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本編4
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夜、忍び込んだ王様の部屋で見た王様は酷くやつれていて、つむった目の下にはくっきりと隈が浮かんでいた。
鍵が変わっていなくてよかった。寮部屋変更手続きのどさくさで手元に残った鍵を見つめながら思う。
王様は王様では無かった。
王様より能力の高いものもいるし、恋に破れもした。
自分がいた時と同じようにベッドサイトには椅子が置いてあった。
そこに座る。
神子がいた時には彼が座っていたのだろうかと考えて止めた。
神子はもう彼の元へはきっと戻ってこないのだから。
すうっと息を吸い込んだ。
唄う。
直接聞いたことは無いけれど、彼の一番好きだった曲だ。
神子の様に何か効果がある訳でもない普通の声だ。
久しぶりに歌った。
パートナー解消後は、一度も歌ったことがなかったのだ。
憔悴しきっている彼はきっと起きない。
だから、自己満足のために来れた。
「……小夜啼鳥か?」
だから、彼の声が聞こえて驚いた。
自分のことをペットの鳥の様にいう彼の声が聞こえて歌うのを止めた。
「お前の声は美しいなあ。」
彼は泣いていた。そんなところは初めて見た。
そもそも怒りであるとか悲しみであるとか、彼が負の感情を抱いていると悟らせることは無かったのだ。
泣き止みそうにないので、先程の続きを歌った。
曲が終わると、彼は起き上がっていていた。
ただ、目尻にはまだ涙が浮かんでいる。
「なんで、戻ってきてくれた。」
静かに聞かれる。
理由は一つでは無い。自分でも整理しきれない部分もある。
「……何も持っていなかった俺を見つけてくれたから、ですかね。」
何をしたらいいかも分からなかった自分を見つけてくれて、歌を唄えと言ってくれた、この人を例えそれが興味本位でそれで要らなくなったら捨てただけだとしても憎むことはできない。
どうやって、先に進むか分からなかった自分に最初に光明をもたらしてくれたのは、やっぱりこの人なのだ。
彼はまた涙をこぼした。
「この気持ちを何て呼んだらいいんだろうな。」
彼が彼自身の胸を押さえて言った。
何が言いたいのか分からず首をかしげると「もう一曲歌ってくれないか?」と聞かれた。
思いついたのが駆け落ちをする恋人の歌で、一度思い浮かんでしまうとそれしか浮かばず仕方なく歌った。
歌い終わって口を閉じると、彼は泣きながらも微笑んでいた。
「ずっと、お前に歌っていて欲しい、小夜啼鳥。」
何を言われているのか分からなかった。
口をただ戦慄かせていると
「愛してるんだ。」
彼はそう続けた。
今更と思わなかったと言ったら嘘になる。
でも涙が止まらなかった。
きっと、自分はずっと彼のためだけに歌を唄うと思う。
了
鍵が変わっていなくてよかった。寮部屋変更手続きのどさくさで手元に残った鍵を見つめながら思う。
王様は王様では無かった。
王様より能力の高いものもいるし、恋に破れもした。
自分がいた時と同じようにベッドサイトには椅子が置いてあった。
そこに座る。
神子がいた時には彼が座っていたのだろうかと考えて止めた。
神子はもう彼の元へはきっと戻ってこないのだから。
すうっと息を吸い込んだ。
唄う。
直接聞いたことは無いけれど、彼の一番好きだった曲だ。
神子の様に何か効果がある訳でもない普通の声だ。
久しぶりに歌った。
パートナー解消後は、一度も歌ったことがなかったのだ。
憔悴しきっている彼はきっと起きない。
だから、自己満足のために来れた。
「……小夜啼鳥か?」
だから、彼の声が聞こえて驚いた。
自分のことをペットの鳥の様にいう彼の声が聞こえて歌うのを止めた。
「お前の声は美しいなあ。」
彼は泣いていた。そんなところは初めて見た。
そもそも怒りであるとか悲しみであるとか、彼が負の感情を抱いていると悟らせることは無かったのだ。
泣き止みそうにないので、先程の続きを歌った。
曲が終わると、彼は起き上がっていていた。
ただ、目尻にはまだ涙が浮かんでいる。
「なんで、戻ってきてくれた。」
静かに聞かれる。
理由は一つでは無い。自分でも整理しきれない部分もある。
「……何も持っていなかった俺を見つけてくれたから、ですかね。」
何をしたらいいかも分からなかった自分を見つけてくれて、歌を唄えと言ってくれた、この人を例えそれが興味本位でそれで要らなくなったら捨てただけだとしても憎むことはできない。
どうやって、先に進むか分からなかった自分に最初に光明をもたらしてくれたのは、やっぱりこの人なのだ。
彼はまた涙をこぼした。
「この気持ちを何て呼んだらいいんだろうな。」
彼が彼自身の胸を押さえて言った。
何が言いたいのか分からず首をかしげると「もう一曲歌ってくれないか?」と聞かれた。
思いついたのが駆け落ちをする恋人の歌で、一度思い浮かんでしまうとそれしか浮かばず仕方なく歌った。
歌い終わって口を閉じると、彼は泣きながらも微笑んでいた。
「ずっと、お前に歌っていて欲しい、小夜啼鳥。」
何を言われているのか分からなかった。
口をただ戦慄かせていると
「愛してるんだ。」
彼はそう続けた。
今更と思わなかったと言ったら嘘になる。
でも涙が止まらなかった。
きっと、自分はずっと彼のためだけに歌を唄うと思う。
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