繋がる指先

渡辺 佐倉

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断る

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※二人とも高校時代

「小西先輩って告白断る時どうしてるんすか?」

いきなりではないのかもしれないが友人があの人に聞いた言葉にギクリと体が固まる。
今までだってこれからだってこの人が誰かに好かれないなんて事あり得ないのだ。

「えー、告白をそもそもされないから分かんないよ。」

へらり、と笑っていうあの人に友人はそんな事ないでしょうと突っ込んでいる。

きっとはぐらかされたと判断したのだろう。告白されないなんてあり得ない人だから。
だけど、俺はそれが事実だと分かってしまう。

多分、告白出来る様な距離に人を近づけないのだろう。
それはもう、用意周到に。けれど、相手にそうだとは気づかせないように。

そうだ。そうだよな。
小西大地という男は人との距離感を掴むのが極端に上手い。
だから気が付いた時には距離をおかれた後だって事位ちゃんと理解していた筈だった。


けれど、いつの間にか自分がいつも、いつか捨てられるまで一緒にいたいときちんと振られる前提だったことに愕然とした。
自分には最後まできちんと向き合ってくれるに違いないとその位信頼していまっていた。

ズキリと疼く胸の奥を無視して「済みません。」と謝る。
それは隣にいたあの人にしか伝わらない程の小さな声で。

「うーん。恋人いるからあんまり告白とかもされたくないしね。」

笑いながら言ったあと、そっと手を取られて指から手の甲にかけて撫でられる。
どこまでお見通しなのかは知らないし聞きたくもない。

けれど、そっと耳元で「俊介以外、あり得ないから。」と言われて思わずうつむく。

「イチャイチャは帰ってからにしてくださいね。」
「えー、別になにもしてないよ。」

ハイこの話はお終いとばかりにあの人が笑う。
顔の整った人間の笑顔の威力はすごいらしく一瞬皆で息を飲んだ。

「それより、君たち期末試験は大丈夫なのー?」
「は!?それは先輩が手伝ってくれるってことですか?」

勉強会か、いつも親衛隊の子たちに教えてるんだけど来る?とあの人が聞いて友人たちが頭を下げているのをぼんやりと見ながら、別れるその日がなるべく先になることを祈った。 
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