相手が女の人なのだと思っていたのだろうと気が付いた。
男の僕が来てきっと酷くがっかりされてしまっただろう。
けれど、それを伝えて何になるのだろう。
その人は黒い髪と美しい赤色をしていた。
赤く煌めく瞳が炎のようで紅蓮と呼ばれているのだろうかと思ってしまう美しい瞳に思えた。
それから、顔に大きな傷があった。
その傷口はまだ最近出来たかのように見える。
勇者様は僕をまじまじと見て、それから「初めまして。ノヴァと言います」とあいさつをしてくれた。
僕も貴族式の礼をとった後、「ユーリ・アゲートと申します」と答えた。
「ユーリ」と口の中で転がすようにノヴァ様が言った後、優しい笑みを浮かべ二人で席に着く。
そこには簡単な茶会の準備がされていた。
「君はいいのかい? こんな名字もない平民との結婚は」
紅茶を一口飲む。
人払いはされていた。偉業を成し遂げた勇者への配慮がうかがえる状態で彼は聞いた。
「僕はオメガですから」
それがすべての答えだと思った。
オメガの役目は子を孕むためだけにある。
けれど目の前のノヴァ様は不思議そうに僕を見た。
「オメガだから?」
不思議そうな顔をしてノヴァ様が聞いた。
本当に不思議そうな顔をしていて、何かを試す目的で聞いていないことが分かる。
彼は平民出身だから僕たちと知識が違うのだろうか。
「オメガは孕み袋ですから」
少し自嘲気味になってしまったことは許して欲しい。
そんなことは充分に知っているけれど、それを自分から言う事が辛くないかと言ったらウソになってしまうから。
予想通り、僕は子供を産むために彼の元へ行くのだと思った。
アルファの子はできにくい。
アルファこそ選ばれし優秀な者と考える人々にとってアルファの血が次世代に受け継がれるのはとても大切なことだった。
オメガはアルファの子をよく孕む。
しかも生まれてくる子は極端にアルファかオメガの場合が多い。
優秀な勇者の血を次に残すためにオメガである自分が選ばれたことは明白だった。
爵位の継承だって、アルファの長子と決まっている位なのだ。優秀な者が優秀な者に跡を取らせることが義務だ。
勇者様もきっとそう説明を受けたのだろう。
けれど、宮廷の一角で顔合わせをすると伝えられて向かった先で彼は僕を見るなり酷く驚いた顔をしていた。
その顔をみて、ああ、この人は結婚相手が女の人なのだと思っていたのだろうと気が付いた。
男の僕が来てきっと酷くがっかりされてしまっただろう。
けれど、それを伝えて何になるのだろう。
その人は黒い髪と美しい赤色をしていた。
赤く煌めく瞳が炎のようで紅蓮と呼ばれているのだろうかと思ってしまう美しい瞳に思えた。
それから、顔に大きな傷があった。
その傷口はまだ最近出来たかのように見える。
勇者様は僕をまじまじと見て、それから「初めまして。ノヴァと言います」とあいさつをしてくれた。
僕も貴族式の礼をとった後、「ユーリ・アゲートと申します」と答えた。
「ユーリ」と口の中で転がすようにノヴァ様が言った後、優しい笑みを浮かべ二人で席に着く。
そこには簡単な茶会の準備がされていた。
「君はいいのかい? こんな名字もない平民との結婚は」
紅茶を一口飲む。
人払いはされていた。偉業を成し遂げた勇者への配慮がうかがえる状態で彼は聞いた。
「僕はオメガですから」
それがすべての答えだと思った。
オメガの役目は子を孕むためだけにある。
けれど目の前のノヴァ様は不思議そうに僕を見た。
「オメガだから?」
不思議そうな顔をしてノヴァ様が聞いた。
本当に不思議そうな顔をしていて、何かを試す目的で聞いていないことが分かる。
彼は平民出身だから僕たちと知識が違うのだろうか。
「オメガは孕み袋ですから」
少し自嘲気味になってしまったことは許して欲しい。
そんなことは充分に知っているけれど、それを自分から言う事が辛くないかと言ったらウソになってしまうから。
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